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生きる理由

中学生の女子が保健室に来室した時の話。


たくさんの悩み。不安。葛藤。
でもそのほとんどは、私が支援できる内容ではない。私ができるのは、話を聞くだけ。
今回だけではない、今までも何回か聴いてきた話だ。

いつもは話をするだけで終わるのだが、その日は違って、彼女は1つの質問をしてきた。

「先生にとって、生きる理由って、なに?」



「HUNTER×HUNTERの最終回を読むことかな」

生徒は目をまんまるにして、そして笑った。
この生徒が漫画を好きなことは知っている。
HUNTER×HUNTERが好きなことも。

「それは私も読みたい!
…でも、HUNTER×HUNTERが終わったらどうするの?」

「コナンとワンピースの最終回を見届けたいな」

「えー!」

笑ったあとに、彼女の肩の力が抜けたのがわかった。
笑顔の力って侮れない。

「…でも、そっか。生きる理由ってそんな感じでいいのかも」


正直この返し方は養護教諭としてアウトだとは思っている。

しかし数年経った今でも、彼女の気持ちを楽にする言葉はわからないし、本当の「私の生きる理由」はまだ見つからない。

思い浮かぶのは今よりももっと成長したいとか、新しい経験をしたいというものばかりで、他人からすれば漫画の最終回を見届けることと、そう大差は無いような気がする。

そう思うと漫画はすごいな。
漫画以外でもファンがつくようなエンターテインメントの世界を、生きがいにしている人はたくさんいる。そうやって創作者を支えてもいるんだな。


人が生きる理由は様々あるだろうけど、
生きる理由を探すこと自体が1つの目的とも言える。
理由を見つけられたら、とても充実した人生になるだろう。
もし理由が見つからなくても幸せな人生を送れるだろう。
大事なことは、とりあえず生きとくってことだ。





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