継続の神、現る
たすく、ギターを弾いている。
といっても、曲を弾いているようには見えない。
継続の神: あれ、またギター始めたのか?
たすく: そうだよ。ところで、あんたは誰だ?「煩悩」や「自己欺瞞」なんてものが現れることがあるが、あんたは初めて見る顔だな。
継続の神 :俺は継続の神というのだよ。
たすく :継続?続けるということか。確かに、ギターは続けてないな。考えてみれば、何かをずっとやり続けるってことが少ないかも。
継続の神: そうだろう。いいところまで行ってるのに、止めてしまう。それがたすくの悪い癖だ。ギターだって何回目だ?また初心者からスタートだな。
たすく: そうさ、これで三度目だ。いつも初心者止まり。ギターは買っては売り、買っては売りで、もう六本くらい買ったかな。形から入るタイプだから、ギブソンやマーチンなんて高いギターも持ってたけど、部屋の飾りと化していた。で、今はこの安いギター1本だけさ。
継続の神: どうしてまた始めたんだ?
たすく: 夢について真剣に考えてみたんだ。いままで色々手を出したけど、結局何も身につかない。みんな中途半端なんだな。で、本当にやりたいことを絞って、続けないとダメだってやっと気づいたんだ。遅まきながら。
ギターもその一つだよ。
子供の頃から歌や楽器が好きだったけど、特別な教育は受けてないし、音楽理論も分からない。楽譜も読めない、音楽の授業も嫌いだった。でも、自分で弾く喜びは永遠に失くならないだろうと思ってね。ギターが弾ける人になりたいと思ったんだ。
継続の神: そうか、やっと気づいたか。継続は力なり、なんていう言葉があるけど、何を継続するかが絞り込めてない人が多い。あっちフラフラ、こっちフラフラとそういう者だらけだ。たすくだけじゃない。
たすく: で、継続の神は何をしてくれるんだ?心が折れそうなときに励ましてくれるのか?だったら今まで何度も会ってるはずだが。
継続の神:いや、違うんだな。継続の必要性を真に感じて何かをやり始めた者のところに現れる。ちょっとかじっちゃ投げ出す。そういう者ばかり相手にしていたらキリがない。たすくはギターだけでなく、他のことも継続の重要性を認識して続けていることが増えているじゃないか。これは応援してやらねばと思ってやってきたんだよ。
たすく:なるほど、俺の心の弱みにつけこんで止めさせようとしているわけではないんだな。つまり、味方だ。
継続の神:その通り。続ける意思がある、続けている、しかし方法が間違っている。そんな意思はあるけど立ち止まっている者のところに現れて、なんとかしてやろうと手助けするのが俺の仕事さ。
たすく:そうか、じゃあどうやって練習するか教えてくれるんだ。
継続の神:いや、ギターの練習の具体的な手法はたすく自身が見つけるべきだが、心の持ちようや継続するためのヒントについては助言できる。
例えば、毎日少しずつでも練習することが大事だ。大きな目標は一旦おいといて、小さな目標をコツコツとやることが継続の基本だ。練習と言わず、触るだけでもいいし、ユーチューブのギター動画を観てもいい。重要なのはギターに触れて少しでも前に進んだという実感だ。
しかし、当たり前と思うなよ、これが大変なんだ習慣になるまでは。
たすく:なるほど、憧れのギタリストや上手いギタリストの演奏を見たり聴いたりするとヘコんでやる気がなくなって、練習しない日もあるしな。
継続の神:そうだ。名ギタリストだって素晴らしい演奏をできるまでにはどれだけの積み重ねがあったかは、聴いてる者にはわからないだろう。我々はうまくなって弾いている姿しか観ていない。
今のたすくとのギャップばかりに目がいってしまうは普通だろう。登山の初心者がエベレストの頂きをみてふさぎ込む様なものだ。下手くそ当然。
少しずつでも毎日触れる、ギターにふれることで、ギターとの距離が縮まる。そうしているうちに、楽しいと思える時が来る、そうなったらしめたものだ。
たすく:楽しむか…。確かに、今は楽しいとは言えないな。指は痛いし、思い通りに動かない、イライラするばかりだ。
継続の神:初めは悩むんだな。これでいいのか、才能が無いんじゃないかとか。しかし、小さなことを一つ、ひとつやっていくうちに、結果も自然とついてくるものだよ。
効果のあるのが、記録だ。何かに挑戦する時、やったという記録を残しておく。細かなことを書くのは億劫になる可能性があるので、やった、◯とだけでも良い。当然、その時の気持ちや、やったことを書ければもっと良い。
その記録がやったという証になり、モチベーションの向上につながる。
ギターだけではなく何事にもあてはまるんだけどね。
たすく:記録か。やりっぱなしで何をしたかは覚えてないからな。
継続の神:だろ。継続させる技術というものがあるんだよ。そういうアドバイスをするのが俺の役目。しかし、初めに言ったけど、上手くなりたい、継続したいという気持ちがなくなれば、さよならだ。
たすく:わかった。ギターだけではなく、他にも夢があって、続けなければならないことばかりだから、これからお世話になるかもね。
継続の神:もちろんさ。困った時や迷った時はいつでも呼んでくれ。俺はいつでも君のそばにいるから。
たすく:わかった、心強いよ。さあ、今日も少しでもやろうか。
◯たすくは継続の神に出会い、続ける技術というものがあることを知った。
今まで、続けることをモチベーションだけに頼っていて具体的な手法について考えることはなかった。 続ける工夫、それをもっと知りたいと思ったのであった。
続く。
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