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新宿の女 #第2夜

初めましてのみなさまも、おなじみのあなたもこんにちは、MAKIです。

わたしが愛する自分に向き合うなかで、やはり新宿は避けては通れない街。
13歳で椎名林檎女史に憧れを抱いて以来干支がふた周りしようとしていますが、新宿系という強烈なキャッチコピーに魅せられたのを機に、いまでも新宿はどこか身近で、でも憧れの街という特別な想いがあります。

酸いも甘いも、
殿方相手の想い出だけでなくたくさんの歴史がそこにありますが、わたしが拗らせ30代を突き進む根幹にある出来事もまた新宿なのです。

これから綴るエピソードには実際の店名が出てきますが、決してお店自体を否定しているわけではございませんので悪しからず。
そしてものの見事に自叙伝要素が色濃くなります。私生活を晒していく文体に変わりますことご容赦くださいますよう。

22歳の誕生日。
当時ひとつ上の大学時代の先輩と付き合っていたわたしは、台風一過でようやく動き出した電車に乗り、彼が計画してくれていたデートコースにわくわくし胸を躍らせていました。
(この彼とのお付き合いのはじまりは実にエモーショナルなのですが、それはまた別のお話)
わたしが大学2年生から続けていた銀座のダイニングでのアルバイト経験から、デートのハードルがめちゃくちゃ上がっていたのをあとから後悔することになるのです。誕生日にまともな彼氏がいる状態が実に3年ぶりなこと、彼にとってわたしはいろいろと初めてのオンナで、すごく大切に愛してもらっていたことなどから、わたしもつい、期待してしまっていたのだと振り返ります。
(それはまた別のお話、にしようか迷ったけれど、自身のためにいま語ることにする)

わたしのバイト先は合コンや女子会プランなら飲み放題付き4,980円とかで入れるようなお店でしたが、記念日ディナーやクリスマスコースは10,000円〜の客単価設定でした。いま思えば、社会人になりたての若者、ましてや大学生にはかなり気合いの入った金額だと冷静になれば分かるのですが、歪んだプロ客根性の片鱗は遡ることこの頃に生まれたのだと気付くのでした。

話は戻って誕生日。
東京タワーに行って、登って、見渡して、誕生日のひとは無料で入れるだかなにかで、おやおやと思いながら大江戸線で新宿に移動し、どこのレストランに連れて行ってくれるのかなぁと期待に胸躍らせながら着いたのは京町恋しぐれ 新宿本館。その当時流行り始めていた京風な店構えのコンセプト居酒屋ってやつですね。個室に通されて、途中、京風とはほど遠い花火やバニラアイスやが添えてあるバースデープレートが出てきました。ちなみに、プレゼントは一緒にショッピングしながらわたしがかわいいと言ったzuccaの腕時計。目の前で金額も分かってしまうそれでした。

いま思えば、
ちゃんと予約してお祝いしてくれたし、江國香織好きなわたしに東京タワーも悪くはないし、わたしが欲しいものを買ってくださったし、わたしが素直な女の子であればしあわせな一日だったのだろうけれど、なんだか物悲しい気持ちになって、翌朝になってもそのもやもやは晴れず、その1週間後、例の20代を費やした元彼とのきっかけになる事件があり、この元彼とはお別れすることになるのです。

高望み。
後になってこのひとことで片付けられる出来事だし、やさしくって不器用な彼を手放すことをしなければ、きっとわたしの人生も誰かが決めた平凡でしあわせなそれになっていたのだろうと思うのですが、それを選べなかったのがいまのわたしを形成するきっかけなのです。

ちなみに、
いまでも靴を脱ぐ系のお店にはトラウマがあって、とりわけデートでは、出来れば座敷や個室じゃなくってカウンター席に通されたい派なのです。
プレゼントはサプライズがいいし、わたしのことを想いながら考えて用意してくださるものならなんでも嬉しいのです。例え旅先のオルゴール館で買ったラブソングが流れてくるオルゴールだったとしても。


それから季節はめぐり、
幾人かの殿方との想い出を新宿の街で刻んでいます。

あれ以来、京町恋しぐれには訪れていないし、少し前の光る絵本展まで10年余り東京タワーにも登っていませんでした。

想い出を上書きするのが下手で、
あなたとの時間も、きっとほんとうの意味で心揺さぶられる出来事が訪れない限りは色褪せないのでしょう。

紀伊国屋書店の文庫コーナーは、いまでもあなたのために空けてあるのです。


つづく

#自分を愛するということ
#新宿の女

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