見出し画像

シブヤまちづくりLAB/「全ての子どもたちが豊かに暮らせるまちへ」


こんにちは、神薗まちこです。

2021年5月1日の朝刊一面(朝日新聞、毎日新聞)に、厚労省初調査で虐待などのため親元で暮らせず、児童養護施設や里親家庭で育ったことがある若者の最終学歴は、中学卒・高校卒が8割を占める一方、大学や短大・専門学校などを卒業したのは1割強にとどまったというデータが発表されました。報告書をとりまとめた検討委員会の松本伊智朗委員長(北海道大大学院教授、教育福祉論)は、「若者が経済的に厳しい状況に置かれていることが改めて浮き彫りになった。18歳以上の進学率も低く、教育を受ける機会から大変遠ざけられている」「18歳以上は児童福祉法上、支援の対象外なのでこれまで手が付けられてこられなかった。(社会的養護を経験した若者は)本来は子どもの声を代弁する家族の基盤も脆弱で、声が反映されにくい」と発信がされました。
朝日新聞 https://www.asahi.com/articles/ASP4Z4DVKP4VUTFL00K.html
毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20210430/k00/00m/040/132000c

社会的養護を必要とする子どもたちに対して、何が出来るか?を2021年2月7日「シブヤまちづくりLAB」でテーマとして扱いました。

社会的養護の環境に置かれる子どもたちは、全国で45,000人、東京都でも4,000人と言われています。

画像1

今現在、虐待などを受けて子どもたちを保護する児童相談所や一時保護所、その後の支援先を探し、マッチングするのは広域的な行政管轄で行っており、東京都で行われています。この児童相談所の機能や社会的養護を今、23区に移管するという大きな動きが起きています。


なぜ、そういった動きが起きているのか?東京都の現状はいま?ということで前半はお伝えし、後半は社会的養護の中でも数が少ないと言われている「家庭養護(里親、特別養子縁組等)」で子どもたちの保護者として支援をしている4組のご家庭にお越しいただき、生の声を聴きました。

画像3

1:社会的養護を23区と東京都が連携して実施しなければならない背景

このパートは、私神薗からお伝えしました。理由は大きく2つ。

1つ目は、虐待報告件数の増加や虐待による死亡件数を減らすため。虐待報告件数は毎年増えており、今では20万件と言われており、週に1人の頻度で子どもたちが虐待によって命を落としています。都の児童相談所のキャパシティを超えた数の相談が発生していることです。

画像4


2つ目は、法制度の改正によってパラダイムシフトが起きたことでした。2016年の児童福祉法等一部が改正され、「子どもの権利」をベースに、「家庭養育」を優先する。と定められたことにより、子どもたちの生活により近いある程度の規模のある自治体、中核市や東京23区が児童相談所等を設置することが出来ることになったことも大きな理由です。
なぜ、家庭養護を優先するのか?ということについては、特に家庭養護の推進を強く行っている日本財団の2019年のシンポジウムの報告書が大変分かりやすくまとめています。その中で、まさにこの2016年の法改正を行った際の厚労大臣だった塩崎衆院議員が講演されており、大変分かりやすくまとまっています。里親委託率や特別養子縁組の数が日本は諸外国と比べ圧倒的に少ないこと、多くの社会的養護を必要とする子どもたちが施設で育っていること、施設での暴力や性暴力の横行などもあり、子どもの立場に立ち、子どもの心の健全な発達を考慮したうえで「何が問題なのか」を突き詰めていくと、やはり「子どもの権利」をベースに、「家庭養育」を優先する。と定めるべきであるということで発信をされています。

~親⼦⽀援から⾥親、特別養⼦縁組など様々な家族のかたちを考える~ シンポジウム
http://nf-kodomokatei.jp/wp-content/uploads/2020/12/190315.pdf

画像6

画像5

しかしながら、児童相談所や一時保護所を作り、家庭養護の数を増やすということはかなり困難を伴う状況です。膨大な財源と不足する福祉人材(児童福祉士など)をどう確保するかという問題を抱えています。すでにスタートしている世田谷区などは人口規模が90万人を超えますが、渋谷区は20万弱。自治体の大きさも違う中で、必ずしも児童相談所や一時保護所のようなハードに膨大な財源を投資し、維持する方法以外にも、もっと違う方法があるのではないかという課題提起もさせてもらいました。

画像7

2:東京都の社会的養護の今

このパートは、ゲストでお越しいただいた東京都議(渋谷区選出)の龍円あいり都議に、東京都の最新の動きを発信頂きました。

東京都が目指す里親率は37.4%を目指すということでしたが、2018年度時点では14.8%(日本全体では20.5%)。さらに推進していくための施策ということで、6点ご紹介いただいています。

画像8

①フォスタリング機関

画像9

海外では里親をフォスターと呼びますが、里親を支援するフォスタリング機関を創設し、一貫性・継続性のある支援構築体制を取るということです。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/satooya/tokyo_fostaring.html

