見出し画像

神河NEO チャンピオンシップ調整録

とにかくヒストリックをやっていた前回CS以降

 前回のイニストラード CS、読みを大きく間違える。終わってから見るとゴルガリフードはどう見てもベストデッキだった。なぜ自分がフード系のデッキの経験が多いにも関わらずフードを選択できなかったか。各デッキの理解度の自分での認識が甘く、傲慢さがあったことが原因だと思った。具体的にはゴルガリフードがフェニックスに有利であることに気付けていなかった。ジャンドの考え方の流用だけでゴルガリフードをわかったつもりになり、フェニックスは大して使ってすらいない。傲りと言わずになんと言おうか。運よくDay1を5-2で抜けたイニストラードCSはDay2は2-6と散々な結果で辛酸を舐めた。

 自分の考えの足りなさで負けたことが悔しくて仕方なく、次は勝ちたかった。なのでイニストラードCSの次の日からヒストリックの回したことがなかったデッキや経験の少ないデッキを回し始めた。ヒストリックであれば追加カードによる影響が比較的少なく、経験が身になると考えたからだ。フード、フェニックス、アゾリウスコントロールのようなシェア上位のデッキ。オーラ、アルカニスト、独創力、親和のようなトップティアでなくても可能性がありそうなデッキ。またゴブリンや中隊のような嫌いなデッキも回した。《上流階級のゴブリン、マクサス》と《集合した中隊》は4枚持っていなかったので作った。

 マグロが泳いでいないと呼吸できないように、私はクソデッキを作っていないと呼吸できないのでオリジナルクソデッキも色々作った。「俺頑張った」アピールがしたいわけではないので場を和ませるために一部公開しようと思う。笑うとこだぞ。

 ヒストリックハンマータイム。モダンを少し触ってやってみていろいろ足りずに当然無理。《タイライト剣の鍛錬》も試したけどウルザスサーガじゃなかったよ。なんたってマナコスト差に《Black Lotus》がないと埋めれない違いがある。

 赤単ランデス。先攻3Tに《弧光のフェニックス》や《嵐翼の精体》を出されると処理できずに詰む。クソデッキ。

 スタンで強かったフードなどのギミックが強いのでアドベンチャーも強いのでは?トップティアのフェニックスに全然勝てずに没。

 ロアホールドタイムワープは死んでない!いや死んでるよ。なんで行けると思ったのかわからん。

 フェザー。ラダーでは勝ったがトップティアーとぶつけたら普通に無理というよくあるやつ。

 緑単ヨーリオン。結構気に入っていたが《絶え間ない飢餓、ウラモグ》がラダーで流行っていたアゾリウスロータスの《不連続性》に消されるから没に。アゾリウスロータスは過大評価されていたデッキでCSでは勝たなかったので、もしかしたらもうワンチャンあった…かも?

 《世界樹》神コンボ。神を並べて《鍛冶の神、パーフォロス》で走らせる。土地11並べるのがきついうえに、引きたくないコンボパーツが多すぎる。突出したクソデッキポイントは、トランプルをつける神がいないためたくさん神をいれなければいけないこと、《鍛冶の神、パーフォロス》を引いてしまうと詰むので2枚デッキに入れなければならないこと。深夜テンションで作った見どころなしのまごうことなきクソデッキ。

 《蝗の神》、《永遠神バントゥ》、《永遠神ロナス》を《世界樹》から持ってくる。バントゥで土地を全部サクる。イナゴが10体出る。ロナスでパワーが倍。コンボパーツの大幅な圧縮に成功。しかも比較的手札から出しても許せるやつだけ残った。かなり刷新的な改善だがベースがクソデッキすぎたのでこれもクソデッキだった。

 モダホラのカードは強いんじゃないか?という《ネクロゴイフ》アルカニスト。実は3Tに《ネクロゴイフ》を出すには《マグマの媒介者》がマストだし、《マグマの媒介者》で追放したカードは使えない。てか《ネクロゴイフ》より《反逆の先導者、チャンドラ》とかのが強い。

