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5.3 投資タイプ別ポートフォリオ戦略

性質の異なる複数の投資を組合わせることによって、リスクを減らしリターンを最適化することをポートフォリオ理論といいます。

「いくら」「どこに」「何を」投資するか「攻めと守りのバランス」を考える上で、「攻め」だけを考えるならば、利回りが高いリスク資産に投資すればいいのですが、「守り」の資産も組み入れないと、有事が起きた際には耐えきれません。逆に、これから資産形成するのに「守り」の資産を買っていたら、一向に規模拡大できません。攻めと守りの投資タイプを大きく3つに分類し、それぞれの投資戦略を解説します。

【IRRとは】

内部収益率のことをIRR(Internal Rate of Return)と言います。一定期間お金を預けた時にどれだけ効率的にリターンが得られるか、毎年の利回りがいくらになるかという指標です。

【オポチュニスティクタイプ=IRR25%〜】

攻めの投資は、割安物件の発掘して、高収益が狙える投資をオポチュニスティク型投資といいます。

エリア: 立地の良し悪しは問わず、割安な物件=債券で言うとジャンクボンド(低信用債)のような不動産を安く買って、高く転売するような投資です。

リターン: オポチュニスティック型は目安として、レバレッジを使って、自己資金を4年で4倍にするような、IRR25%以上のハイリターン投資です。これは百戦錬磨の不動産業者と真っ向から競合するビジネスモデルであり、副業の個人が参入するには障壁が高い投資タイプです。

アセットクラス: 例えば、コロナ禍で訪日客がいなくなり、打撃を受けで割安になったホテルです。東京都内ではコロナ禍が起こる前は2020年にホテルが大量に新規開業し、供給過剰になる懸念がありましたが、コロナで供給が減り、インバウンド復活で需要が増えることを考慮したオペレーショナルアセットへの投資はオポチュニスティク型の典型です。

築年数: 築フルボロ物件の再生、流動性が懸念される旧耐震物件、1986年以前に建てられた給排水や耐震に問題があるような物件の再開発案件、耐用年数超過で誰も手がつけられないような歯抜け物件に立退をかけて更地転売するような投資もオポチュニスティク型に当たります。

【コアタイプ=IRR10%】

高資産性、低収益性の物件を保有する守りの投資をコア型投資といいます。

エリア: 都心一等地、都心駅近のマンション、駅直結ビルなど、債券で言うとトップ大手企業の格付けにあたるAクラスの不動産です。

アセットクラス: 戸数が多くリスク分散された築浅マンション、駅前ランドマークビルなどがコア型に当たります。一般的に一棟ビルは大型で、総じて投資総額が大きいため、個人投資家が買えない場合には、小口化されたリートや区分所有などに選別投資します。

リターン: レバレッジを低くし、20年で自己資金を2倍にするような、IRR10%前後が目安です。守り=負けないことが前提で、大きな損失を出さないように、低利でも長期安定した運用を目的とした年金や保険会社、資産家の相続に向いた投資です。

築年数: 新築から築10年以内の築浅ビルが対象です。都心築浅物件は建物比率が高い、価格自体が高い故に、再調達価格と取得価格が乖離することがほとんどです。

【バリューアッドタイプ=IRR15%】

攻めと守りの中間で、ミドルリスク、ミドルリターンを狙う投資をバリューアッド型と言います。債券で言うと、中堅企業の格付けに当たるBクラスの不動産です。

エリア: 都心の一等地をあえて外して、2等地、2.5等地をねらい、東京でいえば、練馬区、板橋区、北区などの住宅地や、千葉、神奈川、埼玉駅徒歩10分以内の立地です。

アセットクラス: 例えば、リノベーションで再販できるようなマンション、都心から1時間圏内のリゾート立地にあるマンション、都市部の不動産需給が緩み始めたオフィスビルです。コロナ禍で在宅勤務が全国に広がった影響で、オフィスを敬遠する投資家がいますが、一部の大型オフィス以外は、テナントの退去などで賃料収入が減るといったダメージは軽微です。リモートワークに適さない業種や、在宅勤務には十分な環境が整わず勤務管理に支障が出ているケースもあり、次第に都市部の不動産への需要が戻ると見ています。

築年数: 築10年以上、平成初期の築のイメージで、耐用年数が20年前後ある鉄筋コンクリート造が対象の物件タイプです。

【どれにも当てはまらない避けるべき物件】

賃貸需要が少ない、築浅アパートの激戦区などは貸すにも売るにも苦労します。逆にこれさえ避ければ、株のように価格変動率(ボラティリティー)が高いわけではないので、リーマン・ショックやコロナショック時でも損することはありません。

マクロ的にも、過去にあったような不動産の暴落が起こるとは考えていません。不動産が暴落するのは、利回りで説明できない水準まで価格が上昇した後、レバレッジコントロールができない時です。1990年の不動産バブルや、2007年の不動産ミニバブルの時は、銀行ローンがユルユルで金利が高い中で、REITや不動産の利回りが低くなっていました。今は金利が低く、REITも不動産も妥当と考えられる利回りが出ているので、ここからさらに大きく下落する可能性は小さいと、判断しています。

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