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「もうアホウじゃねぇ」

現代詩 午前零時の再登板 №1


土埃舞う 痩せた土地で
飢えた少年どもが 殴り合う

果てしない飢えのゆき着く先は
殺し合って 人肉をかじり合う

それでも 葬儀の準備は必要だ
2軒の葬儀屋が
遺体を納めた棺を奪い合う

人肉食った少年は 百万馬力
ピョンピョン飛び跳ね
ダンクシュートをキメル
(NBAにドラフトされるって)

周りの集落は
人家 ビル 学校――
どれもこれも崩れちまって

瓦礫の中に埋もれた大衆浴場
その前にテーブルを出し
飯を食い 酒を飲む

破壊され尽くした街は
誰かが 再建するんだろ
スクラップ&ビルド
(カネを回すのは大事)
行って来いで
結果オーライ

NBAプレーヤーになるはずの
少年は ストリートバスケだ
(ドラフトなんてあり得なかった)

ダンクどころか
放ったシュートは
ゴールに嫌われ
リングに当たってラインの外へ

おいしい夢は
砂まみれ ほこりまみれ
(そこにボールが転がる)

詩人はペンを握ったまま
棺に入れられ 燃やされる
(みなさん いろんな芸風をお持ちだ)

そんなこと
 最初から知っている
  最初からだ

そろそろ葬式の時間だ

おんぼろ引揚船のデッキに
人が集まった

弔鐘代わりに

ボワッ
(汽笛がなった)

こっちは聞く準備をしていない
びっくりしちゃったよ

死んだのは
NBA選手になり損ねた少年か
ペンを離さなかった詩人か

あいつも こいつも
(旅の人)
僕には関係ない

白い画用紙に陽があたり
スケッチする少女の顔だけが
白い

僕は腹が張って来た
きばっても 屁は出ない
(どこで ぶっ放せばいいの)

言葉に意思がないことに驚いて
文字だけを見ていたのだが
やはり 意思のない言葉は文字ですらなく
紙に染みを残すだけ

もう一杯 ワインをいただけますか
急に老人にねだられた

ボワッ
飲み代がわりに
引揚船の汽笛がまた鳴る

一連ごとに
情景描写と心象描写を繰り返す
それだけの詩人が
自分の番だ

黒板を叩いて 叫んだ
「これが詩だっ!」と

聞き捨てならん と
ジョン・レノンは

I won’t be your fool no more 
(もうアホウじゃ ねぇよ)

ってシャウトしちゃう

※2022年7月3日 「詩人のいる景色」を改題 加筆修正
 


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