 《悪魔の契約》を《無害な申し出》で押し付けるデッキ定期的に使いたくなるよね。でも結局使われていないのはそういうことだよね。

 とにかく私がヒストリックに大きな時間を使い準備を積んだことが伝わったと思う。いや、クソデッキを作っていたことしか伝わらなかったかもしれない。まあ信じようが信じまいがヒストリックをいっぱいやった。

チーム発足

 所属コミュニティのAkioPros、明星HIVEの権利保持者を誘う。佐藤啓輔さん、曳山まつりかさん、くろきさん、JVさんが加入。また明星HIVEから権利保持者以外にも練習相手をしてくれるメンバーを募る。さねとみさん、テルテルさん、やましょうさん、calmさん、outbackさんが加入。10人で臨むことに。

 私が以前やったのと同じようにフォーマットごとの役割分担はなしで行くことに。私とまつりかさんがビルダーなので、Tier1を調整して最低値を作る人、自由にベストデッキを探しにいく遊撃隊で分かれることに。

 私の感じる最大のチーム調整の良さはビルダーとして競技に臨むことのリスク回避と最大値を追求できることだ。強いオリジナルデッキを作れれば最高だ。一方でデッキができないと困る。そんなときにチームメイトが作っているTier1に乗っかることができる。うまくいけば逆にチームメイトに乗ってもらう。

 第一は楽しむことだ。デッキ作りは柔軟な発想が必要で、それには楽しんで集中力を高め効率を上げることが重要だ。完全に論理的に答えを求めることなんかできないからだ。チーム目標は「パワハラをなくすこと」という案が出た。楽しむのが重要なのだ。「JVくんさぁ、もう寝るの?へえ、まあいいけど。俺は調整続けるけど。くろききんなんか昨日は5時間も残ってくれたなあ。」こんな調整現場は嫌だろう。楽しむことはできない。チームらしくでかい目標を立てよう。「世界からパワハラをなくすこと。」これがチーム目標に決定された。

 Discordサーバー名はKamikawa Winners、勝つ気は十分だ。

デッキ選択とメタゲームブレイクダウンを見て

ヒストリック

 さて、冒頭で前回なぜベストデッキを選べなかったかという反省について述べたが、実際選んだのはどんなデッキだったか。

前回のイニストラードCSで使ったデッキ

 なぜこれが悪かったかというと、一部のトップティアに対策を集中しすぎてデッキの絶対的強さが落ちたところだ。セレズニア人間、ゴルガリフード、イゼットフェニックスに集中し、未知の相手に弱いカードが入りすぎた。

前回のイニストラードCSのメタゲームブレークダウン

 確かに上記のデッキは使用率が高く、上位に残ったデッキであった。一方でその他のデッキが過半数を占めていたことも事実である。Day1は濃く対策したフードに二回当たり2-1するが、Day2は1-3。イゼットターンに二回、親和と、意識外のものでも特に苦手な相手とマッチしたこともあるが、それにしても良い選択とは言い難い。

 この反省から、今回はトップメタに有利なメタデッキよりもトップメタぐらい強い意識されていないデッキを探すことにした。もちろんトップメタに有利なトップメタ並みに強いものが理想であるが、そううまくいくものではない。トップメタには5分あればよいだろう。

 そして選んだのがジェスカイオパスである。

今回の神河CSで使ったデッキ

 ジェスカイオパスは《記憶の欠落》が禁止になってからトップティアではなくなったデッキであるが、回したデッキの中で突出したパワーを感じた。前回CSでは墓地対策の多い環境で使うべきではないと選択肢から外してしまっていた。しかし勝ち組であったフードも墓地利用デッキである。フードと同じく、単に墓地利用を対策されただけでは負けないデッキであると感じた。そして、単なる墓地利用以上のデッキの構造に関する対策は薄くなっている。

《ポータブル・ホール》

 デッキ選択の理由の一つに《ポータブル・ホール》の存在がある。このカードは特にフードに対して強い。フードはシナジーデッキなのでマリガンが多い。マリガンしたところに、重要なリソース源である《パンくずの道標》を除去すれば機能不全になることが多い。

