星くず兄弟の伝説という名のタイムカプセル




 天才・近田春夫が1980年にリリースしたアルバム「星くず兄弟の伝説」は、架空のロックミュージカル映画のサントラ盤という、二重三重にひねりを利かせたシロモノだったりします。

 そのアルバムを実際に映像化してしまったのが映画「星くず兄弟の伝説」だったりします。

 メガホンをとったのは自主製作映画の世界でぶっちぎりに頭角を示していた手塚真を起用。当時の新宿ツバキハウス(劇中にもロケ場所のひとつとして使われています)人脈ともいうべきキャスト。

 「8 1/2」の久保田しんごと「東京ブラボー」の高木一裕という異色のキャスティングに加え、カメオ出演する顔ぶれも「ザ・80's」ともいうべき豪華な布陣。

 後に「リング」「呪怨」などでジャパンホラーブームを巻き起こした一瀬隆重も本作で初の商業映画の参加を果たしています。

 映画としての完成度は「?」がつく部分もあるのですが、今日の目でみてもたまらなくキュートで愛おしい作品で、ハリウッドスタイルのシナリオメソッドが定着した今日では逆に新鮮な輝きを放っています。

 この映画が80年代を切り取りながら、古臭くならないのは自由奔放な映像表現にあるのではないかというのが自分なりの回答であったりします。本作は全シーンに明確な監督の絵コンテが存在し、いかにしてそのコンテに近い映像を作り上げるのかというところに腐心しています。考え方は実写映画のそれよりはアニメの感覚に近いと思います。この部分に映像作家としての手塚真のセンスと天才性を見てしまうのは偏愛ゆえの錯視なのでしょうか?


 決して商業的成功を収めたとは言い難いですが、製作体制、配給、そしてその後の評価もあらゆる面において日本映画の型にはまらない作品であったことは確かであり、日本のサブカルチャーに小さくない爪痕は残しています。

2018年には続編となる「星くず兄弟の新たなる伝説」が公開されています。こちらも前作以上に自由奔放かつ、幾多の作品を経て成熟した監督の「いつまでも昔のこともちだされてもねぇ」感が漂う快作となっています。

 創造主である手塚真が困惑する顔も含めて、愛してやまない一本(続編も含めて2本)であったりします。万人にはお勧めはしませんが。



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