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N35°35’11.99” E139°33’22.63”結婚して1回ほかの街に越したんですけど、ほんとうにこの街の空気感が好きで、すぐにもどってきてしまいました。

中川産婦人科で生まれて、ずっと同じところに住んでいます。結婚して1回ほかの街に越したんですけど、ほんとうにこの街の空気感が好きで、すぐにもどってきてしまいました。
駅から家に帰る途中の道が大好きです。緑も多いし、遊歩道もいいし、なんかもうほんと街ぜんぶが大好きですね。この道はお父さんとああやって歩いたなー、とか、犬の散歩も年中いったなー、とか。そういう思い出がたくさんあります。

白浜久美さん

そのなかでも好きな道は、うちがあるいちばんうえの道かな。
わたしの小さい頃は、夏は雨が降るとカエルがでてきたり、大きな蛇が玄関でとぐろを巻いてたり。お父さんが捕まえて木にバーンと投げたりして。わたしが赤ちゃんのとき、兄が、わたしがなにかで遊んでるなって見たら、蛇が逃げるところをわたしがしっぽを捕まえて引っ張って遊んでたとか。寒くなる前になるとキツネがでてきて餌を探しまわったり、リスがでてきたり。雨が降る直前になるとマンホールのしたからカエルがぴょこっと顔をだして、お父さんが、「ほら見て!雨が降るからカエルがでてきたよ~。」って教えてくれたり、そういうのが楽しかったですね。もうほんとに自然が多くて。
その頃はまだ家はまばらで、いまみたいに車はとおらなかったので、道で遊んでても危なくなかったんです。おとなりのおばちゃんとご飯食べてると、「お、車がとおったね。」と顔を見合わせるくらいすごく静かだったです。そして眺めがよくって、玄関でれば富士山が見えました。
その道の先にその崖はありました。その崖が楽しかった。草っぱらのなかにほとんど90度に近い崖があって、2、3階建てくらいの高さで、崖の途中にはぼこっと穴があいててはいれたの。で、そこにみんな宝箱みたいなの持ってきて隠したりして。わたしが物心ついたときからそこにはなぜかロープがふたつ垂れてたの。不思議でしょ?誰が垂らしたのかはわからないの。川崎市の木のところからたぶん垂れてたと思う。お兄ちゃんたちが付けたのかなぁ。近所の子はみんなそこで遊んでた。おとなが来ると、危ないから降りてきなさいっていわれてた。わたしがちっちゃいときは、お兄ちゃんが、「危ないからそこにいろよ!」っていって、わたしはお兄ちゃんお姉ちゃんたちが遊んでるのを見上げて、いいな~と思ってて、自分が登れる年になってすぐに登った、みたいな。

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ほんと楽しかったんですよ。お人形乗せたベビーカーを持ってって、そのベビーカーはしたに置いて、お人形をおぶったりして登った。近所のお姉ちゃんがお人形をおんぶさせてくれたんですよ、着物の紐みたいなのをたすきがけにして。降りるのは、ロープを片手で持ってそのまま前向きにしゃがんで、ズズズズズーッて。すごい崖だったけど、あのときは怖くなかった。
なんとなく5、6年生からかな、登らなくてなって、なんか気がついたときには家が建ってたような気がするなあ。
いまそんなところ、街のなかにもうないよね。毎日力いっぱい遊んでました。

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このおはなしは2016年No.003号に収録されています。冊子をご希望のかたはご連絡ください。650円(送料込み)でお送りします。「街のはなし」2020年 No.007へのサポートも大歓迎です。プロジェクトをサポートしていただけましたら大変励みになります!どうぞよろしくお願いします。

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