 また、フェニックス、フードの二大トップメタから、メインに《安らかなる眠り》の入ったデッキが使われることも予想される。だがコントロールデッキが相手の場合は《安らかなる眠り》は腐っている《ポータブル・ホール》の的にできる。

 サブミット後、提出されたデッキリストを見たところ、重要な部分の予想は間違っていなかったと感じた。

Jonny Guttman選手によるゴルガリフード

 ゴルガリフードでは、イゼットフェニックスへの対策カードである《魂標ランタン》がメインに入った状態のままであった。

CFBによるイゼットフェニックス

 前回のCSではイゼットフェニックスのゴルガリフードへの相性不利が浮き彫りになった。海外の強豪チームのChannel Fireball製のイゼットフェニックスでは、黒にタッチしてフードへのキラーカードである《碑出告が全てを貪る》がサイドに取られていた。

 ジェスカイオパスは確かに《魂標ランタン》が刺さることはあるが、イゼットフェニックスよりはダメージが少なく、《碑出告が全てを貪る》のようなタイムラグのある墓地追放は効かないのでサイドインされないだろう。

 いいスタート地点に立つことができたと思った。

アルケミー

 とにかく情報が少ない中での直前のPTQで勝率が突出していたのはナヤルーンであった。

PTQを優勝したナヤルーン

 であれば、ナヤルーンはスタンでも活躍したデッキであるため、スタンでも活躍したナヤルーンキラーを試そうとなるのは自然な流れ。一旦チーム内では白単派とボロス派に分かれる。

チームメンバーの佐藤啓輔さんがプレイしたデッキ
サブミットを検討していたボロスアグロ(使用ツール

 白系アグロは《スレイベンの守護者、サリア》や《調和のアルコン》、《有望な信徒》などナヤルーンに対するキラーカードを使うことができる。

 私はこの二つのデッキではボロス派だった。白単の不満だった点は2マナアクションの弱さだ。《光輝王の野心家》が下方修正された代わりに《シガルダ教の福音者》が白の2マナ域には追加されている。《シガルダ教の福音者》は強力であるが、4マナ以上が使えるときに真価を発揮するカードだ。2T目のアクションとしては特別強いケースは多くはないと感じていた。2Tの圧が弱ければ、全体除去を使うデッキに対し速度で勝負を仕掛けづらくなる。

 ボロスでは《熊野と渇苛斬の対峙》からの《指名手配の殺し屋、ラヒルダ》や《スレイベンの守護者、サリア》という序盤の押し付けムーブの強さがあり魅力を感じた。

 だが、ボロスに対する不安点として、白単に不利であるということがあった。4マナ域の《審問官の隊長》での横並べに《轟く雷獣》の相性が悪い。他の参加者もナヤに有利なデッキとして白系アグロを選択するならばボロスは良い選択にはならない。

 《告別》を使うコントロールには明確に速攻の多く軽いボロスが良いが、白系クリーチャーデッキ対決ではボロスは良くない。白単とどちらがよいだろうかという議論に決着はつかず、他のデッキを試していくことになる。

 他のデッキを試していて気付いたことは、ナヤルーンは対策しようとすれば結構楽に対策できるということだった。

チームデッキ候補に挙がったディミーアコントロール(使用ツール

 例えばナヤルーンがインスタント除去に弱いという点に注目して作ったディミーアコントロールでも、ダイレクトマッチではナヤルーンに有利と言える結果が出た。(残念ながらキーカードの《セッジムーアの魔女》が《神聖な粛清》など本来コントロールに腐る全体除去に当たり、コントロールデッキが多い可能性も否定しきれなかったため没に。)

 他のチームもナヤルーンの攻略方法を見つけてくるだろう。だとすればナヤルーンに有利なデッキを作ることよりも、デッキパワーが高く未知のデッキに対しても戦うことができることが重要だ。

 そんな中出会ったのがラクドスサクリファイスである。3月5日のスタンダードのイベント、第5回Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 2次予選でラクドスサクリファイスは少ない使用者ながらもTop8に4人と飛び抜けた強さを見せていた。アルケミーには《血塗られた刷毛》という追加カードもある。これだ!これしかない!と思ったこの日はCSのデッキサブミット二日前である。

