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セラピー犬に移動水族館、一日ラーメン屋開店まで。変わった院内イベントに込められた、地域連携室スタッフの「病院での人生を楽しんでほしい」という想い

病院の求人などでよく見かける「地域連携室」のスタッフ募集。一体どんな業務を行うのだろうと、疑問に思われている方もいるかもしれません。

地域連携室は、転院や受け入れがスムーズにできるよう周辺病院と連携したり(院外連携)、患者さんやご家族の希望をヒアリングして院内スタッフと連携したりする(院内連携)部署。

患者さんが病院でよりよい生活を送るために各所をつなぐハブとも言えるのが、地域連携室です。

まちだ丘の上病院(通称:まちおか)の地域連携室の特色は「院内デイ」という取り組みにあります。これは、患者さんの「やりたいこと」を見つけ出し、それを実現するサポートをするものです。

まちおかでの暮らしをより豊かで充実したものにしてもらいたいという想いから、患者さんがラーメン屋の一日店長になるイベントや、セラピー犬や移動水族館を病院に呼ぶイベントなどを開催してきました。実はこれ、療養病院としてはとても珍しい取り組みなんですよね。

そこで、今回はまちおかの地域連携室で働く社会福祉士の篠田さんと看護師の石井さんのお二人に、院内デイがはじまるまでの経緯や、そこに込められた思いなどを伺いました(聞き手は人事課長 加納)。

まちだ丘の上病院(まちおか)とは?

東京都町田駅から車で約20分、自然にかこまれた小高い丘の上にある病院。通称“まちおか”。「地域を支える」をミッションに掲げ、療養型病院として入院、外来診療(内科・整形外科・リハビリテーション)を提供。

2020年秋には、地域の健康とつながりをテーマにしたカフェと、訪問看護ステーションが併設するコミュニティスペース「ヨリドコ小野路宿」のオープン予定。

まちおかでは、一緒に働くスタッフを募集しています。詳しくはこのnoteの末尾をご覧ください。

患者さんの「やりたい」を叶えるまちおかの院内デイとは

加納:以前院内デイで、患者さんが一日ラーメン屋店長になって、ほかの患者さんやスタッフにラーメンをふるまったと聞きました。

石井:ありましたね。2年前のことでしょうか。思い出すと懐かしいですね。

加納:どのようなきっかけで企画したのでしょうか?

石井:七夕の時に患者さんが「ラーメン屋をやりたい」って短冊に書かれていたんですね。ご本人に詳しくお話を伺ってみたら以前からの夢だったそうなんです。それだったら思い切って「まちおかでやってみよう」という話になって。栄養課のスタッフや地域ボランティの方々にも手伝ってもらって実現しました。

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篠田:患者さんご自身が麺をゆでて、のれんも作って。他の患者さんや一二三学園の園生(※まちだ丘の上病院に併設されている重症心身障害児(者)介護施設)、スタッフたちにふるまいました。行列ができて、大賑わいでしたね。

加納:一日ラーメン屋店長になった患者さんの反応はどうでしたか?

石井:普段は寡黙であまりお話されない方だったのですが、その時は「ありがとう」と嬉しそうに話しかけてくれて。その笑顔がとても印象に残っています。

篠田:みなさん、ベットで過ごされている時と院内デイにいらっしゃる時は、表情が全然違うんですよね。

加納:ほかには院内デイでどんな取り組みを?

篠田:外出ができない患者さんにまちおかでの生活を楽しんでもらえるように、移動水族館を呼んだこともありましたね。

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また、自宅で飼っていたペットのお話をされる患者さんも多かったので、セラピー犬を呼んだことも。自宅ではペットと触れ合うことが生きがいになっていたのに、入院したらダメというのは違和感があって。それで、企画したんです。その日は、患者さんがご家庭で飼っていたペットも病院に呼べるようにしたので、みなさんとても喜んでくださいましたね。

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「やりたい」に寄り添うことで、患者さんが本来持っている力を引き出したい

加納:今やまちおかの顔ともいえる院内デイですが、始まったのはいつ頃からなんでしょうか。

石井:2018年の5月からですね。最初の院内デイでは、あじさいの工作をしました。今では多い時には20人前後の患者さんが参加してくれますが、最初は4~5人の患者さんとこじんまり行なっていました。

加納:そうだったんですね。そもそも院内デイをはじめようと思ったのは、何がきっかけだったんですか?

