まちのコイン
市民協働で目指す 「持続可能な新しい商業」のありかた
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市民協働で目指す 「持続可能な新しい商業」のありかた

まちのコイン

まちのコイン・導入事例:長野県上田市インタビュー

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お話を伺ったのは......(写真左から)
長野県上田市商工課 課長補佐 伊藤正道さん
上田商工会議所 総務課主事 久保田健太郎さん
マモル株式会社取締役、もんプロジェクト実行委員会事務局長 中山肇さん

コロナ禍でもつながりを深めて、経済の活性化につなげたい

ーー長野県上田市では、上田市・市内3商工団体・マモル株式会社と官民連携で『まちのコイン』の実証実験を行っているとのことですが、導入のきっかけについて教えてください。

伊藤
上田市でもコロナ禍における経済的な打撃があり、大きな課題になっていました。地域の商業を中心とした活性化事業が必要だと考えていた時期に、マモル株式会社から『まちのコイン』を教えてもらったんです。「SDGsの取り組みだけではなく、商業活性化にも面白い効果が出そうだ」と伺いました。

マモル株式会社が実証実験のフィールドを探していると聞き、市内商工系3つの団体にも声をかけ、2021年2月から『上田市デジタルコミュニティ通貨実証実験』として実施に至りました。

中山
マモル株式会社は、地域を題材にした福利厚生事業を営んでいる会社なんです。我々の思いやアイデアへの共感から生まれたご縁で、上田市につないでいただきました。

当時、上田市でQRコード決済のキャンペーンが実施されていたのですが、人口対比で利用率が1位になったくらいキャッシュレス化が進んでいたんです。その流れに乗って、カヤックさんのコミュニティ通貨を実験してみようと考えました。キャッシュレス・非接触に加え、コロナ禍でコミニケーションが少なくなる中で、「つながりを深めて、経済の活性化につなげよう」というコンセプトにも共感しました。

ーーコンセプトの他にも『まちのコイン』を選ばれた決め手があれば教えてください。

中山
実は、『まちのコイン』に到るまではいろいろなポイント制度を検討したんです。『まちのコイン』は、あまりお金お金しすぎていないことが、世に普及しているメジャーなポイント制度とは一線を画していると思います。
導入の決め手は、ゲーム性があって、楽しんで通貨のやりとりができるところ。『まちのコイン』での体験は共助活動で、「仕事とボランティアの間」だという絶妙な位置付けも面白かったですね。

伊藤
地域通貨は、法定通貨の「円」が終着点であることが多い。その仕組みを維持するには自治体が銀行になるような話で、その行き着く先が何なのか、今回の導入を機に考えたんですよね。自治体が、日銀が円を発行するように無尽蔵にキャッシュを用意できるかと考えたら、それはできない。

でも、『まちのコイン』は換金性を持たない。円とは違う価値観で勝負できるから導入しやすいという点を、すごく評価しています。それこそ、「持続可能な商業活性化策」だと思う。参加している商店さんが、資本の規模に関わらず、手間とアイデア、個性と面白さだけでビジネスに挑戦できるんです。地方の商店さんの生き残り策ですよ、って看板をつけてもいいんじゃないかと思いましたね。

久保田
いろいろな地域通貨があると思いますが、「コミュニティ通貨」という考えが面白いですよね。上田市は『もん』というように、コインに地域ごとの名前が付けられるのも魅力的でした。地域特性が出せ、かつ、事業者目線で考えた時に、大きな広告媒体になる可能性もあると感じました。カヤックさんは、発想が新しい。私たちも刺激を受けました。

中山
代表の方たちとお話しても、考えかたが常人じゃないです、笑。『まちのコイン』も面白いですし、株主とオフ会するとかいう発想自体、私たちには思いつかない。上田市のコンセプト決めの時も、濃いブレストをしましたね。

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通貨名『もん』は上田市が戦国武将真田家の郷であり、その家紋・六文銭にちなんだもの。また、コンセプトの「ハッコウ」は、発酵系の特産品が多いこと、様々なベクトルから発光することから名付けられた

伊藤
本来なら半年以上かけて準備をするそうなのですが、上田市の場合、コロナ禍での新しい生活様式に対応した活性化策として導入を急いだんです。2、3ヶ月ほどの急ピッチの中でもオンラインを駆使して、ブレストを重ねられたのは良かったですよね。
自分たちだけでは達成できない新しいことも、カヤックさんと連携することで、分かりすいパッケージとして手に取ることができました。

横軸でも切磋琢磨、ライバルは鎌倉!?

