見出し画像

透明

たぶん。
死後は、しばらくの間、こっちの世界にいることができる。
その期間は、49日間だと思う。
それまでは、姿は見えないけれど、こっちの世界で生活ができるような気がする。
こんな体験をしたことがあった。
愛犬が亡くなって、しばらく奇妙なことが起こった。
それは、食べ物を取ろうとするときに、なぜか、食べ物を落とすことが多くなった。
愛犬の死により、動揺して、手が震えるとかではない。
普段とおりの生活をしていて、なぜか、食べ物が床に落ちていく。
それは、しばらく家族の間でも起こった。
家にいると、食事のご飯を落としたり、母親は、スーパーのお惣菜コーナーで、天ぷらを落としたり、ぼくは、会社のランチのときに、焼きビーフンを半分くらい床にぶちまけた。
あまりにも、奇遇なできことにおかしいと思わざる得なかった。
ぼくは、ふと思った。
きっと、愛犬が食べ物があるところに来て、「ボクもちょうだい!」と邪魔をしているんだと想像した。
そういえば、愛犬は、とっても食いしん坊だったな。
死後も、透明な犬となって、家族の間を行き来していたのかもしれない。
大好きな食べ物を探し回っていたのだろうか。
それも、しばらくたって、食べ物が落ちるといった現象はパッタリとなくなった。
また、父親が亡くなったときも、不思議な現象が起こった。
朝、誰もいないリビングの電気をつけると、稲妻のように「ビカビカッ」と電球が光ることがしばしばあった。
スピリチュアルな本を読んで見ると、死後すぐは、電気などで「まだここにいるぞ」と知らせることができるらしい。
父親も、透明な体になって、ぼくに何かを呼びかけていたのかもしれない。
そういえば、亡くなる直前に、腰が痛いからソファを変えてくれと頼まれた。
慌てて、Amazonで硬めのソファを購入し、入院している間に組み立てて、帰ってくるのを待っていた。
しかし、残念ながら、その新しいソファに座ることなく、亡くなってしまった。
それでも、死後に家に帰ってきて、そのソファに座ったのかもしれない。
そのお礼を電球で知らせてくれたのかもしれない。
「ソファ変えてくれたんだな。ありがとう」と。
その電球が光る現象も、四十九日が過ぎたあたりから、落ち着きを取り戻した。
たぶん。
死後は、少しの時間だけ、透明になって生きていることができる。
その短い時間、家族と過ごすことができる。
それは、言い残したことを伝える最後のロスタイム。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?