クリムトに救われた日
1日休暇を取った日から数えて初めての週末は、有難いことに予定があって。
まだ完全に修復されたわけではない身体を労りながら、上野に向かった。
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友人との待ち合わせに時間が少しあったので改札に向かうと、そこには少し人だかりができていて、よく見ると、ストリートピアノの前に座るスーツ姿の男性が、美しい音色を奏でていた。
見た目の謙虚さからは想像がつかないほど力強く、繊細な指さばきに、気がついたら涙が溢れていた。
程なくして友人と合流し、根津の住宅街にある、マンションの一室に向かった。
扉を開けると、エプロンをした可愛らしい女性と、優しそうな、髪を括った男性が出迎えてくれた。
ここはartwine. tokyo
ナチュラルワインを片手に、有名画の模写体験ができる場所だ。
絵にはアウトラインが引いてあり、塗り絵のように進められるので初心者でも挑戦しやすく、
またキャンバスや絵の具を使うのでかなり本格的な作品になる。
この日は、近くの芸大で油絵を専攻する学生が講師となり、クリムトの接吻を描く体験だった。
初めて触るキャンバスにどきどきしながら、ここは思い切りだ、と自分なりに色をつけていく。
"下書きははみ出して塗りましょう、
既成の色でもいいけれど、あえてこの色を混ぜると立体感が出ますよ。"
講師の声掛けに呼応し、ひたすら色を塗り重ね、気づけば2時間。
中盤、女性のあごがピザのように伸びすぎてどうなる事かと思ったが、遠隔で見たらなかなかにクリムトな、私なりの接吻が完成した。
完成したことの達成感と、この作品のきらびやかな色彩に、心がすごく晴れやかになるのを感じた。
外の雨も、いつの間にか止んでいた。
「駅でピアノを聞いてから、作品を完成させるまで」
わずか3時間の出来事で、私の心はすっかり昇華された気がした。
(クリムトって救世主?)
ただただ身体を休める時間。動かす時間。
人生、今しかないこの瞬間の思い出を更新する時間。
仕事を終わらせる時間。次の日の下準備をする時間。
家事、ご飯、お風呂。。
休みの日の過ごし方は色々あるのだけれど、
その塩梅が上手く見つけられていなくて。
心がついていかない日も、張り切り過ぎて身体がもたない日も数多くある。
でも、このタイミングで、雨の日だけど外に出てピアノを聞き、絵を描いた経験は、今の私に一番必要な時間だったように思う。
心も身体も時間もお金も、詰めすぎず、
程よい余裕をもって。
自分で自分の機嫌をとるのに成功したこの休日は、大大大満点💮
もちろん、一緒にそれを経験させてくれた友人にも感謝したい。
絵を描くって、いいですね。
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