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「パブリックコメント普及協会」KON-KON! おじゃまします(2)

まちスポ大津スタッフが今聞きたい人にインタビューをする“とびだす!KON-KONおじゃまします”!2022年度から開始した活動の、取材先第2号を掲載します。
京都市は、他の自治体と比較してパブリックコメント(以下「パブコメ」という。)が数多く出される自治体です。京都市を中心に、まちづくりの視点からパブコメ普及に取り組んでおられるパブリックコメント普及協会代表の吉岡久恵さん、事務局長の越村美保子さんに、活動内容などをお聞きしました。(以下、敬称略)
※2022年7月7日(木)にお話をお伺いしました。
※TOP画像は「京都市公式パブコメキャラクター「パブコメくん」」

「パブリックコメント普及協会」 吉岡さん(左)と越村さん(右)

協会を立ち上げたきっかけ

まちスポ:まず、協会を立ち上げたきっかけから教えてください。
吉岡:2009年に京都市が第2期基本計画を策定するときに、当時、アート系のNPOをしていた私を含めて審議会の若手部門「未来の担い手・若者会議U35」に参加の声がかかりました。市の若手職員と一緒に活動していたのですが、パブコメをたくさん集めてほしいと言われて、「攻めと対話のパブコメ」をやりました。地下鉄の駅、ライブ会場、商店街、高校などで、積極的に意見を出してもらえうように声がけし、1000件近い意見が出ました。
これがきっかけとなって、2012年に有志のメンバー5人でパブリックコメント普及協会を立ち上げました。

設立後の活動について

まちスポ:立ち上げ後、どのような活動をされてきましたか。
吉岡:2012年からは若手研究者のグループPESTIが「国民のニーズや意見を政策につなげること」を目的に一緒にパブコメを行いました。そのときに開発した手法が「対話型パブコメ」(後述)です。取り上げた内容は、「健康づくり・福祉の観点からみた2020年頃の米原市の将来像〜健康まいばら21」「夢ビジョン2020〜東京オリンピック・パラリンピック2020を契機とした将来像」などです。

PESTIと開発した対話型パブコメ (写真提供:PESTIホームページより https://interactive.pesti.jp/space/public_comment/31/)

現在の活動は?

まちスポ:現在の中心となる活動を教えてください。
越村:メンバーがみんな別に仕事を持っていることもあって、あまり無理をしない形での活動となっています。
今はコロナの影響で十分には行えてませんが、活動の中心は、対話型パブコメの実施です。対話型パブコメは、イベントなどに出向いて行って、計画や条例案を直接、市民の皆さんに説明し、その場で意見を記入いただく方法です。1回3~4時間の活動で、50件くらいの意見はもらえます。
立ち上げ時からすべてボランティアとしての活動でしたが、2018年12月に京都市と「パブリックコメント普及に関する協定」を締結して、市から依頼があった場合には報酬が出るようになりました。

「対話型パブコメ」って?

まちスポ:対話型パブコメの特徴を教えてください。
吉岡:そもそも市が出す条例案や計画案は難しくてなかなか市民には取っ付きにくいと思います。
越村:対話型パブコメの場合は、計画とか難しい話を先に出すのではなく、市民の生活に身近な話題から積極的に話しかけてみて、計画に対しての意見が出てくるようなことがよくあります。自分で書くのが苦手な方は、代筆して内容を確認してもらうという形で取り組んでいます。
京都市の場合、「多くのパブコメが出ないとまずい」という空気があるので、集まっていないと、協会に対話型パブコメをやってほしいというリクエストがあることが多いです。
吉岡:パブコメ自体は、自治体職員にとっては嫌だと思われている面が多いのですが、やっていると、職員もだんだん現場の様子が分かってきて、楽しくなってくるという場面に多く出会います。そういう職員は取り組み方も変わってきます。
まちスポ:対話型パブコメ以外の活動を教えてください。
越村:自治体職員や市民向けの講座をやっています。また、4月には、湖南市の議員からの依頼で市民発の対話型パブコメをやりました。

湖南市 WAKU2ミーティングにて  (写真提供:中土翔太氏(湖南市議会議員))

パブコメの限界は?

まちスポ:パブコメは優れた市民参加手法だと思うのですが、パブコメの限界についても教えてください。
吉岡:パブコメは市民参加のツールの一つであって、限界もあります。ただ、制度としてはこれで確立しているので、必ず意見を聞いてもらえて、その結果が公表されます。“1回半のコミュニケーションの仕組み”だとも言われています。
現行制度では、最終案に対する意見なので、市民の意見をどれだけ計画等に反映できるかと言われれば、難しい面が多いのが現実です。今の段階では反映できないが、次回の見直し時に活かせる場合もあるので、そこは前向きに捉えてもよいと思います。
尼崎市は、市民意見聴取プロセスの取り組みとして、パブコメを含んだパッケージで取り組んでいますし、神戸市の王子公園再整備基本方針では、パブコメの結果を受けて計画の見直しをされているなど、パブコメをめぐる新たな動きも出ています。

まちづくり市場でのパブコメ (写真提供:パブリックコメント普及協会)

活動についての思い

まちスポ:最後に、お二人のパプコメに対する思いをお聞かせください。
吉岡:まちづくりの視点から、大学院でパブコメを6年研究しています。実際の活動が研究に活かされていることもあって充実した生活を送れています。
パブコメは私にとってはフロンティアです。まだまだやれることは多くあると思いますし、パブコメを通じて市民生活に関わる条例や計画を見ていくことで、市民の意識が高まっていくと思います。
越村:10年以上やっていますが、行政は予算や議会に縛られている中で市民の意見を聞くのは大変だと思います。地域課題がだんだん複雑化していますから、市民が監視するだけでなく、行政と伴走することで、解決に向かうと思います。生活に密着した計画を見極めて市民もパブコメを活用することが必要だと思います。
市がよくなってほしいと誰も思っているし、パブコメを通じて感じてほしいと思っています。

まちスポ:パブコメはあくまで市民参加の一手法ですが、市民参加を進めるためには、もっと自治体で真剣に取り組む必要がありそうですね。今日はお忙しい中、貴重な話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
※2022年7月7日(木)にお話をお伺いしました。

京都市公式パブコメキャラクター「パブコメくん」
(写真提供:パブリックコメント普及協会)

👉Keyword!パブリックコメント(パブコメ)とは?

国や地方自治体が法令や計画の策定、改定にあたって、その案を広く示して、市民から意見等を募集する仕組みです。特に、地方自治体が行うパブリックコメントは、市民参加の一手法として位置付けられています。

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