話し方と知性②声には3種類ある

「話し方と知性」。第二回の今回は、声の話です。

芸大時代、毎回異なる劇場関係者がゲスト講師としてやってくる講座をとっていました。
あるときは殺陣(タテ)、あるときは宝塚のラインダンス、と色いろなことをそれぞれのプロから教わったのですが、
なかでも突き抜けて面白かった授業のうちの一つが、演出家の鴻上尚史先生による「声ってなんだろう」という回でした(*1)。

今回はそのとき目からウロコだったお話を一つ、ご紹介します。

江上先生は言います。
声の大きさには三種類ある、と。

そしてそれは、

①ひとり言
②あなたと
③みんなに

である、と。


飲みの席で嫌われるオジサンは、往々にして「③みんなに」の声で「①ひとり言」も言うから嫌がられます。
逆に、「③みんなに」言うべき場面で「①ひとり言」の声で話していると、自信なさげにきこえます。

この①ひとり言②あなたと③みんなにという区別は、もちろん、
①から③にいくにしたがって、だんだん大きくなるのですが、
話を単純に音量の大小に落とし込まないところにミソがあります。

ひとに伝わる声の大きさというのは実は、「もっと小さく」とか「もっと大きく」ではなく、
届ける相手との距離感なのです。


この授業は、その後の私の話し方への意識を大きく変えました。

話し方で他人の心を突き動かせる人というのは、
この①ひとり言②あなたと③みんなにという声の距離感を使いこなしていると思うようになったのです。


大講義室にてマイクで話す教授の話が眠いのはなぜか。
それは、マイクを持っているがゆえに教授自身の声は「①ひとり言」の話し方になるから、かもしれません。
ひとり言の声で話している限り、「相手」がいない声は届きません。マイクによって出ている音量自体は大きいのに。

逆に、昨今YouTuberが影響力を持つのはなぜか。
それは、人気YouTuberこそおそらく無意識に、カメラに向かって「②あなたと」の声で話しているから、かもしれません。
すると聞き手は「わたしに」話しかけられているように感じます。ひとり言ではなく、みんなにでもなく。


当たり前のことですが、
声は元来、人間に重要なコミュニケーションツールです。
しかし、この相手の存在と声との関係を私たちは忘れがちです。

声の大きさを、届けるべき相手とその距離感から考える。
これもまた、「知性」を感じさせる話し方に一歩近づきそうな気がしませんか?


話し方と知性。
第二回の今回は、声の大きさを三つの距離感で使い分ける、ということをご紹介しました。

第一回は漢語や和語という、言葉の種類の違いについて書いています。
あわせてこちらのリンクからどうぞ。



(*1)この「江上先生」は、記事の通り私に大きな影響を与えたのですが、当時の記録があやふやで、下のお名前を確認することができませんでした・・・。本記事では「江上先生」とのみ記させていただきます。ご存知の方がもしいらしたら、ぜひ教えてください。

(追記)
上記お名前の件、解決し、本文を修正しました。教えてくださった方、ありがとうございます。

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