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地テシ:303 旧甲州街道沿いの家々ってば!

買っちゃった! え、何を? そりゃ今世界中で話題のゲーム「ホグワーツ・レガシー」PS5版さ! 全世界でもう1200万本売れたんだってさ!

いや、ハリー・ポッターのシリーズは一作目「ハリー・ポッターと賢者の石」の小説版と映画版しか見てないし、それ以降は映画版をチラッと見た程度だし、つまりはその世界観にそれほど詳しくないから買わないつもりだったんだけど、あまりの評判の良さについ買っちゃった!
とても美しく、しかも細部に至るまで細かく描写されているので、これはファンの方には堪らんのではないでしょうか。探究心をくすぐられる作りです。魔法も簡単に出せるし、よく知らない私でもかなり楽しんでいます。こちらもボチボチと進めていきたいと思います。キャラメイクもある程度できるよ!


さて、前回はJR南武線谷保駅近くにある谷保天満宮に詣った話を書きました。稀少な下り宮である上に小さいながらも自然豊かな面白い神社だったって話でしたよね。
しかし、もう一つの目的はその辺りの旧甲州街道を歩くことなんですよ。そうなんです。最近の私は旧街道を歩いてみる面白さに気がついたのです。

旧街道を歩く面白さは色々とあります。その古さによって様々な楽しみ方がありますが、往古の人々の営みや生活を想像してみたり、緩やかなカーブを慈しんでみたり、高低差を体感してみたり、それはそれは多様な楽しみ方ができます。地理的な楽しみと歴史的な楽しみ。その相互干渉を感じることで何倍にも楽しみが広がるのです。


そんな中、ちょっと伝わりにくいとは思いますが、私が興味を持っているのが「旧街道沿いの家々の佇まいと地割り」なのです。旧街道というのはかつてのメインストリートですので立派な家が多いのです。
商家にしろ農家にしろ、街道沿いの家々は広い敷地を持っていることが多く、その名残を今でも感じられることがあるんですね。しかも、江戸時代には場所によっては間口の広さに対して税が掛けられていたので、節税のために間口が狭く奥行きが長い、いわゆる《うなぎの寝床》な地割りが流行したと言われています。
つまり、街道に直角に細長い敷地が多かったって話ですよ。街道に面して門や店屋があり、庭があって母家や蔵があって、その奥に離れや細長い農地があるという構成です。

ところが、都市化が進んで道路が拡幅されたりビルに建て替わったりするとこの構成が変わってきます。交通量の多い街道に面した町ほど早く近代的になっていきます。また、相続時に土地が細分化されたり売却されていったりすることでも構成が変化していくでしょう。
しかし、都心から少し離れた街道や、あるいは近所に並行したバイパスが作られた旧街道の場合は新陳代謝のスピードが遅くなって古い構成が残されている場合も多いのです。そういう景色を見て回るのが面白いって話ですよ。

JR矢川駅~京王府中駅あたりの甲州街道でも昭和三十年代に拡幅工事が行われてはおりますが、今でも古い町割りが割と残されていて風情が良いのですよ。
旧甲州街道に面して石垣や生け垣が巡らされ、木々の生い茂った広い庭があって、母家に続く敷石とかがあったりしてね。母家だって木造瓦葺きの二階家ですよ。中には平屋だってあります。
庭の一角や母家の裏には立派な蔵がありましてね。小さな祠があって屋敷神が祀られていたりね。また、奥の方に納屋があったりして、今でも農具が置かれてたりします。
こういった昔ながらの構成を残した民家を見るのが好きなんですよ。なんでしょうね、郷愁というのとはちょっと違うのですけれども、古い営みが感じられるのがいいのかもしれません。

しかし、これらの民家は当然ながら個人宅ですから現在でも使用されているワケです。ご迷惑が掛からないようにチラッと眺めながら通り過ぎるワケですが、それにしても素敵なお宅が多いんですよ!
本当のところはこの素敵さを写真などでお伝えしたいのですが、個人宅となりますとそれも難しいところです。
ですが、お店とかならばご紹介しても失礼にはなりますまい。しかも、昔ながらの地割りが判る状態のお店・施設があったのですから、これはもう是非ともご紹介したいと思うのです。


一つ目は矢川と谷保の間にある農家レストランの「千丑茶屋(ちうしちゃや)」さん。

旧甲州街道に面した土地で代々農家を営んでいたオーナーさんが、建材を再利用しながら母家をリノベーションして2017年にオープンしたレストラン。テレビドラマのロケにも使われるほどお洒落で明るく開放的なお店です。

