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「隅田川雑感」

黒々とクログロとした川面
波がもりもり モリモリ 膨らむ
流れはしもからかみへと 逆らう
満潮だ 大潮だ
海につながる川に
容赦なく天空からの力がはたらく
川べりにいるのに 水音はしない
両岸をコンクリートで固められ
川は音を立てることはない
いつものことだ

橋の上で鳥が何羽も何羽も飛び交う
ウミネコだ 大声をあげる 産卵期らしい
うるさい! 鳴き止め!

朝6時過ぎ ギラギラとした陽が肌を刺す
下流に向かう ひどく暑い
首都高高架下の日影をゆけばよいのに
陽ざしの強い右岸をゆく なんと愚かな
このままでは行き倒れる
還暦過ぎたおっさんを誰が介抱してくれる――

気が付けば 潮は引きはじめ
あたりまえのように 水は下流に向かう
いつもにも増して水位が高い
ごみと油が浮かぶ水面に
ウミネコのか 白い羽毛
それが陽ざしに溶ける
あの橋の下には水水母ミズクラゲが 打ちあがっているだろう

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