見出し画像

N35°35’09.01” E139°32’53.89”北川酒店の角、そこにわたしがとっても心惹かれる風景があるんです。

たまプラーザへきたのは、ざっと40年前かな。
その頃は駅前にはなんにもなかった、ほんとに。当時はバスや電車だってなかなかこなかったなあ。それからまあ40年、ここに住み続けて、とにかくわたしはとっても気に入ってます。住み心地がいい。環境もいいし、人もみんな優しいし。

ユリノキ通りをずっとすすき野のほうへいって、三丁目のところにある北川酒店って知ってます?わたしが40年前に来た頃には、自治会館の斜め前ぐらいに東光ストアってのがあって、そことその北川酒店ぐらいが家の近くのお店でした。その酒屋さんのところをとおってかないと我が家にはたどりつかない。その酒屋さんからうちまで、ずーっとだらだら坂。美しが丘っていう名前のとおりに、ここは丘だから、坂がいっぱいあって登るの大変だよね。だからわたしにとって坂の登り口にあるその酒屋さんは関所のようなものなんです。北川酒店はね、いまでも毎週ちゃんと御用聞きに来るの。御用聞きってわかる?今日なにか買うものありませんか?って。それから、お店にお年寄りが買い物にいくでしょ。ちょっと重たいじゃない。そうすると「お荷物をお届けしますよ」って家までちゃんと届けてくれる。そういうとってもやさしいお店なんです。
で、そこの北川酒店の角、そこにわたしがとっても心惹かれる風景があるんです。

画像1

毎年、夏のはじめになると真っ白い花が咲くんですよ。お店の角に自生していて、6、7本。そうだ写真見せてあげよう。そのほうが早い。これが北川酒店。こういう花が咲くの。これ、タチアオイ。
お店とコンクリートのわずかな隙間、こんなところに土があるのかしらと思うようなところから花が顔をだす。その健気なところがたまらなく可愛い。
これはうちのばあさんが、暑中見舞用に写生して木版画にしたタチアオイ。わたしがこの花の存在に気がついたのは、この木版画を見たとき、もう10年以上前だなぁ。

画像2

いったいどこからその種がとんできて、咲きはじめたのか、誰もわからない。
毎年かならずちゃんと咲くんですよ。「やぁ、こんちは~、今年もよろしくね〜」って、そんな感じ。それがとっても嬉しくってね。いまの季節だとまだ小さな緑の葉っぱがでてるぐらいですが、来年もきっと花を咲かせてくれますよ。
来る年も来る年も坂の登り口に咲いてくれるこの花たちを目にすると、「なんだ坂、こんな坂」って元気がでる。元気の素みたいな、もう一踏ん張りさせてくれるわたしの「心の風景」とでもいったところでしょうか。だから毎年綺麗に咲いてくれるのを楽しみにしているんですよ。

藤原良雄さん

画像4

このおはなしは2016年No.003号に収録されています。冊子をご希望のかたはご連絡ください。650円(送料込み)でお送りします。「街のはなし」2020年 No.007へのサポートも大歓迎です。プロジェクトをサポートしていただけましたら大変励みになります!どうぞよろしくお願いします。

画像5


よろしければサポートをおねがいします。サポートは、今後の「街のはなし」の冊子発刊費用に使わせていただきます!