「オレ」
今日はオレの気分だな
ぼくはオレに言った
「オレって語りなよ」
すると オレは地下鉄の座席に浅く腰掛け
脚を伸ばす 短い脚を伸ばす
他人のことは気にしない
オレはそこがたばこを吸える場所なら
きっと 紙巻きたばこに100円ライターで火をつける
もちろん 禁煙と決まった電車内で
たばこを吸うほどのバカではない
オフィス街のビルの谷間
小休止できるようなベンチに座り
昔ならたばこに火をつけて
プカプカできたな
と
オレは思いながら
狭苦しい喫煙所に向かい 行列の後ろにつく
そして何分か順番が来るのを待つ
おとなしく オレは待つ
そうまでしても
オレは たばこが吸いたい
長年のニコチン中毒は治らない
そう思いながら 古いビルの中で
床にそのままポトポトと
吸殻を落としても平気だった時代を思い出す
古いビルとて 換気は悪く
たばこ飲み以外は
「やめてくれ」っていう顔をしてた
でも
オレたちは 傍若無人ぶりを発揮して
たばこをいつまでも吸い続け
はさんだ指が火傷しそうになるまで
吸い続けたもんだ
オレたちはそんな輩だったな
そんな時代はとっくの昔に終わり
今や たばこの煙も火も見かけず
どこもかしこも
ぼく―だらけになっちまった
と
いま オレは思う
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