エリーゼに心をこめて【毎週ショートショートnote】900文字

課題：【オノマトペ】【ピアノ】

”エリーゼのために”をミス無く最後まで
弾けるようにはなったけれど、
先生はどこか満足していない様子だった。
「この曲って変調が多いいんだけどね、
なんでだと思う」
「なんででしょう」
私はそう答える他なかった。
「きっとね、エリーゼの事が好きなのよ。
でもね、エリーゼはとっても移り気が多くてね。
エリーゼの心が常にこちらに向いてもらえるように、エリーゼを楽しませるために、なのよ」
先生はそう言ったものの、
うまく伝えられないもどかしさで、
苛ついている様子だった。

「音符から少し離れて弾いてみましょうか」
二人の間にピンと張った沈黙の糸を破って
先生はそう言ったけれど、
音符から離れて弾くとは
さらに難題のように思えた。
「そうだわ、
この曲はエリーゼのためのラブレターなのよ」
先生は閃いたように言ったけれど、
私には意味が分からなかった。
「もっと文学的にとらえるのよ、
そうよオノマトペだわ！
愛してる感情を音で表現する感じよ」
「感情込めて弾いてみればいいのですね」
先生の勢いに押されてそう答えてしまった。
「そうよ！
もう冒頭からオノマトペで感情入れてみてね」
「最初の二小節ぐらいしか知りませんが、、、」
「二小節だけでもいいわ、
そこでエリーゼを引き込むの」
自信はなかったが、
もうやるしかないとピアノを弾き始めた。
「とうちゃんのためなら～、
エンヤコラ　エンヤコ～ラ
かあちゃんのためにも～、
エンヤコラ　エンヤコ～ラ」
私はその二小節しか知らなかったが、
エリーゼの曲に合わせて
感情をこめてヨイトマケの歌を
歌いながら弾いていった。

横目で先生を見てみると、
狐につままれたような顔をしていた。
「これはなんですか？」
「言われた通り冒頭からヨイトマケの歌で
感情を入れてみたんですけど」
「ヨイトマケ？、、、、、オノマトペ。
なんだか似た音してるし、それは
それでオノマトペって言えるわね」
先生は笑いながらそう言うと
「ヨイトマケのエリーゼもなかなか
素敵な感じがするわ。
ピアノもぐっと良くなってるし」
オノマトペの意味は分からなかったが、
ヨイトマケのお陰で
私のピアノは良くなったようだ。
エンヤコーラ　エンヤコーラ♪

（おしまい）
たらはかにさんの企画
毎週ショートショートnote
投稿作品です。
また企画より長めの字数ですね😅

ヨイトマケ*の意味良く分かりませんが、
さすが美輪さんです。
エリーゼが良くなったみたいです！

ヨイトマケ*: この意味をLove the PTA さんが
コメントで詳しく教えてくれています。
ありがとうございます♪えんやこーら♪