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月と陽のあいだに 68
浮雲の章
コヘル(15)
ありがとうと言おうとしたのに、喉が詰まって言葉にならない。白玲は白敏の首に抱きつくと、声を上げて泣いた。婆様の葬儀の間も、コヘルたちと話をしていた時も泣かなかったのに、白敏の言葉を聞いたら涙が止まらなくなった。婆様はもういないのだということが、胸に迫って苦しくなった。
白玲の背中を撫でながら、白敏も泣いた。
「一人でよく頑張ったね。貴州府から帰ってきて、休みもせずに婆様を見送って。ちゃんとお葬式も取り仕切って、片付けまでしてね。大きくなったもんだ。婆様も玲々の姿を見て、きっと安心していなさるよ。よく我慢したね。いっぱい泣いていいんだよ」
頷きながら、白玲はまた泣いた。白敏は実の娘にするように、頭を撫で、背中を撫で、白玲が泣き止むまでじっと待った。
「お饅頭が冷めちゃったね。熱いお茶でも淹れようか」
ようやく白玲が落ち着くと、白敏は台所へ回った。白玲も、コヘルの湯呑みを片付けた。二人は並んで縁側に腰掛けて、思い出話に泣き笑いしながら饅頭を食べた。これが最後かもしれないと、心の片隅で思いながら食べる饅頭に、白玲はまた涙をこぼした。
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