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コロナ5類移行から半年間、のべ13,000人調査で見えた意識と行動の変化とは?

新型コロナが季節性インフルエンザ同等の5類に移行されてから早くも半年が経ちました。スポーツ観戦や音楽ライブといったさまざまなイベントのリアル開催が再開し、旅行者の増加も数多く報道されています。

では、5類移行後、新型コロナ感染防止や消費に対する意識や行動はどのように変遷してきたのでしょうか。マクロミルは、5類移行直前の2023年4月下旬から現在までの約半年間、合計13回の定点調査を実施し、変化をモニタリングしてきました。本調査を手掛けたマクロミル・グローバルリサーチ・インスティテュートのシニアフェローが、この調査データで変化を可視化し、解説します。


新型コロナ5類移行後のマスク着用変化を分析

こんにちは。マクロミルでリサーチの研究や開発を務める熊谷信司です。2023年は新型コロナをめぐる社会的状況が大きく変化しました。

▮ 2023年 新型コロナをめぐる出来事
3月13日 日本政府はマスク着用を個人の判断に委ねる方針へと変更
5月5日 WHO(世界保健機関)が緊急事態の終了を宣言
5月8日 感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザ同等の「5類」へ

では、感染防止策を代表する「マスク」の着用推移からデータを確認しましょう。外出時のマスク着用率の変化を時系列で示しました(図1)。

(図1)マスク着用率の変化 [場面別]
マスクを「ほぼ着用していた」「着用するほうが多かった」と回答した割合の合計推移
(回答者ベース:過去1週間に各場面における行動を取った人)

▮5類移行後のマスク着用傾向

5類移行前後
マスク着用率に大きな変化はなく、「様子見」の人が目立ちます。

下降期
5月から7月までの期間で、さまざまな場面でマスク着用率が大きく下降しました。

下げ止まり期
夏本番となった7月下旬以降、変化の幅が縮小傾向に。特に、職場や学校にいる時、屋外を歩く時などは、ほぼ変化がありませんでした。

再上昇期
9月下旬頃から、全般に着用率がやや上昇に転じました。

病院での着用を除き、時間の経過と共にいずれの場面においてもマスク着用率が下降しました。ただし、その変化は一様ではありません。季節柄が影響した傾向の違いも見られました。

マスク着脱の理由が、周囲の目(意識面)から感染予防(機能面)へ。直近では「インフルエンザ」も影響

 マスクの着脱意向の理由やその背景には、どのような変化があったのでしょうか。

マスク着用をやめたい人の理由とは?

各調査時点において、「今後はマスク着用をやめたい」「できるだけ減らしたい」と回答した人たちの理由から見てみましょう(図2)。

(図2)マスクの着用をやめたい/減らしたい人の理由[時系列推移]
(回答者ベース: 過去1週間にマスク着用する場面があったが、この先マスク着用を「やめたい」「できるだけ着用機会を減らしたい」と回答した人)


▮ 脱マスクの加速の背景に、「周囲が外した」「目が気にならなくなった」

一貫して高かったのは「マスク着用が不快、息苦しい」という理由です。5月下旬から8月下旬にかけて上昇傾向にありました。今夏の猛暑を思い出してもうなずける理由です。
ただし、5類移行前の春の時点ですでに70%前後と高く、不快や息苦しさだけが脱マスク意向が進んだ理由ということではなさそうです。

他の理由を見ると、「マスクを着用していなくても、周囲の目が気にならなくなった」が徐々に上昇し、7月下旬の調査時には2番目に多い理由となりました。「周囲でマスクを着用しない人が増えている」という理由も同様で、4月下旬では最下位に近い順位でしたが、徐々にスコア・順位ともに上昇しています。

▮ 感染症そのものによる理由が低下

その一方で、調査開始時からしばらく2位だった「新型コロナの感染状況が落ち着いてきた」が、7月上旬頃にかけて徐々に低下していきました。また5月上旬までは、「インフルエンザや花粉症などの流行時期が過ぎた」が15%以上でしたが、スギ花粉による花粉症シーズンの終焉と共に一気に下がりました。 

マスク着用を継続したい人の理由とは?

次に、マスクを継続して着用したいという人の理由を見てみます(図3)。

(図3)マスク着用を継続したい人の理由[時系列推移]
(回答者ベース: 過去1週間にマスク着用する場面があり、この先もマスクを「必ず」または「できるだけ着用していたい」と回答した人)

▮ 着用の習慣化、および着用しないことへの不安感は、時間が経過しても上位を維持

マスク着用の習慣化や、着用しないとなんとなく不安を覚える割合が、時間が経過しても理由の上位を維持しました。


▮ 「周囲の目」を気にして継続したい人は減少

一方で、「周囲でマスクを着用している人が多い」という理由は、5類移行直後の5月上旬時点で早くも急下降し、その後も徐々に低下しました。また、「人と会う際に、相手を不安に思わせたくない」もほぼ同様です。

▮ 新型コロナ第9波、インフルエンザ流行による感染リスク対策が上昇

スコアが大きく上昇したのは、「新型コロナの感染者数が多い」という理由です。6月上旬から9月下旬の調査にかけて上昇を続けました。これは、新型コロナ「第9波」の影響が考えられます(注1)。さらに9月上旬の調査以降は、インフルエンザ流行(注2)の影響を受け、「新型コロナ以外にも予防効果がある」も急上昇しています。

