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【運営メンバー紹介】よめじるし代表 藤澤佳織(よめ)|肩書を越えたつながりを広げたい

町プロタウン運営メンバー(クルーと呼びます)を紹介するシリーズです。第5弾は、町工場の代表取締役であり新規事業を手掛ける「よめちゃん」こと藤澤佳織さん。

2024年4月、「町工場プロダクツ」から発展したオンラインコミュニティ「町プロタウン」が始動しました。ここでは町工場に限らず、さまざまな業種の方やファンが集まり、ものづくりの魅力を共有し、新たな可能性を探っています。

「共創とイノベーションを創出し、社会に還元していきたい」そんな思いを持ちながら運営に携わるメンバーを紹介します。今回は、よめちゃんにご自身の経験をもとに、お話を伺いました。

プロフィール

よめじるし代表 藤澤佳織(よめ)
岡山県生まれ、京都造形芸術大学卒業後、居酒屋にて修行。滋賀県の町工場・藤沢製本に嫁ぎ、2020年同社代表取締役就任、2023年事業撤退を経験。2024年「まるでその嫁の如く」伴走するBPO事業よめじるしを開業し、申請業務・商品開発・デザイン・広報・労務まで、支援先の「今このサポートが欲しい」を提供する嫁業が楽しい毎日。
▶2児の母、ニックネームは「よめちゃん」
▶2022年度J300アワード特別賞受賞「中小企業の"嫁"が社長になったらイノベーションが起きたで賞」
▶目指す未来:将来の夢トップ10に「中小企業の嫁」がランクインする未来
日本の99%を占める中小企業の嫁が元気になったら日本が元気になるんじゃないかという単純な仮説のもと、新しい女性のキャリアとして「中小企業の嫁」という選択肢を提唱している。

よめじるしのInstagramはこちらからどうぞ▼
https://www.instagram.com/yomejirushi.yome


SNSがつないだ町工場プロダクツとの出会い

——町工場プロダクツとよめちゃんの出会いを教えてください。

きっかけはX(旧Twitter)です。「嫁」として藤沢製本に入った2020年頃にワチャワチャと発信を始めて、おやっさんや製造業界隈のみなさんとつながりました。

それで、おやっさんが「ギフトショーに一緒に出る人募集中」って発信していて。当時まだ、おやっさんと全然絡んでなかったんですよ。でも、「自社製品がほしい」ってずっと考えていたので、「これだ!」と思って連絡しました。

藤沢製本の仕事は請負加工だったので、出版社さんからの依頼がなくなったら工場が回せなくなるっていう危機感があったんです。

そのときは藤沢製本の代表でもなく、自社製品もなく、ギフトショーについては名前を知っている程度でした。

「自社製品ないですけど、出てもいいですか?」って聞いたら、おやっさんがいつもの感じで「いいよ!何でもいいから来なよ」って言ってくれたんです。

◆町プロタウンを主宰する「おやっさん」こと栗原稔さんの記事はこちらをご覧ください。

ギフトショー4回の挑戦、自社製品開発への道のり

——自社製品がない状態で手をあげて、ギフトショーに出たのですね。

はい、とりあえず行きました(笑)

「YOME」っていうパーカーを自作して、製本のサンプルを持って、初出展しました。町工場プロダクツの中の人、デザイナーの眞鍋玲さんや、今、町プロタウンのコミュニティでも交流のあるメンバーとは、そのとき初めて会ったんです。

みなさんが自社製品を出展していたので、次は自社製品を持って行こうって決めました。自社ブランドの「テキトーフォーミー」は2回目の出展に合わせて、2021年10月13日にデビューしたんですよ。

——自社製品の開発はスムーズにいきましたか?

最初は社内でギフトショーのためのチームをつくって、自社の技術でどんなサンプルを準備するか、本なら表紙は何色がいいかって、話し合いを重ねていたんです。

でも、あんまりスムーズにはいかなくて。請け負いでやる仕事と、自分たちでゼロから企画を考える仕事はまったく違いました。このとき、製造とクリエイティブな仕事は、切り離したほうがいいこともあるって気づいたんです。

その経験から、自社ブランド「テキトーフォーミー」は私1人で立ち上げました。会社には技術的な相談をして、アイデアは自分で納得がいくものを出しました。

——その後もギフトショーに出展したのですか? 

