だから美味しいものを食べよう

受験勉強をしていたときは、受からなかったらどうしよう、と思っていました。
無事受かったらこの不安は消えるだろうとも思っていました。

希望の大学に行けました。
「受からなかったら」という不安はなくなりました。
次に、将来の就職どうしよう、と思いました。
新たな不安がでてきました。


過去の「嫌な記憶」も日々つきまといます。

あのとき、あんな失敗をしてしまった。
あんなことしなければ良かった。

忘れようとしても忘れられない「嫌な記憶」は、
突然あらわれてはなかなか消えてくれません。

別にその件を今思い出したところでその事実がなくなることはない、と
頭ではわかっているのに。



わたしたちは常に

未来への不安に駆られ
過去の記憶にしばられています。

わたしたちが生きているはずの「今」はどこに行ってしまったのでしょうか。



ありました、未来も過去もない、「今」だけの時間。


美味しいものを食べているときは、「今」に集中します。

・・・いや、正確には、「今」に集中せざるを得なくなります。


ひとくちガブリ。


うっまー

おいしー


そこには未来も過去もありません。

あるのは、絶対的な美味しさを味わう「今」です。



美味しいものだけではありません。

ゲームでラスボスと闘っているとき、
好きなアーティストのライブで体を揺らすとき、
恋人の肌に触れるとき、
夕焼け空に息をのむとき――――

わたしたちは「今」この一瞬を全力で感じます。



過ぎたことは仕方がない。

未来はきっと、なんとかなる。


そんな励ましの存在さえ忘れる「今」への没入は、

わたしたちをわたしたちの生きる時間へと呼び戻す
時の羅針盤です。


色んなコンパスがあるけれど、
でもやっぱり、一番身近で一番効くのは
美味しいものを味わう瞬間、だと思うんですよね。



だから、美味しいものを食べよう。

今こそ。

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