2.5 観光業に賭けてボロ儲けした外資

1. 外資系ファンドの姿

アベノミクス以降、日本の観光業が見直され、ホテルや民泊が注目されるようになりましたが、実はその前から日本の観光資源のポテンシャルを見出し、投資してきたプレイヤーがいました。それは外資系ファンドです。

国内にはホテル系リートが4つありますが、そのうち、3つは外資系ファンドがスポンサーになっています。日本のデベロッパーが懸念する中、オリンピックで盛り上がる前からホテルに積極的に投資してきたのは外資でした。

以下、4つの国内ホテル系リートの特徴とファンド規模を、それぞれ御紹介します。

ジャパンホテルリート投資法人(JHR)

ジャパンホテルリート投資法人(Japan Hotel REIT) JHRは、 旧日本ホテルファンド投資法人と 旧ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人が合併して誕生した、 国内唯一のホテル特化型J-REITです。

スポンサーのRockrise Sdn Bhdはリキャップ・グループ傘下のSC CAPITAL PARTNERSに属するマレーシアの企業で、国債からローン、社債、不動産まで幅広く投資し、不動産に大きく関わっています。以前は米ゴールドマンサックスグループの傘下でしたが、JホテルRの資産運用会社の株式を日本ホテルFの主要スポンサーの投資ファンド、リキャップ・グループに譲渡しました。

JホテルRの投資口もリキャップに売却しています。共立メンテナンスなど合併REITのサブスポンサーもいましたが、メインスポンサーはいずれも外資系でした。

ファンド資産総額:3,500億円

インヴィジブル投資法人(Invincible REIT)

インヴィンシブル投資法人(Invincible REIT) は2011年に破綻しかけていた東京グロースリートとLCPリートを合併し、ヘッドファンドの米フォートレスインベストメントグループがエクイティ60億出資して再生させた総合型リートです。

総合型といっても資産の約7割がホテルを占め、宿泊特化型からフルサービス、リゾートホテル、海外の高級リゾートまで様々なタイプのホテルに投資しています。2013年に420億で取得した東京ディズニーランドにあるシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルを、2017年にリートとシンガポール政府ファンドのGICに977億で卸しています。わずか4年で560億ものキャピタルゲインを出しました。

また、グループ内には元ツカサウィークリーマンションの運営会社を買収したマイステイズホテルマネジメントがあり、リートのホテルを運営しています。

ファンド規模:4,500億円

森トラストホテル投資法人 

国内で唯一の森トラストがスポンサーの当リートは、総合デベロッパーとして、戦略的にホテルにも投資しています。ヘルスケア、インフラ、建築、メディア、通信、不動産、不動産開発にも大きく関わり、民間企業と一緒に開発を行っています。海外の企業を誘致したり、虎ノ門、六本木、麻布エリアを国家戦略となる2大開発予定地にすることも発表しています。

ファンド規模:2000億円

いちごホテル投資法人 

モルガンスタンレー証券出身のスコットキャロン氏が代表のいちごグループで組成したホテルリートです。少し後発組ですが、宿泊特化型のホテルや有名ホテルチェーン系列のホテルをメインに投資して、見事にキャピタルゲインを実現させています。

ファンド規模:2,000億円


上記4ホテルリートのうち、3つは外資系がスポンサーです。外資に肩をもつわけではありませんが、震災後に復活した日本の観光業の可能性を見出し、REITに投資したのは外資しかいません。

ブルーオーシャンの中で1人勝ち状態でした。いまや、国策の観光業に賭けた外資が先行者利益で勝ち組になっています。

2. 国内デベロッパーのホテル開発の事実

残念ながら、ホテル開発を進めていた国内デベロッパーはいませんでした。盛り上がって供給がピークに差し掛かった頃に、国内スポンサーがホテル投資を始めましたが、いずれも二番煎じで外資の後追いでした。

さらに未曾有の金融緩和でマイナス金利も享受し、莫大な利益を出せたプレイヤーであることは間違いありません。

3. 外資件の先見性

外資は実は過去にも同じような経験をしています。不良債権処理のために制度化させた資産流動化スキームをうまく使い、今回も日本の銀行から物件担保にノンリコースローンで調達してボロ儲けしたのです。そういう意味でも、常に先見性がある投資をしているといえます。

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