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月と陽のあいだに 51

浮雲の章

葬儀(2)

 もう一つ白玲はくれいの心をらしたのは、その出自しゅつじだった。この国でも、親をやまいや事故、飢饉ききんくした子どもはめずらしくなかった。陽神殿ようしんでんにもそういう子どもがあずけられていたが、陽族ようぞくの両親を持つ孤児と白玲では、周囲の人々の対応が違った。もし白玲の父が陽族の男だったら、白玲は祖父母に養育よういくされていただろう。そうであれば、大神殿だいしんでん高度こうどな教育を受ける機会はなかっただろうが、今まで受けたような悪意あくい差別さべつはなかったはずだった。白玲の父は、おそらく月族げつぞくでも特殊とくしゅ役割やくわりになっていた。だから余計よけいに、白玲が厄介者やっかいもの扱いされたのだろう。しかし、もっと根っこのところで、なぜ月族の親を持つことが悪意ある差別につながるのか、白玲は知りたかった。
 大神殿でさまざまな経験をみ、自分について、周囲しゅういについて考えるうちに、日々は飛ぶように過ぎていった。

 そして修行も残りわずかになったある日、白村はくそんから急ぎの使いがやってきた。巫女みこ婆様ばばさまやまいたおれ、危篤きとくになっているという。白玲は大巫女おおみこ宿下やどさがりを願い出た。それはすぐにゆるされ、白玲は使いと一緒に白村を目指めざした。

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