図1

よろづ屋事務局の高橋さんからお話を伺って感じた、地域通貨「萬」の2つの価値

11月8日、コミュニティ作りに寄与している地域通貨として、
代表的に取り上げられることの多い、コミュニティ通貨「萬」

神奈川県の北西部にある、藤野に伺って
よろづ屋事務局の高橋さんからお話をお伺いしてきました。

顔の見える信頼関係を育むのが目的

そもそも、
私たちが普段使っている法定通貨は、
便利で信用できる決済手段だ。

しかし、国を初めとした大きな存在に依拠しているし、
価値尺度も市場メカニズムによって競争的に決められてしまうので、
顔が見えづらく、助け合いには繋がりにくい。

一方、地域通貨は、コミュニティ通貨ともいわれるように、
「顔の見える規模感」「手触り感を持って助け合える」
といった、顔の見える信頼関係を育むことに目的がある。

法定通貨が顔の見えない競争のマネーだとしたら、
地域通貨は顔の見える助け合いのマネーとでも言えるだろうか。

利便・快適を追及して
繋がりが失われてしまっている今の時代には、
法定通貨の補完機能として、非常に必要とされているように感じる。

そんな、コミュニティ内での信頼を育む「萬」について
お話をお伺いする中で、住まう人目線での魅力が2つあるように感じた。

ちなみに仕組みはどのようなものか、
Greenz.jpさんの記事に分かりやすく紹介されていたので、紹介。

仕組みはとてもシンプル。紙幣を発行するのではなく「通帳型」を採用し、「萬(よろづ)」という単位(1萬=1円が目安)でやり取りをします。参加者はメーリングリストに登録し、メールで「誰か◯◯してくれませんか?」と投稿して、できる人が返事をする。たとえば「いらなくなった冷蔵庫を1000萬で譲ってください」といった具合に。やりとりが行われるときは実際に会い、専用の通帳に金額とサインを記入したら取引成立。簡単なので日常の小さな困りごとにも頻繁に利用されているようです。

助け合いのハードルが下がる、気兼ねない関係

図1

まず、萬について感じた住まい手としての魅力をご紹介したい。
日常の困りごとの中で「これどうしよう・・」というものがないだろうか?

家族にお願いするのは、状況的に難しい(地理的、個々の特性的な背景)
かといって、プロや業者にお願いするほどでもないといった

痒い所を、困りごととして出すと、
それを「心地よく助けられるよ!」という人とがマッチングされる

そして、「ありがとう!助かった!」といった感謝の経験となり、

いずれ助けられた関係は、助け合いの関係へと発展し、
家族を超えて、地域に、その関係が広がっていく。

それが地域通貨の一つだと感じた。
私自身も、ピンポイントで育児ヘルプ欲しい等の困りごとは結構ある。

一方で、料理は特技なので、もし「ピンポイントでご飯作ってほしい」そういった困りごとがあれば、あの人の力になりたいと思って、助け合いが成立することがありそうだと、イメージが広がる。

自分の得意な事で、貢献できて、信頼関係が育まれ、
それがいざ困りごとがあった時に、自分も助けてもらえるかもしれないという、「気兼ねない助け合い関係」が構築できる事に、

住まい手として、非常に魅力を感じた。

コミュニティのオンボーディング(入口)としての最初のステップ

コミュニティ作りをする立場として、
感じるであろう、もう1つの魅力は、その地域に入ってきた新しい人が、
地域に馴染んでいくオンボーディングの役割を果たしているという事だ。

高橋さんがおっしゃっていたのは、
十分な信頼関係が構築されれば、萬を介さない取引も存在している
といったようにおっしゃていた。

むしろ、地域通貨という仕組みがあることによって、
そのコミュニティが大切にしている価値観を体験的に理解してもらう事ができる。

ただ、コミュニティが大切にしている価値観を伝えるのではなく、
実際に新しい人自身が行動して、体験できるという点に、ある意味イニシエーションのような価値があると感じた。

まとめると、
・住まい手としては「気兼ねない助け合いの関係」を育めること
・コミュニティの作り手としては「コミュニティの価値観を体験する儀式」
として、非常に魅力があると感じた。

最近、地域の規模感ではなくても、
自治コミュニティを作りたいという人が増えてきていると思うので、
自治コミュニティ単位でも導入がより一層進んでいそうで、

そういったお話も伺ってみたいと思いました。

最後に補足として、運用面で非常に参考になるなと思ったのが、
収支がマイナスになっている時、その事についての考え方。

収支マイナスの意味について
経済活動では、悪い意味になりがちですが、(例えば借金など)

コミュニティ活動では、良い事として捉えるようにしている(誰かの活躍の機会を作ってる、誰かの知恵や力を引き出している)

私の利益ではなく、私たちの利益を追求する
コミュニティ活動らしいルールだなと思いました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?