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黎明期のPCゲーム開発記 (6) 〜ゲームプログラマになる!〜

Takashi Makimoto

前回の「第5回」は PC-88 用の「ソーサリアン」という市販のゲームを独自に解析し、その後 16bit マシンへ移行していくというお話でした
第6回である今回は、ゲーム開発会社に就職して最初のプロジェクトが始まる直前までのお話です。

思いがけない電話

新聞配達のアルバイトをしながら、X68000 や PC-8801 で動作するソフトウェアを作りためていた頃、一本の電話がかかってきました。それは、すでに三重県四日市市にあった「マイクロキャビン」という会社に営業職として就職していた友人からでした。内容は以下のようなものだったと記憶しています。

大阪にあるソフトハウスがプログラマを探している
最寄り駅は阪急京都線の上新庄駅 (もちろん住所は聞きました)
作りためたソフトを今すぐそこに送れ!

その友人は私がソフトを作りためていることを知っていたので、どうやらそのソフトハウスに私を紹介・推薦してくれたようなのです。とはいえ、「ゲームを作る」という事が目標だった私には絶好のチャンス!! すぐさま電話をかけアポを取って、面接していただくことになりました。

正直、面接らしい面接はなかったように記憶しています。今まで(まさにこの連載のように)どんな風にプログラミングを勉強してきたのか、どんな書籍を読んできたのか、ごく簡単に聞かれただけでした。同時に、大阪のオフィスは本社ではなく「大阪開発室」と呼ばれる場所だということ。実際の採用には、名古屋にある本社での面接を受けてというが事を告げられました。ただ一方で、大阪開発室としてはぜひ一緒に開発をしたいと言っていただいたことも覚えています。

かくして、名古屋での 「(いわゆる)役員面接」に臨むことになります。

名古屋へ向かう

名古屋の本社へは、大阪開発室の方と一緒に行くことになっていました。大阪開発室の方々は新大阪駅から、私の最寄りの新幹線駅は京都駅だったので、京都駅で合流することになりました。

この先の展開に興奮してたのか、私は京都駅に合流時間よりもかなり早く到着したことを覚えています。京都駅の新幹線ホームはエスカレータで上がったフロアにあり、合流までの時間をエスカレータ下の本屋さんで立ち読みをしながら待つことにしました。

手にとった雑誌は「MSX-FAN (時期的に 1991年1月号だったと)」。ペラペラとめくるうちに、「いーしょーくーはまだかいな!? 〜「ソーサリアン移植計画」〜」なるコーナーがあることを発見。読み進めていくと、どうやら MSX 版のソーサリアンが開発されることが決まったかのような内容。この第5回でご紹介したように、PC-88 版のソーサリアンの解析を完了していた私は、

「それって・・・無理っしょ」
「開発担当するプログラマはかわいそう・・・」

という、なんとも "えらそうな" 感想を持ったことを覚えています (MSX 界隈のの皆様ゴメンナサイ)。とはいえ、これからこういう業界に身を動じることになる(かもしれない)ので、改めて色々と他の記事も読み漁ってました・・・(たしかその本屋には、パソコン関係の雑誌は MSX-FAN しか置いてなかったんですよね)。

そうこうしているうちに時間になり、新大阪から乗ってこられた大阪開発室の方々と合流し、いざ名古屋へ (といっても、京都から名古屋は40分ぐらいなんですけどね)。あらかじめ伝えられていた車両の席に座り無事に合流。席に座ってお互いにホッとしたところで、大阪開発室の部長さんから衝撃の一言を告げられました・・・

入社したら、最初にやってもらう開発は「MSX版 ソーサリアン」やから・・・

!? 一瞬この人は何を言ってるんだ??と自分の耳を疑いました。だって、さっき京都駅の下の本屋さんでその記事を読んだばかりです。しかも「無理っしょ・・・」と思ってしまったプロジェクトです。以下が、その後の会話の抜粋です。

私「さっき、雑誌で開発が決まったことを読みました」
部「ああ載ってるねぇ〜あれうちでやるから」
私「開発のサポートがんばります。ちなみに進捗率はどれくらいですか?開発が進んでるように書いてましたが」
部「ああ、まだ何も始まってないで?」
私「そうなんですね、これから始まるんですね」
部「それと、サポートじゃなくて、君がメインプログラマやから」

名古屋までの新幹線の中は、私が言われたことを理解するための時間に費やされたことは言うまでもありません。

役員面接

こうして、すでに入社後のプロジェクトを聞かされた状態で、名古屋 (と便宜上読んでいますが、実際には当時の西春日井郡西春町、今の北名古屋市です) での役員面接に。担当していただいたのは、社長と専務。お二方とも有名なプログラマで、特に専務は「マイクロキャビン」で開発をされていた方で、私もその方がプログラムされたゲームを何本かプレイしたことがありました。

面接自体は大阪同様、滞りなく進み、最後に専務さんから「1つ聞いていい?」と質問されました。

「漫画雑誌は何を読む?」

?? 当時あまり漫画を読まなかった私は、素直に「あまり読みません」と答えました。「あっそう」という言葉を残して専務さんは応接室から出ていかれました。後に、名古屋の社員に「あれはどういうこと?」と確認したら、「サンデーと答えるのが正解。ジャンプと答えたら機嫌が悪くなる」という「模範解答」を教えてもありました、、、漫画雑誌の世界も色々あるんですね。

こうして、私の会社員としての初めてのプロジェクトである、「MSX版 ソーサリアン」の開発が始まるのでした・・・

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