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サタン、苦悩のミレニアム【ショートストーリー】 1000文字


課題:「天使のキス」 「大増殖」
「憎しみ合い、奪い合い、虚偽に溢れ、
戦争を起こし、愛よりも金を妄信している。
今の人間世界でワシらは何をすれば良いのか。
この1000年の間、
ワシは我慢に我慢を重ねてきた」
サタンはジレンマに耐えていた。

「人間達を正しき道に導くミカエルは
どうしたというのだ。
天使たちは何をしておるのだ。
ミカエルよ、おおミカエルよ!」
サタンは天を仰いで叫んだ。

「サタンの旦那、
そうピリピリしやさんで下さいな。
こちとら1000年の間、
気持ちのいい昼寝の最中でね。
せっかくの夢見心地が台無しでござんす」
サタンの隣で昼寝をしていたデビルが言った。
「あっしらもね、サタンの旦那の命を受けて
勤しみたいのですがね、
人間世界がこうも悪に染まっているとね、
見ている以外にやることないっス」
デビルはあくび混じりにそう言うと、
サタンは不敵な笑みを浮かべながら続けた。

「ほーーほー、さてはミカエルの奴、
ワシ等を欺くためにわざとエンジェルたちを
サボらせて、悪魔世界を看過してるな、、、、
ならば我らも考えがあるというものよ」

「まっまっ、まさかサタンの旦那、
あのサタン禁断のボタンを
押しちゃうんじゃないでしょうね?」

「おう、そのまさかよ。
むこうがその気ならこちらもその気、
“天使のキス“ボタンを押すまでよ」

「サタンの旦那、
そのボタンだけは押しちゃーいけません。
あのボタンは悪魔世界への冒涜でござんす」
「これからは存分にワシらの活躍する世界よ」
サタンは高笑いしながら、
椅子のひじ掛けの内側にあったボタンを押した。

“天使のキス“ボタンの威力は凄まじく、
一瞬にして人間世界を一変させてしまった。
人々が愛に芽生え、
世界にキスの増殖が伝播していった。

敵対する国家の元首はキスを交わし、
戦争は終わった。
嘘は辱められ、
人々はキスをし、お互いを赦しあった。
持っている者は分け合い、
キスでお互いの愛も分け合った。
貧しい人々は正当な施しを受け、
キスで感謝を示した。
世界に花が溢れ、
キスのできない相手には代わりに花を贈った。

「ほほほぅ。エンジェルたちよ、よくこれまで
悪がはびこる醜い世界に耐えてくれたの。
ワシの思ったとおりじゃ。
サタンの奴、
とうとう“天使のボタン”を押しよった。
世界にキスが溢れておる。
これで人類に愛の大増殖とも言うべき
新たな愛のミレニアムの到来じゃ」
大天使ミカエルは光にあふれる
人間地上世界を見下ろしながら、
満面な笑みでそう言った。

(おしまい)
*たらはかにさんの企画のお題に沿っていますが、
字数がオーバーしすぎてるので不参加です。

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天使のキスボタンを早く押して欲しい
世の中だなぁと思うこの頃でございます💚
今回も長めの1000文字ですが、、、。