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三日坊主日記 vol.187 『Do you speak English?』

英語を話しますか。


30歳でフリーランスになって、CMを作れば作るほど、日本を出てロンドンで仕事をしたいと思った時期があった。その時なぜロンドンだと思ったのか、なぜ日本を出たいと考えたのか、正確な理由は思い出せない。もしかしたらちゃんとした理由なんかなかったのかも知れない。ただ、ニューヨークでもパリでもベルリンでもなく、ロンドンだった。


当時は今のように情報も多くないし、海外のエージェントと契約を結ぶクリエイターもいなかったので(知らなかっただけかもしれないけど)何をしていいか分からず、とりあえず英会話の勉強を始めることにした。因みこの時にタバコもやめた(ロンドンの喫煙事情も知らずに、欧米のビジネスマンはタバコを吸わないと思ったから笑)。


僕は英語が苦手だった。というか英語の成績が悪かった。あたりまえだけど、英語と日本語では文法や文章表現がずいぶん違う。中学校に上がるまで日本語しか話さなかった僕は、何から何まで違う英語の授業が始まった時、なぜこうも違うのかが知りたかった。なぜ、そういう風に並べるのか、なぜそういう活用をするのかを理屈として知りたいと思った。


人のせいにする気はないが、中一で英語を受け持った先生は「そんな屁理屈こねてないでとにかく覚えなさい」といった。「先生は覚えた辞書のページを破いて食べて覚えた」ともいった。昭和である。いや、昭和でもそんなことはしない。理由も分からずにやみくもに覚える気にはならないし、だいいち理屈も分からず覚えられるものでもない。これで僕は英語が嫌いになったのだ。嫌いな科目の成績が良いはずもなく、英語はずいぶん僕の足を引っ張ったが、それでも勉強する気になれなかった。


そんな僕が、30歳を過ぎてから急に英会話に目覚めたのだ。しかも、なんの根拠もなくイギリスで仕事をするために。まずは中学生向けの参考書を買い込んでガッツリと復習(復讐じゃなくね)をした。そして英会話学校へも通った。習い始めてしばらくすると、学校で習った英語と英会話とは全く別モノであることが分かってきた。と同時に、学校で習った受験英語もそれなりに役に立つことも分かった。それならもっと勉強しておくべきだったと思うのだが後の祭り。後悔先に立たず。これからやるしかないのである。


当時は駅前留学が盛んで、いろんな場所でいろんな外国人に習った。大方の外国人は片手間で邪魔くさそうに教える(というか教える気もスキルもないんだけどね)んだけど、中には真面目というか真剣というかナイスなヤツもいて、そんな奴らとは仲良くなってよく飲みに行った。そうなると上達スピードがグッと上がる。


駅前留学以外の教室にも通った。あるイギリス人先生とはずいぶん仲良くなり、しょっちゅう会って話したし、飲みにも行った。彼とは教師と生徒という関係ではなく友達として付き合うようになっていたんで、会話の目的はただひとつ、相手の意見を聞き、自分の考えを伝えること。こうなると本当の意味で会話の勉強になる。伝わらなかったら間違っているんだし、伝わっていたら文法がどうであれそれで正しいのである。


よく、外国語を習得するのにいちばんの近道はその国の彼女を作ることだというけど、それはほんとに正しいと思う。残念ながら僕はそうしなかったことを、ほんの少し後悔している。ここだけの話。因みに前述のイギリス人との仲は今でも続いているが、いつの頃からか彼の日本語の方が上達して、二人は日本語で話すようになってしまった。


その当時は、英語話者が僕に理解させようと思って話してくれたら、大体のことは困らずに話せたんじゃないかと思う。広告祭や映画祭へ行ってもなんとか話せた。ただ、相手にあまりその気がない場合は半分ほどしか分からないし、外国人同士で話している内容なんかはほとんど理解できなかった。映画も字幕がないと細かいところは何も分からない。


結局、英会話の勉強はどれぐらい続けただろうか。ずいぶん永くやった割には大して進歩していないような気がする。コロナ禍もあってしばらく英語を使う機会がなかったんだけど、先日久しぶりに海外へ出て英会話の必要性というか、異文化交流の面白さ、大切さを再確認し、もう一度英会話の勉強をしようと考えている今日この頃。今ならまだ間に合う。はず。うん。



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