②里親支援

画像11

里親や児童相談所などのチーム養育の中で解決が難しい困難な課題や疑問などを、専門相談員が意見などを聞き取って、調整するという仕組み。

③アドボケイト制度

画像12

子どもたちの意見を表明できる仕組みとして、アドボケイト制度が導入されます。

④予防的な取り組み

画像13

これは、基礎自治体としてもありがたい予防強化。特に、子ども家庭支援センターとの連携での予防的支援の推進に関しては渋谷区も力を入れている子育てネウボラの動きとも連携できますので、まずは虐待をさせない仕組みをどう構築するか?というところへ、力を費やすことが出来るかと思います。

⑤保育ソーシャルワーカー

画像14



渋谷区でも、同会派でも何度か提案している保育ソーシャルワーカー。現在は、保育園への巡回チームがこども発達相談支援センターに設置されていることもあり、そこと重複するということで区では見送られているが、他自治体の取り組みなども研究して、活用したい制度。

⑥特別養子縁組の推進

画像15

特別養子縁組の%も日本は諸外国に比べ、低い状況です。(人口10万人当たりに対して、0.48人。アメリカ38人、イギリス8.44人、フランス6.41人、ドイツ4.69人)特別養子縁組の分野も推進するため、民間の養子縁組あっせん機関との連携を図る取り組みが進みます。

東京都資料
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/katei/suishinkeikaku/keikaku.files/chapter3.pdf


3:渋谷区の家庭養護当事者の方の声

今回ゲストとしてお越しいただいたのは、4名の方。
ファシリテーターを渋谷区議会で一緒にまちづくりLABを主宰している森田ゆき議員が担当してくれました。

画像19


①特別養子縁組について
最初の2名は特別養子縁組でお子さんを授かった方々。セキユリヲさんとhitoさんです。

画像17

セキユリヲさんとhitoさん、共通していたのが「不妊治療で苦しんでいたこと」「妊娠するという選択肢以外の子どもの授かり方をご夫婦でしっかり検討されたこと」でした。お二人ともお子さんが来てくれた時、本当にとてもかわいくて、嬉しいと強く感じたということを伝えていただきました。

特別養子縁組は、夫婦の戸籍に子どもが入り、法律上も実の子どもとして育てる制度です。お話を聞いていて、生みの親さんとの関係性の構築、子どもや周囲へどのように出生について伝えるか。という点においては、妊娠によって子どもを授かった家庭と違う部分になりますが、それ以外に関しては悩みや課題は変わらないという印象を強く受けました。

セキさんはこの特別養子縁組という子どもの授かり方の選択肢をもっと知ってほしいということで、様々なメディアでもお話されています。
□新しい家族のカタチを考える会
https://www.new-family.info
□laxicラシク取材記事
https://laxic.me/interview/2020/10/175
□セルフパートナーシップ記事
https://note.com/selfpartnership/n/nb5de385e5f8f


②里親について
もう2名は里親としてお子さんをお預かりされている平田実穂さんと、Akiさん。実穂さんは一時保護里親ということで、一時保護所などで対応できないお子さんを一定期間支援する里親です。Akiさんは養育里親として一人のお子さんを育てていらっしゃいます。

画像18

里親は特別養子縁組と違い、実親がおり、そこから権限を児童相談所を介して、一部委譲されているような状況になるので、結構制約が多いなというのが印象を受けました。

実穂さんは、一時保護としての養育を行った際に、24時間体制で保護されたお子さんを3週間程度見た時、実子との時間を作りづらく、実子がストレスを抱えたりする状況もあるということで、家族だけで過ごせる時間をつくったり、レスパイト等が活用できる状態があればとおっしゃっていました。また一時保護の際は、学校や保育園なども通えないということで、そのあたりの対応も今後課題と感じました。

Akiさんは、お子さんをお預かりすることによって、夫婦二人ではなかったような経験をたくさんできたことはよかったとおっしゃっていました。しかし、様々な制限が多い中での生活になるということで、例えば学校に関してもプライバシーの保護をが最重視されるがゆえ、地域に溶け込みづらい~子育てが孤立化しやすいという課題感も教えていただきました。

特別養子縁組も、里親も共通しているのは、「知られていない」ということ。社会的養護が必要な子どもたちがいるということ、家庭養護を推進するために特別養子縁組や里親という制度があり、実際そこでどんな子育てが行われているのかを知ってほしい。ということでした。

画像16


最後に、Akiさんから東日本大震災で両親を失い、児童養護施設で育ったナオヤさんのドキュメンタリーが映画として制作中の「ぼくのこわれないコンパス」をご紹介いただきました。こういった作品を通じて、社会的養護について知ることが重要と改めて感じています。

HP https://my-invincible-compass.com/
Youtube https://bit.ly/3sKuubj

私たちも渋谷区での社会的養護の事業はどういった形がベストなのか?模索していきます。


いただいたご支援は、渋谷papamamaマルシェの活動資金(イベント運営費用、取材、見守りボランティア謝礼など)として使わせていただきます。