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「アベちゃん」

オレ コロナなったやろ

 ああ そうだったね―
 ぼくは 電話で語る友に なま返事をする

入院してたとき ヒマやったから
アベちゃん と アソウにメールしたんや

 ほぉー

すぐ 返事寄こしたよ アベちゃん

 うん…

5月の下旬やったかな あれが 最後のやり取りになったな うん

 ほぉほぉ…

政治部記者だった男である もう一線は退いた
在京マスコミの 官邸担当記者といっても
何千人もいるわけでない
首相とその周辺に接触するのは せいぜい100人 200人
「アベちゃんから連絡もらった――」
と無邪気に自慢する記者や元記者が それなりに存在する

最高権力者の座を離れたとはいえ
その地位にあった人物と
電話やメールでやり取りできるのだ オレは――
なんていうのは 自慢だろうが
マスコミ界では珍しい話ではない
政治家にとっては
記者も利用するための存在だ
彼らの気持ちをくすぐるなら
そんな電話やメールくらい お安いものだ

それに
もう あの男はいない

友よ
とおい記憶は 大事にしとけ(笑)


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