カリフォルニアの山火事で考えた:あなたにとって、燃えて無くなって欲しくない、かけがえのないモノは何ですか?

雨を伴わない雷があるなんて 知らなかった。

空気が乾燥しているため、雨が地表に近く間に蒸発してしまうらしい。そのドライ・ライトニングによって、大規模な山火事があちこちの山で発生した。普段山に囲まれたシリコンバレーなのに、真っ白な煙に遮られて山は全く見えない。

自宅では、カリフォルニア史上第2の規模の火災が10kmほどのところまで迫っている。避難勧告が出たらすぐに脱出できるように、荷物をまとめなきゃいけない。

車一台に入るだけの荷物。普段旅行に行くときに持っていくもの以外、何を持って行ったらいいのだろう?

自宅が燃え尽きて、全てが無くなってしまうかもしれないのだ。

ほんとうに、絶対とっておきたいもの、燃えてしまったら後悔するものって何だろう?


とりあえず、家族でリストを作ることにした。

①パスポート ②車の権利証 ③写真

...え?これだけ?

買い換えられない大事なものって、こんなに限られているんだ。

家一軒分、収納しきれないぐらいのモノが溢れているというのに、それはとことん突き詰めれば ほとんどが必要不可欠でないモノだということだ。

それは生活を便利にしてくれるかもしれない。生活をより豊かにしてくれるものかもしれない。

でも「豊か」てなんだろう。

たくさんの本? ピアノやギター? 上等な食器?

確かにそれは、知的欲求を満たしたり、心を落ちつかせたりして、自分の生活にプラスになるモノだ。けれども買おうと思えばまた買うことができるし、大体そういったモノがなくたって、心は「豊か」になれるはず。

大事な家族や友人と一緒に過ごす時間。支え合い、助け合い、笑い、ときには一緒に泣く。そういうことのほうが、自分にとってはずっと、ずっと大切なものなんだと思う。そしてそんな時間の証明である、写真や手紙が、かけがえのないものなんだ。

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「写真」と一言で言っても、いざ車に積もうとしたらその量にびっくりした。大きなスーツケースに3つ分。昔から写真が好きで、いつもカメラを持ち歩いて、子どもが小さい頃は写真を撮りまくっていた。

しかも「写真」カテゴリーには、ビデオテープや手紙などの、思い出の品も含まれる。だからそれだけでSUVのトランクはほぼ満杯となった。

あまりに荷物が多すぎるので、避難勧告を待つ間いっそのこと荷物整理をして少しでも減らそうと、古い手紙や写真の整理に取り掛かった。ビデオテープや写真はデジタル化してしまえば良い。

コロナ禍でなんだかやる気のでない毎日を送っていたのが、一気にエンジンがかかった。明日はもうここにはいられないのかもしれない。全て灰と化しているかもしれない。

山のようにあった手紙を開けてみたら、しばらく連絡を取っていなかった友人、亡くなった父母や祖母からの心のこもった手紙が次々と出てきた。

あぁ、こんなにたくさんの人に愛され、励まされ、支えられてきたんだと、感慨深い思いでいっぱいになった。

ありがとう。

引っ越ししたり、日常的な接点が無くなって疎遠になった人もいれば、ともすると「あーこの人とはやっぱり合わないな」と思ったり、1つの出来事でその人を判断し、離れていってしまったりしたこともあった。けれどその人たちがそのとき愛してくれたと言う事実は、手紙の山という形で厳然とそこにあった。一人ひとりの独特な文字から、時間をかけて、心をこめて、私という相手を頭に思い浮かべながら手紙を書いてくれている母の、義父の、友の姿がありありと頭に浮かんだ。

連絡を取ろう。感謝の気持ちを伝えよう。今まで疎遠になっていた友達に。亡くなった人たちへの思いや感謝の気持ちを、その人を知っている人たちと共有しよう。

山火事はとても怖く、今でもいつ避難勧告が出るかと戦々恐々としている。一方で、自分にとって大事なものを見極め、自分が忘れていた愛を見つけ、いろんな人に感謝する機会を与えてくれた。それこそ、かけがいのない経験となった。

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もし自分の家が燃えて車1つ分の荷物しかとっておけないとしたら、と、想像しと見てください。真剣に、現実のこととして。

あなたは何を持っていきますか。あなたにとって本当に大切なものは何でしょう。

そして、もしあなたが孤独を感じていたならば、今、あなたがそこにいるのは、過去にあなたを支えてくれた人、あなたを愛してくれた人がいるからだということを思い出してみてください。そして、できれば感謝の言葉を伝えてください。

その人たちがいなければ、あなたは存在していないのだから。




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