捨てたり守ったり感じたりするそれについて #第4夜
初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。
疑いなくわたしのことを好いてくださっていることを実感出来て、笑顔でいられて、オンナのいやらしいところも人間の卑しいところもひた隠しに出来て、そんな空間に出会ったのはある初夏のこと。
こっそりとその門を叩いてみることにしたわたしが選んだその街は、3線乗り入れの交通の便の良さもさることながら、昭和レトロな小さな小さな飲み屋街の残るなんともノスタルジックな魅力に溢れていました。
扉を開けた瞬間、「ああ、ここだ」と確かな感覚がありました。
お試しのつもりで伺うと5分もしないうちにお客さまがやってきて、とりあえず、と説明もままならぬまま突然迎えた初日に、
わたしの人生の舞台は決まったのだと振り返るのです。
わたしのおなじみの挨拶も、
この日から変わらずにそこにあるのです。
子どものころから歌が好きで、
両親の影響もあり昭和歌謡が好きで、
ファザコンがゆえに年上も苦ではなく、
20代を費やした男のひとたちの影響で働き盛りのサラリーマンの話題についていけるわたしの、
お酒が好きで、
みんなが楽しんでいる様子を眺めるのが好きで、
空気を読むことにも酔っ払って羽目を外すことにも親しみがあり、
20代を費やした酒場の数々の影響で多少の猥談には食い気味にお応えのできるわたしの、
プライドを捨てる、というオンナのプライドを存分に発揮するカウンター越しの空間は、
その後のわたしを輝かせたり褒めそやしたりすることになるのです。
ところで、言葉にするのが憚られるこの想いをどうにかして口に出すとき、
少しでも相手への尊敬が伝わるように、
持ちうるすべての語彙力を駆使してあなたに伝えようと決意するのです。
愛している、というよりも、
待っている、というほうがしっくりくるわたしのなかの小さな小さなわたしは、
喉から手が出るほど欲しいあなたのすべてを、
なんでもないフリをして、
いつでも手を伸ばせばそこにあることを確かめて、
あとどれだけこの命が続くのかは神様にしか分からないのだろうけど、
少なくともいまは、あなたへのこの愛をプライドと呼ぶことにするのでしょう。
つづく