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はっきりとした夢と、ぼやけた境界線のこと

夢のなかで、僕の大切な人が傷つき泣いていた。その人を傷つけたのは僕で、その人を泣かせたのは僕だ。

昔からよく明晰夢をみる。夢の中で思考もしているし、夢の中のディテールや身体感覚や、そしてそこで動いた感情もまるで現実に起こった自分の記憶のように覚えている。今、僕が目覚めている時の世界はモノクロで全てがぼやけていて、なにかをはっきりと見ることはできない。だけど夢の中は鮮やかに彩られていて、美しい景色や人の顔もはっきりと見ることができる。顔のイメージはきっと僕の頭の中で勝手に作り出しているのだろう。

僕が大切に想っている人が泣いていた。泣かせたのは僕で、傷つけたのも僕だ。夢の中では謝ることができずに、僕は無言でその人の前から立ち去ってしまった。その立ち去った時の気まずい気持ちを今日は一日中引きずっていた。その気持ちがずっと僕の周りに漂っている。

過去にも同じようなことがあった。夢の中で友人から「これから忙しくなるけど覚悟はできてるか?」と問われ、その問いに答えられずに目が覚めてしまい、現実世界でその友人に電話をかけ「覚悟はできているよ」と伝えたことがある。
夢に出てきた女の子に恋をし、目が覚めてもその恋は冷めず、当時お付き合いしていた彼女に「好きな子ができた」と言って別れをきりだしたこともある。

今回も同じ様に、その傷つけてしまった人に連絡を取って謝ろうかと思いつつ、なぜかそれをすることができない。あまりにもひどいことをしてしまい、気軽に謝れるような気持ちになれないのだ。

もはや僕にとって夢と現実の境はぼやけてしまっている。

ユングやフロイト的なアプローチでその夢の分析をしてみようかとも思ったのだが、夢の中の出来事は自分の深層心理からきていることは体感としてわかっている。だから僕はその人のことを、深く傷つけたいと思っているのかもしれない。そう思うとますます軽率に謝罪の言葉を口にすることができない。というか、そもそもその人に顔向けなんてできない。

僕は途方に暮れながら、これからまた新しい夢をみる。

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