ギフトショーは4回連続で出展しました。毎回商品の出し方を変えて、実験場のようにしていました。

最初は製本サンプルを並べて、「製本とはなんぞや」を展示して。2回目は「テキトーフォーミー」のデビュー。ノートを出展しました。

3回目は完全にBtoBに振り切って、商品企画をサポートする事業を出展しました。「テキトーフォーミー」ができたから、他の中小企業もサポートできるんじゃないかと思って。製本の技術や新しく導入したレーザー加工機も生かして、実際に仕事ももらえました。

4回目は、また「テキトーフォーミー」で出展しました。2回目で出したノートに加えて、新しくできたキューブも持っていきました。

——よめちゃんにとってギフトショーは、一緒に成長してきた場なんですね。

そうなんですよね。地方にいると情報があまり入ってこなくて、市場のトレンドや世間の状況がわかりにくいんです。でも、ギフトショーに行くとすごく世界が広がって、市場の空気感を感じられるっていうか。

来場者さんもいろいろな人がいるじゃないですか。普段お会いできないような人と話す機会もあって、すごく刺激になりました。

滋賀県で会社を経営していると、関東の人と直接会うのはなかなか難しくて。東京で開催されるギフトショーは貴重な出会いの場でもあったかなと思います。SNSのフォロワーさんやユーザーさんが遊びに来てくれることもありましたね。

——ギフトショーは「商談会」というイメージがありましたが、情報や人が集まる場と捉えると、目的が広がりますね。

出展の仕方も、それぞれでいいんです。町工場プロダクツでは、おやっさんたちに相談もできますし。最近はミニブースの「おやっさん枠」で出展っていう企画もあります。

——町プロタウンの運営協力をしている私たちSessionCrewも「おやっさん枠」にPodcast「働き方ラジオ」として出展します。

「おやっさん枠」は町プロタウン内で先行案内がありましたね。「会社案内だけでも出していいよ」っていうスペースなので、出すことが大切です。出すってことは、出展者として行けるってことなので。

一般来場者で行くと「お客さん」だけど、出展者は自社をアピールできるのがすごくいいです。小さい枠でも町工場プロダクツのブースに出展者として立つだけで、情報や人との関わりが全然違うと思います。出展者として立つっていうことに、価値があるんです。

製本業からの撤退、新事業「よめじるし」の展開

——現在のよめちゃんの活動について教えてください。

嫁ぎ先である藤沢製本は本業である製本業から撤退しましたが、それは試行錯誤して、やり切ったからこそできたことです。

密かに撤退したわけではなくて、世の中に製本屋であることをきちんと伝えて、存在意義も問いました。ギフトショーに出続けたことはその1つですね。自分の中の実績というか、結果につながったと思います。

製本業から撤退した経緯はこちらのnoteに詳しくまとめています。

——製本業を撤退して、今新たな挑戦を始めたと聞きました。

はい、製本業は撤退しましたが、「嫁」であることのアイデンティティは変わりません。以前から自分が「嫁」であることに、おもしろみを感じていて。

今まで藤沢製本に100%注いでいた「嫁」パワーを、他にも分散できるんじゃないかと思って、「よめじるし」という屋号で事業を始めました。

——「よめじるし」はどんな事業ですか?

「よめじるし」とは、まるで嫁のようなBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業です。嫁に頼むように、ビジネスプロセスをアウトソーシングしてください、っていうような。

例えば、自社製品の企画やデザインをしてほしいという中小企業(旦那)がいれば、それをお手伝いします。広報が弱いと感じていれば、メディアに発信したり記者につなげたり。営業代行や銀行交渉もします。

最近は補助金の申請も多いですね。中小企業がリソース不足でできないことをサポートします。まるで嫁のようにお助けしますよ!

——「嫁」のアウトソース、いいですね!「嫁」が増える可能性もありそうですよね。

世の中のいろいろな「嫁」が副業を始めるかもしれません。「嫁」リソースを増やすのはおもしろそうですね。業務委託先に「嫁」がいるという新しい概念で。

——ユニークな概念ですね!「よめじるし」はいつから考えていたのですか? 

