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茜あゆむ
2018年11月13日 22:43
両手で包んでいた缶コーヒーも、冷めきってしまった。 ぼくたちはベンチに座ったまま、もう長いこと黙り込んでいる。彼女の綺麗な髪には、うっすらと霜が降り、白く凍っている。吐く息ももう白くはならない。分厚いコートを貫いて、ぼくらの肺には真っ白な雪が積もる。 拙い世間話を口にする余裕もなかった。頬に残った涙の跡は、見ているぼくが辛くなるほど赤くなり、凍えた涙が、どれほど彼女を傷付けたのか、鮮明に