 ラクドスサクリファイスの不利マッチは他でもないナヤルーンである。デカブツトランプル絆魂がきつい。なんとかナヤルーンに五分まで持っていけないかという試行に残り時間を使うことに決定する。

今回の神河CSでプレイしたデッキ

 サブミットを決意するきっかけになったカードは《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》だ。

《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》

 ナヤルーンの弱点に相手のシステムに触りづらいことがある。《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》は対処され辛い。デガブツ絆魂に対処する側に回るには継続的なリソース源は必要。《実験統合機》は効率の良いアドバンテージソースであるが、追放したカードを即唱えなければならないため初手のキープ基準にならず、除去を増やす調整方向にかみ合っていない。ナヤルーンにはこちらから対処すべき脅威を展開するよりも、こちらが対処する側に回ることが多いからだ。なので、この枠を《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》と《病的な日和見主義者》に変更した。

 《神聖な粛清》や《告別》が効くデッキではあるが赤黒というサイドの強い色で取れるサイドプランは潤沢。

 短い期間ではあるが、満足のいくリストになった。期限二日目に突然候補にないデッキの開発を初めたのに付き合ってくれた仲間たちに感謝。特に曳山まつりかさんは熱心に強力してくださった。

神河CSのメタゲームブレイクダウン

 実際のメタゲームブレイクダウンを見ると白単は最多で、多くのプレイヤーが目の敵にしていたナヤルーンは二番手とはいえ18.3%と少なめ。調整方針が正しかったと思える分布でボロスから変えた甲斐があった。

結果と次の目標

イベントの結果、1-3, 8-11ラウンドがアルケミー、4-7, 12-15がヒストリック

 アルケミーが5-2、ヒストリックが5-3で合計10-5という結果であった。Top8に行くにはもう一勝でオポ、もう二勝で確定という成績である。
 Top8に行けなかったことはもちろん心残りではあるが、前回からの改善は大きくできたと感じている。前回は運よくDay1 5-2からのDay2 2-6という結果だった。それに対し今回はDayが4-3と悪い出だしでありながらも6-2であり、勝ち上がった相手にも勝つことができたからだ。マジックは必ずしも正しい選択をすれば勝てるわけではない。負けても良かったことは良かった、勝っても悪かったことは悪かったと言うべきだ。

 睡眠調整の詰めが甘かったこともあり、Day1終盤のプレイングに悔いが残る点はあるもののデッキ選択には満足している。前回からの最大の課題はヒストリックの環境理解度の強化であった。今回は良いデッキ選択ができたと思うことに加え、他の勝ち上がりうるデッキの予想も当たっていたように思う。例えば、サイドの追加の《プリズマリの命令》は親和対策で入れたものであり、親和を使用したJean-Emmanuel Depraz選手や石村慎太郎選手は今回好成績を残している。

 急に話題が変わって恐縮であるが、ヒストリックラウンドR12の高橋優太選手との対戦はフィーチャーマッチに呼ばれていたものの放送されていなかった。青いデッキを使うラスボスのような相手に勝ったのだ。私の雄姿を放送してくれてもいいではないか。最近なぜかフィーチャーマッチは勝ったゲームだけがカットされる。世界選手権の構築ラウンドの井川良彦選手戦や前回のCSのArne Huschenbeth選手戦。MPLのライバルたちを相手に苦しい戦いを制したのだから映してくれてもいいじゃないか。

 なのに、世界選手権の構築ラウンドと日本選手権FINALでは私が負けた試合ばかり放送されている。あんまりじゃないか。いや待て。勝った試合が絶対放送される方法が一つある。優勝することだ。そうすれば決勝戦は勝った試合が放送される。

 次のCSの目標はフィーチャーマッチで勝こと。ではまた。

おもろいこと書くやんけ、ちょっと金投げたるわというあなたの気持ちが最大の報酬 今日という日に彩りをくれてありがとう