藤沢製本の経営に集中していて、しばらく忘れていたんですが、以前からやりたかったことなんです。2020年に作ったXのアカウントも「よめじるし( @yomejirushi )」です。

もともとは、町工場の「嫁」のコミュニティを作りたくて。新米嫁ちゃんがベテラン嫁ちゃんから教えてもらう仕組みがあるといいなと思っていました。「嫁」育成みたいな。

——実際に町工場の中で頑張って「嫁」の仕事をしているけど、まわりから評価される機会は少なそう。コミュニティにするのはいいですね。

すごい経営者の横には、すごい「嫁」がいるんです。今まで「内助の功」でやってきた人たちのすごさを、世の中に知ってもらいたいです。

町工場だと経理と労務と総務、全部「嫁」がやることもありますし、「嫁業務」って他にもたくさんあって。

町プロタウンの中でも、「嫁」コミュニティみたいなものを作りたいですね。立ち位置はいろいろでも、「嫁」としての生き方をそれぞれの「嫁ちゃん」がもっているので、嫁同士でそこの共有ができるだけでもいいと思うんです。

町プロタウンでは人と人の交流に期待

——最後に、「町プロタウン」の未来に向けて期待していることがあれば教えてください。

今までの町工場プロダクツと圧倒的に違うのは、個人向けのFans会員という枠があることです。

これまでも、SNSなどを通じてそれぞれの町工場にファンは存在していたけど、交流する機会は少なくて。町工場の人ってシャイな人も多くて、誰とでもすぐに仲良くなれますみたいな人ばかりじゃないんです(笑)

——わかります。それが町工場の人たちの魅力でもありますよね。

そうなんです。だからこそ、町工場の人とファンの方がつながれる場って貴重だと思って。いつもはクールだったり、職人気質で寡黙な人が心を開いて、お互い打ち解けるって、うれしいじゃないですか。Fans会員の方にはそういう特別感も味わってもらえると思います。

BtoBを中心にやってきた町工場の場合、一般のお客様への対応に慣れていないところがあります。ギフトショーや渋谷ロフトのPOP UPに出展するとき、どうやって自社製品の魅力を伝えていいかわからないとかもあるんですよね。

「町プロタウン」という同じコミュニティにファンの方がいて自然と交流するうちに、町工場側としては個人の方と接するハードルが下がっていくじゃないかなと思います。自社製品の説明やSNSの発信などを町プロタウン内で一度やってみるのもいいですよね。

——自社商品を作ってBtoCに挑戦するのであれば、身近な一般消費者と向き合うきっかけにもなりますね。

町プロタウンの中では、会員同士で名刺がいらないお付き合いができるといいなと思っています。近所の人と名刺交換しないのと同じように、すでにお互いを認識しているというか。

横のつながりができるので、町工場側は手をつなぎやすくなるし、ファンのみなさんも周りでスクラムを組んでいるようなイメージです。ファン同士の交流の場にもなって、みなさんが町工場全体のファンになってもらえるといいなと思います。

肩書を越えて、人と人とのつながりを深めてほしいですね。

編集:坂本リサ
聞き手:田中健士郎
執筆:藤本ゆう子
校正:森真弓
写真提供:藤澤佳織


最後までお読みいただきありがとうございました!

2021年より活動を始めた「町工場プロダクツ」がさらに発展し、新しいオンラインコミュニティ「町プロタウン」が2024年4月にスタートしました。

町工場以外のどんな立場の方も関われるしくみができました。町工場のみならず、さまざまな業界、町工場が作るモノが好きで応援したいという個人ファンの方もご参加いただけます。

Biz.会員として、Fans会員として参加してみませんか?

申込みなど詳細は公式サイトをご覧ください!
コンタクトフォームもご用意しています。
質問・お問い合せもお気軽に。

お知らせ.1
ビジネスガイド社主催ギフトショー2024秋 LIFE × DESIGN 16th
町工場プロダクツ Supported by MAKERS LINK
9回目の連続出展となります。
2024年9月4日(水)〜6日(金)10:00-18:00 最終日は17:00まで
東京ビッグサイト西2ホールT24-15
※事前登録は8月30日時点で終了。当日会場にて来場受付してご入場ください。

お知らせ.2
ロフトとソトコトの共同企画「ロフコト雑貨店」第5弾!
町工場プロダクツ期間限定ショップ
渋谷ロフト4Fスペースデザイン
9月3日(火)10月14日(月祝)11:00-21:00