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DIYを考える

なぜDIYなのか。それは私が、最近埼玉県比企郡ときがわ町で活動するようになり、その環境からDIYの重要性を度々感じたことがきっかけだ。この感覚を抱いた理由を探ることで、何か見えてくることがあるのではないか?と思い、自分なりに分析してまとめてみようと思う。前半では、DIYを考えたきっかけや、DIYの特徴をとらえてみる。後半では設計者としてDIYにどう向き合うかも考察している文章になっている。

今回は、「DIYを考える意義」を主観で書いているので、読んでみての感想や意見等、もらえたら大変嬉しい。

DIYを考えたきっかけ

 先ほど述べたようにDIYを考える事になったきっかけは、自身が地域で活動するようになったことが大きい。なぜ地域とDIYはつながったのだろうか。そこから考えてみたい。

 考えられることはいつくかあるが、一つは地域のチャレンジ精神に由来すると思う。地域で活動していると、実に多様な人たちがチャレンジをしているのを目にする。町に本屋さんを作りたいとの想いで始まった「本屋ときがわ町」というイベントを毎月1回開催している人たち、地域でアウトドア初心者にも寄り添ったキャンプ場を開催している人たち、有機野菜を作り雇用を通してそのノウハウを伝授している人たち、その野菜を使ったお弁当、お菓子造りなどの販売している人たち、実に多様だ。

 そうしたチャレンジをする人が集う地域には次々と出来事が生まれ実行されを、繰り返す。このことを肌感覚で感じた。将来的に統計が取れるなら取ってみたい。

 そして、チャレンジするには初期投資がおのずと必要になる。このコストを抑えるときに多くの人が、初めはDIYを考えるのである。

 さらに、色んなことにチャレンジする精神は、身近なものづくりも自ら実現する意識を持った人が多い。様々な挑戦を自分でこなしていく人たちだからこそ、DIYにもチャレンジできるのだろう。
こうした状況や、精神の前には、DIYというのは実に相性がいいのである。度々、DIYで作れるように設計して欲しいと依頼されることもあり、考えてみようと思うきっかけになった。

DIYの意義

 次にDIYの意義的側面で考察してみようと思う。私が考えなくても、DIYはこの地域にたびたび発生することは間違いない。では今ここで、この事象に向き合いDIYを考える意味とは一体何なのだろうか。
 その一つに「地域には森林資源がある」ことが挙げられる。私の活動している、ときがわ町は森林が町の面積の7割を占める。現状こうした森林資源の活用に答えはなく、この森林資源の活用方法を模索している段階と言っていい。会社員の傍ら、製材上を運営する、山口直さん(地域材活用の模索をする共同メンバー)は、ときがわ町には製材場が3つしかないという。そしてきこりは、ほとんどいないと伺った。現在は山口さんのお父さんと、Oさん(地域材活用の模索をする共同メンバー)の二人でときがわの山に入り、林業を行っている。私は、共同メンバーのおかげで、地域材活用を考えるきっかけが増え、様々なことにチャレンジしていこうと考えるようになった。こうして活用の道を模索する中で、DIYが有効なのではないかと思った。それは「DIYの持つ力」が起因する。

DIYの持つ力

 少し前置きが長くなるが、地域材活用の道を模索する中で、こんなお話しを伺ったことがある。

「地域材活用で効果があるのは住宅などの建築に活用することだ」

 この話をきき、確かにそうだな、と思った半面、建材として活用していくことが、果たして最良なのだろうかと疑問がのこった。確かに建材として活用すると、ボリューム的にはかなり効果的だと思う。ただ、一度は淘汰された産業に再び乗せていくことは、地域材活用の有効な活路になるとは考えにくいと感じる。

 2020年アメリカ長期金利を下げたことを皮切りに、住宅需要が高まり、木材が高騰する「ウッドショック」が起こった。この時に今まで安かった外国産の木材から、多少国内材に目を向ける動きが見られた。私はこの時、違和感を覚えた。結局デフレに向かう日本経済の中で、産業に乗せるということは、「コスト」ということが軸になり、その市場を頼りに地域材活用することは、以前のように振り回されるだけなのではないかと感じたからだ。

