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堕落した自分へ捧ぐ、「他力本願」な自分探し

僕は「自分探しの旅」が嫌いだ。

これまで大した努力もせず、適当な大学に入り、これといった「将来の夢」もない自分を改めて「探し」たとしても、結局「堕落した自分」を再発見するだけで何も生まれないだろう。

「堕落した自分」を再発見して、「これじゃいけない」と「覚醒」し、自分磨きだの学生団体だのインターンだのに参加できるようにすべての人間がうまい具合にできているのであれば、地球温暖化だって新興国の人身売買も年間4000人が死ぬような移民問題も起きないのだ。

何かをきっかけに変われる人間なんてほんの一握りで、そういう「○○の経験を、○○の記事をきっかけに人生が変わりました」という”キラキラロールモデルコンテンツ”を、「堕落した僕」はただ傍観するだけなのだ。

むしろ「○○」をきっかけに「覚醒」することのできるような人間が異常なんじゃないか。そう思うほどに僕にその「○○」は巡ってこない。

いくら飢餓に苦しみ栄養失調でおなかがぷっくり膨れた少女の画像を見せられても、体内にびっしりプラスチックの破片が詰まっている魚の画像を見せられても、日本の7人に1人が相対的貧困と呼ばれ自分の意思で進路を選べない現実があるという半ば感動的な映像を見せられても、何も感じない。何も危機感を覚えない。何も行動しようと思わない。何も興味を持てない。

そう、「この文章を相対的貧困の人が読んでいるかもしれない」可能性を頭に一瞬よぎらせつつ、しかしここに「7人に1人は相対的貧困であるといわれても興味を持てない」と書けてしまうほどに僕は無神経で、無関心なのだ。

そんな社会不適合者はおとなしく社会の歯車として、交換可能な労働単位として生きていればいいと、自分でも思う。

が、しかしさらに悪いことに、
僕は「それは嫌」なのだ。

なぜだか自分でもわからない。恐ろしく社会に対しても、他人に対しても、そして自分に対しても興味がないのにも関わらず、しかし「何者かにはなっておいたほうがいいんじゃないか症候群」に僕も罹患しているのだ。

もう救いようがないのだ。自分を覚醒させてくれる「○○」を探すにしてもそんな気力はない、ただ「○○」を探したいという焦燥感だけは悶々と蓄積されていく。頭がおかしくなりそうだ。

そんな時、この「やりたいことはない」けれど「何かしたい」状態に極限まで追い詰められた僕は一つ、

自分で見つけられないなら他人に「○○」を見つけてもらえばいいじゃないか、一番体力を必要とするであろう「○○」を他力本願で見つけることができる。。。それでだめだったら「自分で選んだ」わけでもないから他人のせいにできるぞ。。。。

という何とも屑らしい発想に至る。
ここまでくると本当に自分が人間なのか、寄生虫なのか分からなくなってくる。

しかし考えてみれば誰にも「自分でやりたいことを見つけなさい」といわれてはいない。そもそも幼児は宇宙工学を学んだことがないのに宇宙飛行士を志すし、大したコンテンツ力も企画力もないのにYouTuberを志す。

「何かを目指す」ことに「何かに課題意識を持つ」という課程は必要なかったのだ。
単に「かっこよさそう」「面白そう」あるいは「楽そう」そういうちょっとした感情の揺らぎを口実に何かを志してもよかったのだ。

そして僕は今まさに「他力本願で自分を覚醒させる「○○」を見つけるコミュニティ」で「他力本願に自分を覚醒させる「○○」を見つけてもらって」いる。そのコミュニティが6月から第二期生を募集するらしく、僕みたいな堕落した人間におすすめしておく。

コミュニティに属するまで僕みたいな人間が、他にいてたまるかと思っていた。しかし主催者の羽田という人間も「自分は魔法おじさんだから」とか「株式会社チャック全開」とか平気で公言する人間だし、他の参加者も大概「何者かにはなっておいたほうがいいんじゃないか症候群」の患者なので、患者は患者同士、仲良くやろうとやっている。

結局、「何者かにはなっておいたほうがいいんじゃないか症候群」は治療できるのか

これについて僕は答えを知らない。ただ「他人に自分の進む道を委ねてみる」という発想と、着実に他人に進む道を委ねていくワークを通じて、僕の溜まりに溜まったフラストレーションは徐々に解消されつつある。

すると見えてくるものもあった。これまで自分が好きだったもの、無意識下で選好していたもの、逆に避けてきたこと。

そういうものをいったんゼロに立ち返ってみて、そして他人から与えられる「○○」に身を委ねてみるということ、まずは試してみればいいんじゃないかと思う。

「意識高く」なくていい。時に他人に身を委ねてみてもいいし、他人の夢とも言えない妄想を聞いてもいい。そうする中で、「覚醒する○○」なんて大したものじゃなくて、「ちょっとしたこだわり」に出会えるかもしれない。

これを読んだ「堕落した君」にこそ、おすすめだ。

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Writer:王 翔一朗


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