石井:車椅子に乗って動けるはずなのに、その機会が少ないために寝たきりになってしまう患者さんが療養病院には多いことが気になっていたんですよね。

そういう時ってやみくもに「動きましょう」って言っても意味がなくって。人ってやっぱり何かを「やりたい」と思うから動きますし、その「やりたい」が実現できたときに、生きるモチベーションが湧くんだと思うんです。

だから院内デイのように「やりたい」を実現する取り組みを通して、患者さんが本来もっている生きる力を引き出していけたらと考えたのがきっかけでした。

加納:篠田さんは院内デイの取り組みがはじまった後に、まちおかに就職されましたよね。はじめて見たときにはどう思いましたか?

篠田:純粋に「すごいな」と感じましたね。実は、院内デイのような取り組みって現行制度だと診療報酬がつかないんですね。それだけでなく、患者さんが歩けるようになったり、自分でご飯を食べられるようになったりすると、療養病院では診療報酬が減ってしまうことすらあります(※)。現行制度が変わらない限り、多くの療養病院はこうした取り組みに手が出せないのが現状なんです。

(※)現行制度では、医療の必要性が下がったり、自立度が上がると診療報酬が減る仕組みとなっている。

加納:たしかにそうですよね。また、療養病院では寝たきりの方を想定した人員配置規定が定められています。患者さんが自力で食事・歩行ができるようになって食事や移動の介助が必要になると、スタッフの負担が増えてしまうといった懸念も聞きます。現行制度のもとでは、院内デイのような取り組みは行いづらいんですよね。

篠田:ええ。現行制度を現場の実態にあわせて変えていくことはもちろん必要です。でも、まちおかでは現行制度のなかでもなんとか「患者さんが病院で自分らしく、生活や人生を楽しんでもらいたい」という想いをもって院内デイを独自にはじめていました。手前味噌になってしまいますが、これって本当にすごいことだなと思うんです。

私は他の療養病院でも勤めていたことがありますが、寝たきりになってご本人やご家族が人生に対して諦めのような気持ちを持ってしまうケースを目の当たりにしてきました。でも、こうした取り組みが多くの療養病院に広がれば、病院で自分らしく生活や人生を楽しめる人が増えていくと思うんですよね。

加納:実際まちおかでは院内デイを通してリハビリへのモチベーションがあがり、自分で歩けるようになったり、食べれるようになった方もいらっしゃいますよね。

篠田:そうなんです。だからやっぱりどんな場所であってもその人がその人らしく生きるモチベーションをもっていけるような環境を整えることがすごく大切なんだなと思っています。

患者さんがほとんどいなかった3年前

加納:院内デイがはじまったのは、2018年5月でしたよね。その前年の年末は、まちだ丘の上病院にとって大きな転機となった時期でした。

それまでは「南多摩整形外科病院」という名前で脳性麻痺による重度身体障害児(者)の機能改善を手掛けていましたが、2017年に地域医療を支える療養病院「まちだ丘の上病院」に生まれ変わったんですよね。

(※南多摩整形外科病院からまちだ丘の上病院になるまでの経緯はこちら)

この時期は、病院のあり方だけでなく、地域連携室における院外・院内の連携のあり方も大きく変化した時期だったと思います。転換期の頃のお話をうかがってもいいでしょうか?

石井:私が入職したのは2018年の1月なので、ちょうど南多摩整形外科病院からまちおかに変わって1ヶ月後のことでした。

当時は全78床のうち20床程度しか埋まっておらず、患者さんがほとんどいない状態でしたね。重度身体障害児(者)の機能改善という特殊な領域で治療を行なっていた南多摩整形外科病院は、地域の病院からもほとんど存在を知られていなかったので。

加納:知ってもらうために、具体的にどんなことをしたのでしょうか?

石井:当初はまずはまちおかという病院の「存在」を知ってもらうために、患者さんの層を限らず様々な患者さんの緊急入院を受け付けていました。今の患者さんの層とは全く異なり、圧迫骨折やインフルエンザ、脱水、食欲低下などなど本当に様々な方がいらっしゃっていました。

加納:病院の経営母体も運営方法も大きく変わるこの時期はすごく大変だったんじゃないでしょうか。

石井:ええ、忙しいし、変化も激しいしで、転換期は今振り返っても「本当に大変だった」の一言ですね(笑)。

加納:そこから半年後に篠田さんがまちおかに就職してこられたわけですね。

石井:篠田さんが来てくださって、本当に助かりました。

篠田:そう言ってもらえるとうれしいです(笑)。僕がきたときは石井さんを含めた色々なスタッフの努力があり、平均50床前後に増えていました。でも、まだ緊急入院がメインの時期でしたね。療養病院だと聞いていたのに、患者さんの層が全く違っていてびっくりした記憶があります(笑)