 また年々建築の着工数は減少し、この先溢れた住宅を長く活用していく時代になり、建材として活用していくだけでは不十分だろう。
 大量に生産し、産業として消費する産業的側面は、移り変わりの速度も早く、植えてから、消費するまでに長い時間を要する林業と相性が悪いのである。一昔前のように、里山のように時間軸を持ったバランスのよい、消費が求められているように感じた。

 前置きが長くなったが、DIYの力を考える。先に述べたように、木材資源の消費は産業とは違う切り口が必要だと考える。

 それは今の段階では身近の地域にいる人たちの意識が大切になるのではないだろうか。まだまだ地域材を活用することに意識が向いていない人が多い中、意識を向けるきっかけを作るにはどうすればよいのか。仮に意識はあっても、どこで材を手に入れ、どこで使うのか、現代はそんなことさえも分かりにくくなった。その中で、環境をどのように整えるのか、この切り口にDIYは有効だと筆者は思う。DIYの持つ力の一つに文化があると考える。

 『杉で作る家具』(2019.03発刊)に寄稿されている若杉浩一さんのは本文の中で以下のように綴っている。

「便利で簡単」から「面倒を楽しむ」時代へ
現代のモノ作りは、専門家の、専門技術で作られ、ユーザーの関与する余地がほとんどない。かつては一家に一台あった大工道具箱はなくなり、家庭やモノを作ったり修理したりする機会は、いまやほとんどない。素材への理解や愛着も薄れてしまった。ではどうすれば良いのだろうか。簡単・便利への欲望が消費社会を生み出した原因だとすれば、次の未来を切り開くヒントは「面倒を楽しもうという少しの決心」にあると僕は思う。・・・(略)

 このように「DIY」は消費とは少し距離を取ることができ、楽しむことができる「力」を持っているのかもしれない。こうした消費は、産業と切り離され、その地域の暮らしになるのだ。今は合板などの材料でDIYしている人も、環境を整えれば、地域材の活用に興味を抱くのではないだろうか。それは、文化的な側面が大きいDIYだからこそ可能なのではないだろうか。このことが、地域で度々起こるDIYと結ばれることで、大きな意義になるのではないかと考えている。

山とDIY(文化的消費者)の間に立って考える

 DIYは、地域材の新たな活用の道として有効な手段なのかもしれない。では設計者である私の役目は何なのだろう。それは、山とDIY(文化的消費者)の間に立って考えることだと思う。設計者として、ものをデザインすることを通して、どうしたら意識を向けられて、どうしたら環境が整うかこのテーマで純粋に模索している。

今は以下の二つに注目している。

①DIYを通して地域材に意識を向ける
DIYをやろうとする人のチャレンジを応援し、地域材を意識するきっかけ作りをできないかと思っている。
山の実情をDIYを通して知る。ホームセンターでは知ることのできない、情報をプロダクトに乗せることができれば、きっかけを生めるのではないだろうか。

そのように考え、山から切られた木材がどう加工され、どのように流れていくのか。
それを知ることができるようなプロダクトを考える。例えば製材後の端材を使ってみるなどを模索中。

②意識が向いたときの環境を整える
 ①とは逆に、山側からのアプローチも重要だと思う。山の資源を使う暮らしを見つめ(薪など)、生活に溶け込むようにインフラを整える。山から消費社会へきれいに流れる、プロダクトと仕組みをセットで提供できるものを考えていきたい。

長くなりましたが、ここまで読んでくださった皆さまありがとうございます。すぐにまた更新できるかは分かりませんが、これからの活動で上記の二つのことをどう実現していくか、スタディしていくつもりなので、フォローやいいねもお待ちしてます!!

引用元

今回紹介したのは、『杉でつくる家具』(2019.03発刊)
この書籍は、1953年に雄鶏社という手芸の専門出版社から発行された、KAKデザイングループの『アイデアを生かした家庭の工作』の復刻版のような形で発刊された書籍で、家庭で日常的に使いたくなるようなものを、DIYで作れるように、必要な工具や、材料、加工の手順などにわけ、分かりやすく記載された指南書のようになってる。書籍の冒頭には伊藤暁(建築家)、若杉浩一(プロダクトデザイナー)の寄稿があり、『アイデアを生かした家庭の工作』の復刻にあたってのそれぞれの考えが記されている。
とても良い書籍なので是非皆さんも一読してほしい。

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