2.6 日本に投資する投資家の期待

1. 不動産投資は国が推奨する投資

不動産投資における国の施策として、J-REITの保有資産は年間2.5兆円〜増 (うちホテルは年間3000億増)、私募REITの保有資産は年間5,000億円〜増えています。

2. カジノを含めたIR法 

2030年までには統合型リゾート(IR)も、持続的に観光需要を増加させる集客装置の登場も控えています。2010年3月に発表されたカジノを含めたIR法は、12の経済重点分野(NKEA)である農業、教育、金融、ヘルスケア、オイル・ガス・エネルギー、通信、観光、流通事業を重点的に成長させるという方針を掲げています。

これらの産業のほとんどの分野で大きく不動産開発に関わっています。

3. インフラ整備 

インフラ設備の強化は空路だけではありません。リニア中央新幹線や中長距離を結ぶバスターミナルをはじめとしたインフラ整備も進んでいます。アクセス性の向上は日帰り客を増やす懸念も生じ得るが、リニア中央新幹線については元々日帰りが可能であった都市間を結ぶものであり、企業の拠点戦略がダイナミックに変わらない限り、懸念の顕在化は限定的だと考えられます。むしろアクセス性の向上はターミナルの後背地まで商圏が広がることを意味し、新たな観光需要を生む可能性を含んでいます。

羽田国際空港は、東南アジアのハブ空港として機能しはじめています。便数は1日あたり80便から130便に増便され、空路のインフラ整備を強化しています。これらは、既存ラインを拡張し、新ブルーラインとサークルラインで●年までに運行開始する計画です。都市部を中心に道路の整備が進み、高速道路網の整備も進んでいます。
(参考:https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/316232.html)

4. 働き方改革による旅行増

働き方改革によって余暇が増加したことで、宿泊を伴う旅行が増えています。

テクノロジーが進化して、働く場所の柔軟性が認められ、旅行しながら仕事もするというワーケーションという形態も見受けられるようになってきたためです。このような形態が長期の宿泊需要を生み出し、インフラ整備によって環境が整えられ、旅行に行く回数も増えていくでしょう。

5. 増える日本での国際会議(MICE)

「国際会議統計(JNTO) 」による国際会議の開催件数(JNTO基準(国際機関等が主催、50名以上、3ヶ国以上、1日以上) )及び日本人·外国人の別に係る参加者数の推移(2007年~2017年)を見ると、東京都区部における国際会議件数は増加基調で推移していることが分かります。開催件数は東日本大震災が発生した2011年に落ち込みが見られるものの、2007年(440件)から2017年(608件)にかけて増加基調で推移しています。

都区部で開催された国際会議の主な会場である東京国際フォーラムは5,000席超の最大規模を誇るホールAを2017年度に3ヶ月間にわたる休館を伴う改修工事を実施しています。また、東京国際展示場(東京ビッグサイト)では、延5万㎡超の増築棟を1事中(2019年6月完成予定)である等、MICE需要獲得のためのハード面の整備も進められています。

6. コロナ禍で世界で最も投資された都市は東京

コロナ禍で世界の不動産取引が停滞する半面、日本では海外マネーによる不動産投資が引き続き活発です。不動産サービス大手JLLによると、海外勢がけん引し、2020年1~6月の不動産取引額で東京は世界トップでした。利回りを追う世界の投資家の資金の振り向け先になっています。

コロナ禍で世界の不動産取引が停滞する半面、日本では海外マネーによる不動産投資が活発です。

以下、香港大手ファンドPAGの取り組みと戦略について記述します。

香港の大手投資ファンド、PAGは今後4年程度で日本の不動産に最大約8400億円を投じる。新型コロナウイルス禍で、企業の不動産売却や金融機関の不良債権処理が増えるとみており、受け皿になる方針だ。

日本は米欧に比べて新型コロナの不動産市場への打撃が限られ、相対的に高いリターンが見込めるとみる海外勢が多いです。

PAGは欧米など海外の年金基金などから27億5000万ドル(約2900億円)を集め、新ファンドを設立しました。借入金を含めた投資余力は最大80億ドル。アジア太平洋の物件も対象ですが、中心は日本で、全額を日本に振り向ける可能性もあります。日本中心の不動産ファンドでは過去最大規模です。

ファンドでは既存ビルを買うだけでなく、新規開発や、改装による用途変更も手掛けています。PAGは、大型工場を最新式の物流施設に改装した実績もあります。不動産会社へ出資したり、不動産を裏付けとする不良債権の購入をしたりすることも視野に入れています。

在宅勤務の定着により需要減が懸念されているオフィスビルにも投資しています。住宅が比較的狭く、IT(情報技術)インフラの整備も不十分なため、オフィス需要は大幅には減らないとみています。値ごろであればコロナ禍の打撃が大きい商業施設やホテルにも投資します。

海外投資家は、米欧に比べて新型コロナの経済的打撃が比較的軽微なアジアのなかでも、経済規模が大きく、売買の機会が多い日本への関心を高めています。

コロナ禍で打撃を受けた企業が不要な不動産や、非中核事業である不動産子会社を売却する機会が増えるとみています。

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