乳牛を飼っている農家が多かったのでこの辺りの集落名が千丑(ちうし)だったのだそうです

お店自体も素敵なのですが、私が心惹かれたのはその敷地の使われ方です。

素敵な庭にご注目下さい

右端が旧甲州街道で、狭い歩道を挟んで庭があってからお店が建っています。これこれ、この感じ! この辺りにはこんな感じの家々が多いという話なのです。
別の角度からの写真もご覧下さい。

オープンテラスと大きな窓が見えますね

歩道から撮ったのですが、敷石や移設された鬼部(瓦屋根の端っこ。いわゆる鬼瓦)があり、昔は石垣や門扉があったのを取り払って、庭が直接見えるようになっています。もちろん昔のままの庭ではないでしょうが、街道沿いの農家の風情を感じられる構成が残っています。

丁度オーナーさんがいらっしゃったのでお話を伺うことができたのですが、やはり元々は細長い敷地で裏側はずっと奥まで農地だったのだそうです。築60年ほどの母家の部材を再利用してお店が作られているとのこと。

柱や梁、欄間など、古民家の部材が再利用されています。オシャレ!
ランチ時間の終わり際だったので、プチ米粉ケーキとコーヒーを頂きました。ふわもちっ!

お店の裏には駐車場があるのですが、そこには蔵も残されていていました。

大谷石で組まれた石倉(せきそう)です

この蔵もリノベーションされていて、個室として貸し出されることもあるのだそうです。

このお店のリノベーションを施工した建築事務所のHPでも様々な写真を見ることができますよ。



さて、旧甲州街道沿いの家々の姿が見られるもう一つの施設が、谷保天満宮からちょっと東に行った所にある「やぼろじ」さん。

野趣溢れるお庭はおそらく昔のままなのではないでしょうか

「やぼろじ」さんは江戸時代から甲州街道沿いにある本田家の敷地の一角にある、カフェや工房、子育て支援スペースなどがある施設です。2010年から「谷保の家再生プロジェクト」の一環として古い建物をそのまま、あるいはリノベーションして活用しているようです。
本田家というのは江戸時代から代々医者として、そして名主として谷保の地に根ざしてきた名家で、その住宅は東京都指定有形文化財(建造物)に指定され、現在は解体復元作業に入っているようです。

こちらが本田家母家の薬医門。甲州街道の拡幅工事に伴って場所がちょっと移動しています
旧本田家住宅の解体復元作業の進捗も掲示されていました

そんな由緒ある広大な敷地の一部を借りて、地域に根ざした活動として「やぼろじ」さんは活動しているようです。こちらも「千丑茶屋」さんと同じように塀や門を撤去して展開されているために明るく開放的な雰囲気です。それが故にその地割りや構造が判りやすく、大変興味深いのです。
例えば蔵をリノベーションしたアクセサリーショップがあったり。

一階がパーソナルカラーのアトリエ、二階がアクセサリーショップのようでした

古民家をそのまま使った子育て支援スペースがあったり。

もう全体的に野趣に溢れています

こちらの「つちのこや」さんは谷保の里山風景広がる環境を活用しながら地域の子育て支援活動を展開しているようです。私が訪ねた時には放課後活動の最中でしたので詳しい話は伺えませんでしたが、古き良き民家を活用した様々な活動をしているそうです。
この建物がまた素敵なんですよ。和室と洋室が合体した構造になっていて、それがそのまま利用されています。

和室部分。子育て支援施設です
洋室部分。この玄関の形がすごく昭和中期っぽいんですよ

この佇まいですよ。庭があって母家があって蔵があって。塀がないのでその構成が判りやすく見て取れます。近所には同じ活動団体が展開している広場や農園などもあり、谷保の自然と地割りを利用した取り組みが行われているようです。

街というのは時代と共に変化していくモノですが、変化するモノもあれば残されるモノもあり、それぞれの良さを確認しながら発展していければいいですね。


ああ、今回の旧甲州街道の散歩では様々な発見や気付きがあったのですが、家々について書いている内に長くなってしまいました。旧甲州街道についても書きたいのではありますが、何しろ劇団☆新感線「ミナト町純情オセロ」の稽古も終盤です。稽古が終盤ってコトは本番が近いってコトですよ。こちらについても色々と書くべきコトもありますので、旧甲州街道についてはまたいつか。余裕ができたら書いてみたいと思います。


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