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帰国/再入国日誌④ 2021/02/12

PCR検査

前日に連絡があり、予約していたPCR検査に出向く。隔離後の初めての外出となる。10時の予約で、保健所まで歩いてだいたい20分ほどなので、9時30分ごろ家を出る。

しばらく歩いていると、スマホのアプリから、「隔離場所を離脱しました」「位置を確認してください」というアラームが入る。たしかに外出だけど、前日に担当部署に連絡を入れてある。歩いていくことも言った。でも。

やや不安になる。急に白い服の人に囲まれて拘束されたりするんじゃないか。まさかな。悪いことはしてないけど、悪いことをしていると誤解される可能性。いやいや。保健所はもうそこだ。とりあえず検査が先だ。

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保健所に着くと、いきなり「1メートル以上の距離維持」「(列の)前後での対話は絶対禁止」という強い文句の横断幕。検査は保健所のなかではなく、建物の外に設置された「選別診療所」施設で行う。これ、ニュースで見たことがある。

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「検査後はすぐに帰宅」「結果通報まで外出禁止」と書かれた看板。ぼくの前には一人の男性が並んでいる。やがてぼくの番になる。保健所のスタッフは全員女性で、彼女らと被験者の間にはガラスの仕切りがある。入ると、なかのボックスから自分で、試験管のようなものと綿棒2本を取り出す。前に進むと、仕切りの二つの穴からスタッフの腕が伸びて、マスクを降ろして口をあけろと言い、綿棒でぼくの口内の粘膜を採取する(「あー」と言えというから「あー」と言った)。さらに、鼻に綿棒を突っこんで、鼻の奥の粘膜を採取する。これは日本での検査で経験済みだ。

ついつい日本でのPCR検査と比較してしまう。東京などの大きなところは知らない。北九州の病院での検査は、検査室だけものすごい換気扇が設けられており、急にガラスの仕切りから腕を出して鼻に綿棒を突っこんでいた。そのときも、今までその先生とふつうに診察室で対面してましたけど、いやそれ以前に内科の待合室で別の患者さんたちの横で30分くらいふつうに本読んでましたけど、という違和感は感じていた。韓国での検査で、やっぱりあれ、変だよなと改めて思った。隔離するのかしないのか、するなら徹底しないと隔離の意味ないよね。

さて検査が終わり、すぐ帰れと書いてあるので、家に向かって歩き始めた。10分ほど歩いたところで、知らない番号から着信。やっぱりあれか。あれしかないよな。「マチダさんですね。いまどこですか。隔離場所から長時間離れていますね」。だから検査だって言ってるじゃん。昨日も電話で言ったじゃん。

「そうだったんですね。おつかれさまでした」。

引き継ぎがされていない。こんなことは、20年も住んでれば慣れっこですよ。あなたが悪いんじゃない。昨日の職員さんがうっかり言い忘れたんですよね。日本の公務員が、規則とマニュアルにがんじがらめで融通がきかないとすれば、韓国の公務員は時と場合で言うことが違って、アドリブが多すぎて、マニュアルどおりにいかないことがある。わかりましたと言いながら、メモとかしてない。だれも悪気はない。ただ習慣が違う。けど話せばわかる。どっちもどっちやなと思いながら、周りに人がいないのを確認し、マスクを外して久しぶりの冬の外気を吸った。吸ったあとに、今日のPM2.5が最悪の数値だったのを思い出して、ふたたびマスクを着けたのだった。

陰性の結果の通知が来たのは、夕方の5時くらいだった。

隔離期間中に検査が二度あり、隔離終了前の二度目も同じように徒歩で保健所に出かけた。今度は「明日外に出ますけど検査ですからね」と念を押していたので、特に警告は来なかった。


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