ーー2021年2月のスタートから約6ヶ月、実証実験をふりかえってみてどのように感じますか。

伊藤
上田市の地域コミュニティはしっかり出来上がっている実感があったので、『まちのコイン』の仕組みとは親和性がある、と見通しを立てていました。地域のインフルエンサーやコミュニティのコアになる人たちを把握できていることもあり、ある程度の流通は見込めていました。

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流通だけでなく、導入を広げ掘り下げていく時には、伴走型がいいと思いました。例えば、リアルなマルシェに注力している人もいれば、デジタルコンテンツやSNSで上手に集客している人もいる。すでにネットワークが出来上がっている人にも、『まちのコイン』の魅力を伝えたり、ツールは多い方がいいですよ、ときめ細やかに説明していく姿勢が必要です。今では市民サポーターや学生サポーターが自然発生的に生まれているので、そこから『まちのコイン』の活動がどれだけ伸びるか期待しています。

久保田
商工団体として期待していた部分は、『まちのコイン』が広告媒体になり、ファンが増えること。すでに地域のつながりを増やせているスポット事例も聞いていますし、体験チケットのアイデア出しに熱心な商店もいます。つながりの促進において、『もん』がいい役割を果たしていると感じています。

伊藤
そうですね、上田市で最初にスポットになってくれた『ハム工房セキ』さんの事例は印象的ですね。『もん』を使って、加工で余った端切れをもらえるんです。分かりやすくてお得で、フードロスの解決にもなる。予想通り、人気の体験チケットになりました。『もん』をきっかけに店に来てくれるので「既存顧客の買いものの頻度も、新規お客さんも増えた」と聞きました。

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上田市で人気の体験チケット。「今まで自家消費や廃棄していたものを活用して、売り上げが伸びている」と嬉しい報告も

中山
そういった面白さが深まった部分と、課題が出てきた部分もあります。コアなユーザーもいますが、アクティブユーザーの総数がまだまだ少ない。より多くの人に使ってもらえるよう、試行錯誤しているところです。また、体験チケットの認知向上や、体験チケットがもっと使われるためにはどうしたらいいのか、SNSや広告媒体の活用も検討しています。

ーー今後の目標や展望があれば、教えてください。

中山
私個人として、上田市の1番のライバルは、鎌倉だと思っています! 鎌倉はカヤックさんのお膝元であり、実証実験が最初に始まったところ。スポット数も、早く追いつきたいですね。
『まちのコイン』を導入している他の地域のデータも、気になってチェックしています。どんな体験チケットがあるのかも参考にさせてもらっているんです。

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つながりをデータで可視化しているのも『まちのコイン』の特徴。人気の体験やSDGsの貢献度の統計も表示されている

伊藤
一瞬でもいいから、1位になってみたいですよね、笑。全国の地域の担当者同士で「まちのコインサミット」をやっても面白そうですよね。

中山
他地域を横軸でとらえ、いい形でライバル視をしてモチベーションを上げることは、上田市の商業活性化にとってプラスにもなる、と思っています。

民間企業としては、今回の上田市での実証実験の成功事例をもって、『まちのコイン』を含めた取り組みをひとつのパッケージとし、全国の自治体に導入していきたい。これが大きな目標ですね。

伊藤
私は商工課ですし、『まちのコイン』ユーザーが徐々に増える、単純にスポットの売り上げが上がる、新しいお客さんが来た、というところを1番のアウトカムにしていきたいと考えています。

上田市が急成長してきたベースになっているのは、従来から市民協働に熱心に取り組んできて、地域活動が盛んなところ。つながりをしっかり意識した市民が、さらに元気に活動できる地域になったらと思います。

商業活性化のための「持続可能性」とは

ーー最後に、『まちのコイン』をひとことで言うと......?

久保田
個人的に、『まちのコイン』は「きっかけ」だと思っています。行ったことがない場所に行くきっかけになっているんですよね。商店などの事業者にとっては新しい顧客開拓になり、消費者にとっては新しいつながりが持てる。

中山
「日常生活に密着したゲーム」ですかね。商業活性化のためには、楽しさもなければ続かない。

伊藤
これまでの行政の商業活性化策は一時的な施策が主流で、直接商業がうるおうには距離がありました。例えば、アーケードの新設や歩道の整備など、街並みをきれいにしたり、補償金を出すことが多いです。

そう考えると、『まちのコイン』はプラットフォームを維持する費用さえ行政が負担すれば、市内の商店や団体がいつでも自由に参加でき、自らの手間と工夫で成果がだせる点で、コストパフォーマンスが高いと言えます。これぞ、行政にとっても商店にとっても「新しくて、持続可能な商業活性化策」だと思います。

今は実証実験ですが、『まちのコイン』には理念の浸透が大切なので、短期間で成果があがるものではない。一度始めたら簡単にやめるものではないと思っています。一過性ではなく、継続して効果をあげていきたいです。

取材・文 二木薫

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