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「認知症世界の歩き方」〜認知症の世界を旅行記のように楽しみながら読める本〜

「認知機能」とはなんでしょう。

厚労省のeヘルスネットの記載によると、「一般的には認知機能は主に認知症における障害の程度を表す場合に用いられることが多いようです。認知症では物忘れにみられるような記憶の障害のほか、判断・計算・理解・学習・思考・言語などを含む脳の高次の機能に障害がみられますが、その障害がみられる脳の機能として認知機能と表現されます。」とあります。

脳の病的変化が原因で「認知の障害」が起こることを「認知症」と言います。

つい先程のことを忘れてしまう。(記憶の障害)
他に、道がわからなくなる。曜日や時間、季節の感覚がわからない。(時間・空間の障害)
買い物に行っても、何をどれだけ買ったらいいかわからなくなるし、お金を払うのにも手こずる。(注意・手続きの障害)
あるモノが違うモノに見えてしまう、満腹感がない(五感の障害)など、認知症の方は、さまざまな生活場面で困りごとが発生します。

紹介したい本は
「認知症世界の歩き方」
著者 筧裕介さん


これまでも、認知症を持つ人について書かれた本は多数ありました。
主にそれは、
認知症の病理的な解説本や
認知症の症状を持つ人の「周囲の人」に向けた対処法が書かれた本でした。

この本の特徴は
この認知の障害によって
「困っている本人」の立場で書かれているところです。
帯にも書いてありますが
「当事者へのインタビューを元につくられた『本人の視点』で認知症を知ることのできる本。」です

「認知の障害」の症状。
それは何を正しく「認知」できないことで起こってているのでしょう。
この本は
「世界の歩き方」というタイトル通り旅行記と旅行ガイドブックように構成されています。

前半部分では13のストーリーとして認知症世界の出来事を紹介しています。
ストーリーに出てくる困りごとは、
本のはじめに付いている表
「認知症による心身機能障害 44」に照らし合わせられるようになっています。
この分類は当事者ご本人の視点からまとめ上げられたものでとても具体的です。
この表はそのまま索引としても使え、解説ページと照らし合わせる事ができ、とてもわかりやすいです。

後半部分は「旅ガイド」と題して
必要な、知恵、心がまえ、ツール、情報がまとめてあります。
ウェブ版、旅ガイドとしてポータルサイトでより詳しく情報が取れるようにデザインされているのも素晴らしいです。
このサイトでは
13のストーリーをアニメーション動画で見ることができ、本を読むのが大変な人もこれなら見ることができます。

認知症に関わる人が困るのは
認知症の人の「困りごと」をどうしたら解決できるかわからないからです。
ですから、つい、
「本人がやって困るなら、本人にやらせない方がいい」という方法論になってしまいがちだと思います。

この本で「困りごと」の理由の背景がわかれば、なぜ、困っているのかが理解できて、認知症のある人もその周りにいる人も暮らしやすい社会になるんじゃないか、と感じました。





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