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王子のこと



「犬派か猫派ならどっち⁇」


プライベートな話をしたいと思った時、この質問は正に王道と言えるだろう。実際聞かれた事のある方は多いのではないだろうか。

中には「犬より猫よりうさぎや」「いやハムスター」「何言うとんじゃ文鳥最高」「モルモットしか勝たん」なんて方もいるのだろうが、


筆者は、圧倒的猫派である。


(あ、ただし、過激派ではない。念の為。)


ここまで来れば察しの良い方はお気付きだろうが、タイトルの「王子」とは、我が家の猫の事である。


今回の話はそんな王子のことについて、少しお話ししようかと思う。

既に親バカ全開になる予感がしているが、猫飼いあるあるとでも思って目を瞑っていただけるとありがたい。

がぶり


いきなりやられてしまった。

保護猫だった王子を連れて帰ろうとした私だったが、どうにも王子をとんでもビビらせてしまったらしく。

隙間へ逃げ込んだ王子を引っ張り出そうとしたら、これである。


なんとかキャリーへ入ってもらうことには成功したものの、王子の入った洗濯ネットには私の血がそこそこの量ついてしまっていた。


解説しておくと、猫を病院などで外出させる際、暴れたり逃げ出したりしないように大きめの洗濯ネットに入っていただくことがよくある。

自分の場合は入っていただく前にやられてしまったわけだが。


ちなみに噛みつかれた右手の傷は案外深く、治るのにそこそこの時間を要した。


こればかりは完全に自分が悪い。

王子は相当怖い思いをしたのだろう。今でも申し訳ないと思っている。

ぴたり


まだかなり眠気が強かったのだが、その日の朝はあまりにも暑く、寝苦しくなって目が覚めてしまった。

いや、正確には、その日の朝「も」である。


年がら年中暑い南国、この暑さからはどうしても逃げようがない。

ただ暑苦しいのにはもう一つ理由があった。


王子である。


がぶりとやられたあの日から約一年半、王子はすっかり甘えん坊と化していた。

夜、寝ようとベッドに横になった途端にやってきて、必ず私の身体のどこかにくっついて座る王子。

しばらくして動いたかと思いきや、今度はまた別の、でもやはり私にくっつけるところへ移動するのだ。

横向きで寝ているところから寝返りをうとうとすると、背中にくっつくように寝ていたりするから油断ならない。

結局寝ている間は王子を踏まないよう寝返りをうつことに終始する羽目になるのだ。


寝ている時だけではない。

起きれば王子もベッドを降りてついて来て、歩く私の足元にぴたり。

ソファに座れば隣にぴたり。

食器を洗っていても後ろにぴたり。

洗濯をしていても気が付けば横にぴたり。


どこにいても、ぴたり。


トイレやシャワーの時ですら、扉を開けるとそこにいる。


…先程「甘えん坊」などとやさしい表現をしたが、これはもはやストーカーと言った方が近いかもしれない。


ここまでされても気にならないのは確実に、王子が猫だからであろう。


猫最高っすよね。てかうちの子はちょっと可愛すぎる。見てよ、ほんま天使(親バカ)



兎にも角にも、あれだけビビり倒していた以前の王子を思うと、よくこれだけ信頼してくれるようになったなぁと。


「がぶり」

ときたあの時のことを思い出すと、なんだかしみじみとしてしまう自分がいるのである。


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