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「詩人宣言XXⅤ」

誰か ぼくに言ってくれないか
早く言ってくれないか もう言ってくれないか
ぼくは 誰かの言葉を待っている

「あなたの書いているものは詩ではない」

見たもの 感じたこと
それを そのまま ぼくはスケッチするように書き綴ってきた
過去の記憶をたぐり寄せ
記憶と目の前にあるもの いま考え 思うこと
それらを混ぜ合わせ あふれてくる言葉を文字として 書き記している
――だが
そこには
リズムがなく
書かれた文字に 色も香りも
そこから思い起こす情景からも
風が漂う気配がない

決まった型にはめないものだから
リズムのない言葉の連なりが 読む側に地に足がつかない感じになっていないか
読む人は違和感を覚えているのでないか

ただ
ぼくは 詩は 心の中にとどまる記憶を言葉として述べることから始まる
そう思っている
それはそれでよいのではないか

とはいえ 気宇壮大な 宇宙的な世界をうたい上げ
何事かについて――生きていることとか 自然の美しさとか その大きさ あるいは恋人の絶対的な存在だとか――
ぼくの詩に そんなことごとを称揚するものもない

いやいや いやいや
ぼくが書く 書こうとしているのは
卑近な世界 こまごまとした世界を
これまた こまごまとした言辞を弄して
他人へのお節介にしてやれば――
それで よいのだ

自分を肯定し 認めていく作業の延長にあるものが
この詩作 なのだ

そう思って 胸を張る

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