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天彦産業はなぜいい会社になれたのか 〜統合組織開発の観点から②〜

前回コラムで、統合組織開発の観点から企業を分析するPMDB理論を紹介しました。
それでは、(株)天彦産業のPMDBを見ていきましょう。

【(株)天彦産業のPMDB分析】

まず、すべての中心となる、理念体系がさすがです。
企業理念・社是・ミッション・ビジョンは、企業経営の目的そのものですから、ここに魂が入っていないとすべてが機能しません。

経営理念は、経営者の経営哲学を凝縮してできるものだと私は思っています。
経営者だけで作るにしても、社員と一緒に作るにしても、どちらにしてもここには譲れない信念が入っていないと絵に描いた餅になります。さらに、社員が共感できるものでないといけません。

その点、同社の理念体系には、3Hと呼ばれる3つの幸せの追求が掲げられています。
『自らの幸せ・家族の幸せ・会社の幸せ』です。
この3つというのがとてもバランスがとれています。

3つがあることで、会社を無視した自己中心的な満足追求は許されませんし、会社のためが自分の喜びというワーカホリックも許されません、会社と家族のために自分を犠牲にすることも許されません。
自分も家族も幸せな仕事人生を送りながら会社をより良くしていく、まさしく人として理想のカタチを表現しています。

しかし、この理想を掲げているだけでは経営はできませんし、理想を実現するには厳しさも必要です。そこで、同社は3Hを実現するための「実践十ヵ条」という行動規範も掲げています。実践十ヵ条では、社員として土台となるあり方、考え方を示しているのです。一つ一つを見てみるとわかりますが、そこには仕事に対する厳しい姿勢が書かれています。
この実践十ヵ条には、職場や組織のあり方、仕事や業務の考え方が書かれているため、P領域にもM領域にも影響を与えています。

同社は、顧客第一ではなく社員第一を掲げています。顧客第一を掲げたらこの3Hと異なる軸ができてしまいますから、これも一貫性があります。この社員第一というのは、会社(経営者)は社員と家族の幸せを第一に考えるということです。社員からしたら、会社が自分と家族の幸せを第一に考えてくれるから、不安なく思いっきり顧客満足を追求することができるのです。だから、実践十ヵ条でも、四ヶ条目に顧客に対する姿勢が表現されています。

また、『価値の追求』天彦行動十訓というものも存在します。これは、顧客に対しての価値を追求するための行動指針と言えるでしょう。

同社のビジネス上の強みとして、コアコンピタンスが3つ明確にされています。グローバル展開・提案力・商品力です。
このうちの提案力が高くなる要素が、実践十ヵ条と天彦行動十訓に詰まっています。

まず、実践十ヵ条の四ヶ条目である「顧客の如何なる問題も自らの問題と捉え、個別対応で解決を図る。」の個別対応というのがとても大切なポイントだと思います。マニュアル的でも均一的なサービスでもなく、個別に対応するという姿勢だからこそ、天彦行動十訓の下段6つの言葉とピタッと合います。そして、実践十ヵ条の七・九・十によって、社員一人一人が単独プレーに走るのではなく、チームとして顧客満足を高められる動きを促しています。

これらが、PD 領域の「踏み込んだ提案」「特殊鋼の一括受注」を実現させています。例えば、顧客担当者が複数社に依頼する手間を省くために、天彦産業で一括受注するとか、トータル提案によって顧客のコスト削減を実現するとかです。

目標管理制度も、実践十ヵ条という根本姿勢があるからこそ成り立っていますし、そして社員が顧客への提供価値を頑張って高めて業績が上がったら、成果配分制度があるためしっかりと社員と家族に利益は配分されます。

まさしく、社員第一と顧客満足が素晴らしく循環されているのです。

次のコラムでは、同社のグローバル展開とMD領域について触れていきます。


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