でも、当時まちおかに来てよかったなと強く思ったことがあります。それは、石井さんと二名体制で地域連携室を作り上げていけたことですね。石井さんは看護師で、社会福祉士の私とは持っている視点が違います。色々な視点から見て患者さんにとってベストな方法を模索していけるので、すごくありがたかったですね。

「まちおかなら楽しく生きられる」口コミが広がり患者数が徐々に増えていった

加納:緊急入院がメインだった時代から、今のように慢性期の患者層に変わっていくまでにはどういった経緯があったのでしょうか?

篠田:まちおかという病院の「存在」は知ってもらえるようになりましたが、当時は「え、まちおかって療養病院だったんですね」と言われてしまうくらいイメージが定着していなくって(笑)。そこで、院内で「地域連携プロジェクト」を発足し、スタッフが総出で地域の病院に営業にまわったんです。地域に根づいた療養病院になっていきたいという想いをそこで丁寧に説明していったんです。

石井:その間、院内デイができて、徐々に「まちおからしさ」も確立されていって。患者さんやご家族と入院前の面談をしていると「とってもアットホームな病院だとすすめられました」「まちおかに来たら、寝たきりじゃなくて人生を楽しめるんじゃないかと思いました」といった言葉を聞く機会も増えていきました。

そうこうしているうちに、少しずつ療養病院としてのイメージが広がり、慢性期疾患の患者さんが増えていきました。2019年の3月にはついに平均70床を越えましたね。

加納:口コミを通して療養病院としてのあたらしいまちおかの姿が徐々に広がっていったということですね。

篠田:そうですね。療養病院としてのイメージが定着したあとも、患者さんがまちおかでどのように過ごしているのかは、転院元の病院やご家族にも丁寧に伝えるようにしています。お話だけだと伝わりづらいので、院内デイに笑顔で参加されている患者さんのお写真を一緒にお渡しすることもあります。そうした細かいやりとりを通して、一緒に患者さんを支える存在として信頼してもらえるようになっていったのかなと思います。

「ただ病院で時間を過ごす」のではなく「人生を豊かに過ごせる病院」でありたい

加納:最後になりますがまちおかの地域連携室で今後お二人が頑張っていきたいことはありますか?

石井:引き続き、ご本人のやりたいことが実現しやすい環境を整えていきたいと考えています。ただ「病院で時間を過ごす」のではなく「人生を豊かに過ごせる病院」でありたいな、と。ここにいてよかったなと思える瞬間をたくさんつくれるようにみんなで試行錯誤してきたいですね。

篠田:今はコロナウイルスの影響でご家族との対面にも様々な制約が生じてしまっています。でも、だからこそオンライン面談のやり方を工夫したり、院内での様子を写真で送ったりと様々なチャレンジができるときでもあると思います。決して家族の代わりにはなれませんが、患者さんとご家族の想いをつなげるような取り組みを行ないたいです。

一人ひとりに丁寧にかかわれるのは、78床というこのまちおかの規模だからこそ。まちおかだからこそできるチャレンジを今後も積み重ねていきたいですね。

【院長 小森將史のコメント】

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まちだ丘の上病院として最も大切にしていきたいのは、患者さんの可能性を引き出していくこと。しかし、実現するにあたっては制度・人員などさまざまなハードルがあります。そこにめげることなく「なんとかできることはないか」と知恵を絞り、奔走してくれているのが地域連携室の二人です。まさに地域連携室はまちおかにとっての肝であり、命綱だと感じています。これからも患者さんが「ここで人生を過ごせてよかった」と思える瞬間をたくさんつくれるようにスタッフ一同努力していきたいと思います。

もし、ここまで読んでまちだ丘の上病院で働くことに興味をもってくださったかたは、ぜひこちらの募集要項をご覧ください。まずはコーヒーでも飲みながら気軽にお話しましょう。

また、「応募フォームからはちょっとハードルが高いけど、質問だけでもしたい」という方はこちらに相談メールくださいね。どんな内容でも大丈夫です。

まちだ丘の上病院 人事課 加納
✉:office6@machida-hospital.com
(こんな顔してます)

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お読みいただき、ありがとうございました。

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