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タッチマナベースの確率

リミテッドではよく飛び抜けて強いが色の合ってないカードをデッキに入れるため、メインではない色の土地やマナサポートを入れることがある。

特に「機械兵団の行進」では、パックの特性上カードの平均レアリティが高く、相手のデッキパワーについていくためにタッチが必要になる機会は多い。

コモンの多色土地やマナサポートが豊富で、タッチしやすいプールであるものの、タッチする土地の枚数は悩みの種である。

よくタッチしたカードの枚数プラス1というのを見るが根拠は不明である。

実際に自分で数字を見て考察してみたい。

タッチのマナベースは計算できるか

以前別の記事で、「MTGのマナベースのような複雑な問題は確率計算により一意に求まるものではない」と述べた。

まず断っておくと、本記事でも「こうすれば参考になる数字が出るぞ」と言うだけであり、何枚入れれば十分という主張はしない(できない)。

次に初手にあるカードを唱えられる確率とタッチでは条件が異なる。

どう条件が違うのか、初手にある《思考囲い》を唱えることと、タッチして入れた《捕食の伝令、グリッサ》唱えることを例に違いを見る。

なぜ構築で計算によりマナベースを決定することはできないか

では初手にある《思考囲い》を1Tにプレイしたいとする。

あなたは90%の確率で《思考囲い》を使えるようにしたいとしよう。60枚のデッキのうち、黒のアンタップイン土地が16枚あるとする。

ここで7枚引いたとき、黒の土地が1枚以上ある確率は91%なのでこのマナベースは要求を満たしている、というのは典型的な誤りである。

《思考囲い》を使えるかを考えるなら少なくとも一枚は《思考囲い》なのだから、先攻なら7枚引くのはおかしい。代わりに《思考囲い》を一枚除いた59枚から6枚引くと86%であり、要求を満たさない。

そもそも86%もあるのか?なぜなら、《思考囲い》と土地6枚ではキープしないからだ。もう一枚最低でもスペルがあるハンドを想定すべきかもしれない。あるいは初手で《思考囲い》が使えなくてもマリガンできるのでもっと基準を緩めるべきかもしれない。

というようなことを考えるとそう簡単にすっと答えが出る問題ではないことがわかる。

もちろん、7枚あるいは6枚、5枚引いたとき黒い土地を引く確率を計算すれば参考になるだろう。だが、そこから決定的な最適枚数は出てこないので最終的には「えいや、このへんだ」と決定するしかなさそうである。少なくとも今は。(もしかしたらそのうちすごいAIができて解決されるかもしれないが。)

また90%という数字も筆者が適当に書いたものであり、デッキや環境などにより異なる目標を設置するべきである。マナベースを安定させたいこととスペルをたくさん入れたいことは相反する要求でトレードオフ関係にあるためだ。なので当然、いつもこれだけの枚数の土地を入れておけばいいということはありえない。もしそういうものを信じたことがあったら幸福の壺やおいしすぎる儲け話に気を付けることをおすすめする。

なぜタッチなら数字を参考にしやすいか

リミテッドのタッチとなると条件はいくらか異なる。まずタッチして入れるのはどのようなカードか。

《深根の道探し》はレア相応の強いカードであるが、緑がメインでないデッキでタッチして入れることはないだろう。このカードは2マナ域として2Tに出ることに価値のあるカードだからだ。6Tなんかにちょっといい能力がある程度の2/2/3が出てきても何も嬉しくない。

それに対して《捕食の伝令、グリッサ》だったらどうだろうか。このカードは《深根の道探し》に比べてタッチに適している。まず、このカードは5マナなのでもっと遅いレンジでよく、ある程度確率が収束する。また、5マナのカードだから5Tにどうしても出したいかというとそうでもない。《捕食の伝令、グリッサ》は強くて場に残れば勝つので、五分程度の盤面で手札に他のクリーチャーがいればそちらから出すこともあるだろう。また、5Tより遅れてゲームが長引いて10Tなんかに出ても十分強い。ゲームに勝つ。

では、緑がメインで黒がメインでないデッキで先攻8Tか後攻7Tには《捕食の伝令、グリッサ》が出る確率を考えているとしよう。ここで4枚目の黒が出る土地を入れるか悩んでいるとする。グリッサを除いた39枚のデッキから13枚引いたとき、3枚のカードを1枚は引く確率は70%、4枚のカードを1枚は引く確率は81%であることを参考にすればよい。

ちょっと待て、その方法はおかしくないか。《思考囲い》のときの理屈でいくと、まず《捕食の伝令、グリッサ》を出すことを考えているので《捕食の伝令、グリッサ》は引いているところまではいいが、緑の土地含む土地4枚以上を引いているという条件もあるじゃないか。他にもマリガン等の影響もあるじゃないか、と思われるかもしれない。

その通りであるが、まあそれはそこまで気にしなくていいのではないかと思う。影響が比較的少ないからだ。

1枚の差は全体に対する比が小さくなるとその影響は小さくなる。

図にすればこの通りである。

物理を勉強すると、はじめに空気抵抗も体積もない重さのみを持つ点の運動を考える。これを現実の物体に当てはめたとき、例えば羽のような空気抵抗が大きいものの落下速度の予測に用いることはできない。しかし、パチンコ玉のように単純な形状で密度が高く空気抵抗の影響が小さい物質であれば、それらしい運動の予想ができるようなものである。

初手は羽、タッチはパチンコ玉であると想定して本記事を書いている。

以上がタッチであれば確率を参考にしやすいと考える理由だ。

確率表

デッキ内に1~10枚(横軸)あるカードをデッキから1~20枚(縦軸)引いたときの確率。

前節でどこらへんを見るべきかはわかっていただけているであろう。

機械兵団の行進にはタッチで入れる価値のあるダブルシンボルのカードも多いので、ついでに40枚のデッキから2~20枚引いたとき2~10枚のカードを2枚以上引く確率も出した。

目標とすべき確率は、自分のデッキ全体の強さやタッチしたカードを出せたときの嬉しさ、想定する相手のデッキの強さによるためなんとも言えない。

しかし、目安を付けることができればそれなりに参考になる数字は見つかるはずである。

おもろいこと書くやんけ、ちょっと金投げたるわというあなたの気持ちが最大の報酬 今日という日に彩りをくれてありがとう