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第4章 まちづくりを進めるコーディネート力

 価値観が多様化し問題が複雑化する現代社会において、コーディネート力は物事を動かすうえで重要かつ必須です。その力は、コーディネーターでなくてもポイントをおさえておくとさまざまな場面で役立ちます。
 第4章では、「machidas(マチダス)まちをつくるひとをつくる」で述べている「コーディネーターに必要な力」をもとに、プラスアルファをお伝えします。

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16.地域ビジネスを始める人に

 近年、市民活動の自立が求められるようになって俄然注目を浴びるようになったのが、ビジネスの手法を取り入れたまちづくりです。
 それまでのまちづくりは、行ったことに対して対価を求めないことが多かったため、資金源の多くは常に行政や公益法人からの補助金や助成金に頼るといった構造になっていました。こうした資金の多くは事業の立ち上げ期を支援するもので、永続的な活動に対して補助するものではありません。ですからそれに頼り切ってしまうと継続的な活動を行うことができず、活動そのものが短命に終わるケースが後を絶たないのです。

 ではどのようにすればこうしたビジネスの手法を使った継続的なまちづくり活動ができるようになるかということですが、私は3つの棚卸し作業が必要ではないかと感じています。

第4章文中画像(1)

 1つめは地域資源の徹底的な棚卸しです。地域資源は他のページで詳しく説明していますのでここでは割愛しますが、これは住民の知恵や技術も含め、地域全体が所有する財産です。ぜひジャンルに分けて細かくリストアップすることから始めましょう。

 2つめはその地域の歴史を紐解いてみることです。特に古くからある地域資源を活用した地場産品やサービス産業における創業者の思いや工夫はとても参考になります。ビジネスは当然山あり谷ありの世界ですから、難局を迎えたときに創業者はどのような対策をとったか、というようなことがこれからの大きなヒントになるのです。

 3つめは人的ネットワークの棚卸しです。そのビジネスを行うに当たっては、協力者をどれだけ増やすかが重要です。それは中間支援組織のようなサポート団体であったり、地域資源の生産者であったり、場を提供してくださる方であったりと様々です。そうした方々を巻き込み、そのビジネスによって動くお金が地域内で循環する仕組みを作りましょう。

 大切なことは地域がそのビジネスを喜んで受け入れてくれる仕組みをつくることなのです。
(大滝 聡)


17.みんなが持っているイメージをカタチにする

 まちづくりには熱意が何より重要ですが、ただそれだけでは不十分で、まちづくりに携わる人(特にまちづくりコーディネーター)は、しっかりとした現場を動かすためのスキルを身につける必要があると考えています。

 そのスキルの一つが「構想力」になります。
この構想力を具体的に説明すると、それは3つの要素から成り立っているということを「マチダス〜まちをつくるひとをつくる〜」に書きました。

 その1つ目は「ビジョンを描く力」、2つ目は「まちづくりのプロセスを組み立てる力」、そして3つ目は「斬新なアイディアを生み出す力」です。詳しくはマチダスを読んでほしいのですが、簡単にまとめて一言でいうと、「みんなが持っているイメージをカタチにする力」ではないかと思います。

 まちには多様な人が住んでいて、それぞれが何らかの役目を担っています。ですからまちづくりをしたいという思いは皆同じだったとしても、頭の中に描いている将来のまちの姿は人それぞれです。しかもその姿はかなりぼんやりしたもので、くっきりとした輪郭までは見えていないのが普通です。

 そこでまちづくりコーディネーターの出番となるのです。
この人は足下の現状だけを見つめるのではなく、やがて訪れるであろう未来を的確に予測してそれを見える化し、そこに到達するまでのプロセスを提示します。さらに既成概念に囚われない自由なアイディアを次々と発想していく能力を持っていることが理想です。

 そうした能力を身につけるためには、様々な人の想いを地道に聞きだしていいく努力をしたり、それらを的確な言葉や絵などに集約していく作業が欠かせません。

第4章文中画像(2)

 「ああ、そうそう、私が考えているのはこんなイメージなんです!」とか、「なるほど〜、こんな手順で進めればそのイメージに近づけるね!」というような感想をみんなからいわれたら、あなたはもう立派なまちづくりコーディネーターです。
(大滝 聡)


18.人と人の間に立ってみる

 まちづくり現場を動かすためのスキルには、「構想力」の他にもう一つ「調整力」が必要ではないかと思っています。

図1

 この調整力も構想力同様、3つの要素に分けられます。

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