切符
たぶん。
あっちの世界へ行くには、切符がないと行けない。
夢で見たこと。
赤く夕焼けが染まる電車の車内で、車掌さんみたいな人に切符を出すように言われた。
ぼくは、慌ててポケットの中を探したが、切符は見つからなかった。
そこで、電車を降ろされ、2人の女性に真っ暗な細い道に案内された。
進んでいくと、突然、目の前が開いて、昔の古い駅の改札に出た。
そこには、大勢の人が誰かを待っていた。
そこには、ぼくの両親もいた。
そこで、ハッと目が覚めて、夢なんだと思った。
この夢で、薄々感じたこと。
それは、切符がないとあっちの世界には行けないということ。
切符がなければ、途中下車をさせられる。
じゃあ、その切符とは何か?
どこで手に入れることができるのか。
それは、たぶん、家族からの手紙なんだと思う。
その夢をみたのはかなり前だが、今から1年くらい前に父親が亡くなった。
そのときの葬儀に、手紙を書いて棺桶に入れるという儀式があった。
ぼくは、そのときに思った。
この手紙が、あっちの世界への終着駅へ辿り着く切符なんだと思った。
だから、無事にあっちの世界へ行けるように手紙を書いた。
「安心しろ。あとは、ぼくが引き受ける」と添えて。
そして、昔飼っていた犬の写真も封筒に入れておいた。
あっちの世界に行っても、可愛がっていた犬に会えるように。
写真をみれば、きっと、愛犬が迎えにきてくれる。
写真があれば、きっと、引き寄せるはずだ。
あっちの世界でも、きっと幸せにいれるように願って。
切符がないと、あっちの世界には行けない。
こっちの世界に残された人ができるのは、切符を渡すことだけだ。
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