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GOODMAN

GOODMAN―
そう記された警備会社のワッペンを胸に張り付け
ドカジャン着た年のころは60前後 ゴマ塩頭の男が 電車の優先席に身を沈めている

おお GOODMAN
よい男なんだな あんたは
すっかり疲れ切り 泥にまみれたスニーカー
節くれだった指が きょう仕事をしてきたのを物語る 手指の先に泥か油脂あぶらか 黒くにじむ

労働の疲れに 首元まで浸かり
目を閉じる GOODMAN
体と心とが 疲弊という量りようのないものとなり
あんたの体はそれを包み込むズダ袋だ
GOODMAN
あんたはそのまま 深くふかく
地下鉄東西線の優先席に身を沈め動かない
きょうの現場はどうだった?
あすも同じ現場で働き
またGOODMANと記された
ズダ袋に疲れを詰め込むのか
GOODMANよ

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