まとめると、5類移行前後はまだ周囲の「様子見」が強い傾向でしたが、時間の経過や季節の変化(気温上昇)によって脱マスクが加速。「周囲の視線」は、マスク着用を継続したい人・脱マスクをしたい人、どちらにとっても大きな理由とはならなくなっていきました。

実際、新型コロナ全般に対する意識を尋ねた質問の結果でも、「屋内や人混みなどでマスクをしていない人がいると不安に感じる」「外出すると、周囲の人がどのくらいマスクを着用しているか気になる」について、当初は「あてはまる」が「あてはまらない」を大きく上回っていましたが、徐々にその差は縮まり9月上旬に逆転しました(図4)。

しかし、最新の10月下旬の調査では、インフルエンザの流行により、再び「あてはまる」が上昇する動きが見られます。

(図4)5類移行後の「周囲の人の状況」に関する意識度合い

一方で、特にマスク着用を継続したい人にとっては、第9波の新型コロナ感染者増加や、9月以降のインフルエンザ流行により、マスク着用=感染症予防という機能面の位置づけが高まったと言えるでしょう。

外食消費に変化。コロナからの回復か?あるいは新しい生活様式の定着か?

コロナ禍ではさまざまな行動制限を余儀なくされ、消費行動にも大きな影響がありました。5類移行後の消費行動はどのように変化してきたのでしょうか。例として、「外食行動」を取り上げます。

マクロミルが10年以上毎週実施している生活者定点調査「Macromill Weekly Index」によると、外食行動はここ2年間で(季節要因等はあるものの)徐々に右肩上がりの回復傾向です。しかし、新型コロナ前の2019年以前の水準には戻りきっていないことも確認できます(図5)。

(図5)1週間に消費した外食関連品目 [週次推移]
(2018年1月第1週~2023年10月第4週)
出所:Macromill Weekly Indexより

図6は、新型コロナ流行以降の外食に対する生活者の行動認識を示すグラフです。

「大人数での食事会や飲み会をしなくなった」と回答した人は、4月下旬で73%、その後少し低下したものの、5月下旬からは60%台後半のままほぼ変わらず推移しています。

また、「食事会や飲み会は、手短にするようにした(早めの切り上げ、二次会なしなど)」「今後、食事会や飲み会の習慣自体が減ると思う」という、外食行動全般の動向に対する認識についても、初回調査から大きく変動はしていません。

(図6)新型コロナと「外食」行動に関する認識 [時系列推移]

このような生活者認識を踏まえると、今後、先ほどの図5で見たような回復傾向がこのまま続いてコロナ前水準に戻っていくのか、どこかで天井効果(上げ止まり)が起こるのか、引き続き観測が必要です。

コロナ感染再拡大や医療費など、生活者心理に潜在的な不安は残る

ここまで見てきましたように、マスク着脱や外食など生活者の行動面では具体的な変化も現れていましたが、新型コロナ全般に対する潜在的な警戒心や不安などは、簡単に薄れるものではなさそうです(図7)。

「5類移行後も、できる限り新型コロナへの対策を継続したい」は、この半年間ほぼ70%台前半で推移、また、「再び感染者数が大きく増えないか心配だ」「5類移行後に新型コロナに感染した場合の医療費が心配だ」についても大きな変化が見られません。

「マスク着脱や行動指針など、引き続き国が責任を持って方針やデータを提供してほしい」については5類移行直後には少し下がりましたが、その後は6月頃からあまり大きな変化はありません。つまり、5類移行で行動制限が大きく緩和された後でも、国や地方自治体による情報提供への要望は継続して高いと言えます。

(図7)「5類移行」後の新型コロナに関する意識 [時系列推移]

終わりに

本記事では、新型コロナ5類移行から約半年間の生活者のマスク着脱状況や消費行動、および新型コロナに対する意識の推移などの調査結果を見てきました。

マスク着脱などの生活者の動きは時期(状況)によって異なりが見られ、またその理由・目的も時期によって変化が表れました。同時に、新型コロナに対する潜在的な不安心理が根強く残っていることや、最近ではインフルエンザに対する不安も強く表れてきていることも確認されました。また、今回はご紹介できませんでしたが、同じ時期であっても、性別や年代別における意識や行動の違いも見られます。

生活者が日々の状況をどのように捉え、判断して行動しているのか。その一端をデータで確認することには、今後の消費動向や生活スタイルの変化、またその背景を知る手がかりとして大きな意味があると考えられます。

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この記事の全調査結果(グラフ集)は以下よりダウンロードいただけます。
https://www.macromill.com/service/report/research-report/089/

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この記事を書いた人

(注1)日本国内の定点医療機関での患者数は、2023年5月から9月上旬頃まで増加が続いた。(内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室 「新型コロナウイルス感染症定点当たり報告数推移」による)

(注2)「インフルエンザ定点当たり報告数推移」は2023年第35週(8月28日~9月3日)では全国平均2.56だったのが、第43週(10月23日~29日)では同19.68と大きく増加している。(出所:厚生労働省「インフルエンザに関する報道発表資料」の各週資料

【調査概要
調査方法:インターネット調査
調査対象:全国の20~74歳のマクロミルモニタ男女、各回1,000人
割付方法:令和2年国勢調査に基づき地域×性別×年代別に割付
調査開始日:2023年4月26日、5月11日、5月26日、6月9日、6月23日、7月11日、7月26日、8月10日、8月25日、9月11日、9月27日、10月12日、10月27日(合計13回、各回ごとに新規に回答者を抽出)
調査主体:株式会社マクロミル

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