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アメリカ人は歯が命?!

どうにもこうにも歯が痛く、とうとう我慢できず、5年ぶりの歯医者に行った昨日のこと。ある程度、予想はしていましたが、根幹治療が必要だと言われ、観念して処置室で麻酔の注射。先生が「じゃ、始めようか」と問題の歯を確認のためにコンコンコン。「ふーむ、これは緩くなってるなぁ。抜く?」

はい?抜く?え?どういうこと???急激に動揺した私は、麻酔がよく効いてどこかへ行ってしまったかのような唇で、必死に確認をしました。「つまり、根幹治療か、歯そのものを抜くかっていうことですか?」「そう、その通り。あくまでも、君の判断だけどね」と言いながらも、抜く気満々の先生。その先生の後方には、無言のまま小刻みに首を縦に振る助手の若い女の子の姿。問題の歯が生えている部分は、元来、歯一本分のスペースに二本の歯がひしめき合っていた部分なので、確かに抜いてしまう、というのも頭では分かります。でも、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってよぉ。「抜いたほうがいいっていうこと、、、ですかね?」と、今一踏み切れない私。にもかかわらず、「君次第だよ」と繰り返す割りには、話があれよあれよという間に進み、気が付いたら抜くことになっていました。ショエー!話が決まったら、事は早い。でも、チラっと目を開けてしまった時に、絵に描いたようなプライヤを見てしまったのです。あー、見なければよかった。改めて、ショエー!です。が、そんなショエーの間に歯は抜かれ… ガーゼを嚙まされ、血が出てるから1時間ぐらいはこのままにしておいてね、と替えのガーゼを手渡されました。

私:「え?もう終わりですか?」

先生:「そう、あっという間でしょ?」

無言のまま「抜いたほうがいい、抜いたほうがいい」と私の背中を押してくれた助手の女の子は「歯、持って帰る?」なんて言っちゃって。私は、思いがけず抜かれた歯の痛みと、そのショックでワナワナ状態で待合室へ戻りました。でも、抜いてよかったと思えたのは、その金額の違いを知ったとき。処置をする前に、根幹治療は700ドル(保険で50%カバー後の金額)になることを確認済みだったのですが、根幹治療から抜歯という方向転換の結果、その700ドルが、なんと80ドルになったのです!結果的に早く終わったし、安く済んだし、この部分の歯の混雑も緩和されたことだし、抜いてよかったのかも♡と思えた瞬間でした。

その後、ワナワナしながら隣の薬局で薬をもらい、帰宅しました。アメリカならではの強ーい痛み止めの効果もあってか、痛みもないし、腫れもない。普通に食べられるし、普通に仕事にも行けました。もしかして、あの先生、抜歯が得意技?

でも、翌日、職場の仲間に事の成り行きを話すと、みんなびっくり。例えば、私の歯痛を知っていたボスはこんな感じでした。

私:「歯、抜いたんです」

ボス:「あぁ、本当?で、いつ?」

私:「昨日」

ボス:(ギョッとした様子で振り返り)「え?昨日?そのこと、知っていたの?」

私:「全くの予定外でした」と、事の成り行きをざっと説明。

ボス:「そういうことなら、マチコの場合はラッキーだったって言えるのかもね」

一般的に、歯に対する関心が高く、子供の頃にブレースと呼ばれる矯正器具を装着するのもあたりまえ、という歯が命のアメリカの人々。時には、歯医者で突然歯を抜くことだってありなのかなぁ、なんて思っていましたが、やっぱりちょっと稀なケースだったようですね。ちなみに、このボス、軍隊にいたこともあるし、救急救命で働いていたこともあるという、ちょっと変わった経歴の持ち主なのです。

私は、口のサイズの割に歯が大きいということもあってか、絵に描いたような八重歯に加え、下も上も、歯があっちへ行き、こっちへ顔出し、といった具合。歯が命のアメリカという国においては、ちょっと気が引けるほどの歯並びなのです。みんな、まっすぐで真っ白な歯だもんなぁ。私の勝手な想像にすぎませんが、歯医者さんとしては、私のような歯並びを見ると、ウズウズするのではないでしょうかね。5年前に初めてこの歯医者さんに行った時も、「とりあえず聞くけど、歯並びをまっすぐにする気はある?」と聞かれましたからね。そう言われるのは分かるし、できるものならそうしたいとは思うけれど、もう大人だし…と、やんわりとお断りしたのですが、歯医者さんとしては、とにかく直したい、直すべきだ、というところなのでしょう。恐るべし、アメリカの歯医者さん。

1週間後に、抜歯の経過観察のために予約が入っています。今回さようならをした歯の他にも、気になっていることがあり、続いて処置をしていく予定になっています。ここぞとばかりに、ぐいぐいくるんだろうなぁ。費用と処置にともなう痛みを考えても、勧められるがままに全てを直す気は全くありませんが、今回の出来事に関しては、「あっぱれ!」と言いたい。優しくて、自信みなぎる先生と、この先生を信頼していることがよ~く分かる、とってもフレンドリーなスタッフが勢ぞろいしている、いい歯医者さんなんですよ。突然「抜く?」なんて言って、本当に抜かれちゃいますけどね。

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