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結実計画会議 vol.3 onSite>大熊町インキュベーションセンター

東北には旅行にも何度か行きました。でも大熊町は、はじめて訪れる場所でした。

大熊町管内図(大熊町サイトからダウンロード)にOICと産業交流施設を書き込んだ。

大熊町は、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震で津波の被害に遭った福島第一原子力発電所の所在地でもあります。したがって街の多く地域が当初「帰宅困難地域」に指定されました。役場機能の一部を会津若松市役所(いつもお世話になっています!)に移していましたが、大河原地区を「復興拠点区域」として役場機能・商業機能・住居機能を集中的に再興していきました。

大河原地区「復興拠点区域」

平成24年11月に中間貯蔵施設にほど近い大野駅周辺から西に延びるエリアを「特定復興再生拠点区域」に位置づけ、復興再生計画を実施し、令和4年6月30日に解除となりました。これにより住民の帰宅が可能になりました。一年数ヶ月経ったそのエリアに今回向かいます。

「大熊町インキュベーションセンター」。(令和4年7月開所)

帰宅困難地域で使用されなくなり統廃合により廃校になった大熊町立大野小学校をコンバージョンしたものです。

初めに到着した大河原地区には役場・市民交流センター・商業施設(CVS・食堂・雑貨店 etc)・真新しい住宅・郵便局・商工会….小さな街の機能がまとまっています。昼飯を食堂で済まし、大野小学校に向かうと、整備工事に当たっている作業用トラックがほこりを上げて行き交っています。先に進むほど、規制区域のゲートが目に入ってきます。車窓から横を見ると雑草に覆われた住宅群の先に真新しいアパートが、ポツンポツンと。よく見ると今までの住宅と違い、人の生活の気配が。その先の小学校にインキュベーションセンターがあります。

雑草の多い風景
元大野小学校。大熊町インキュベーションセンター。

大熊町インキュベーションセンターは、無料の交流スペースと有料の会議室・コワーキングスペース、そして月額会員のシェアオフィスがあり、施設計画団から企業に誘致することで、開所時30社から令和5年8月段階で94団体の利用(シェアオフィスと貸事務所の利用を合わせる)があるとのこと。

浜通りには、このぐらい大きくてコワーキングオフィスとインキュベーションオフィスを兼ねたものがなく、利用者は営業拠点としても使用する団体もあるという。

OIC(大熊町インキュベーションセンター)のチーフインキュベーションオフィサーの直井勇人さんにお話を聞きました。

直井さん

地元の方、地元と縁のある方の利用が1/3程。どう増えていったか?都市圏から復興地域の今を見てまわるツアーが、数多くありその利用者が福島県にルーツがあったり、大熊町出身者などが多く、ツアーの中でOICにも観光バスで視察に来る。その数、月に700人。わざわざ当初計画になかった視察対応の人材を確保したそうです。視察者の中から、リモートワーク可能な人が移り住んだり、二拠点で営業所代わりにという話もあるとか。

インキュベーションセンターの玄関には、現在参加して切る起業の名前が並んでいる。
教室は上手にオフィスに変化している。
交流スペース
映画やTVの撮影にも使用されている。

施設は、起業・創業の人材、新規事業支援なども行うインキュベーションセンターでもあり、コワーキングオフィスでもある事から、分野別のオンライン交流会や利用者以外も交えたランチ交流会なども行っている。元コンサルタントのインキュベーションマネージャーは、初回面談と合わせて、各会員と月一回リモートで面談を行い、それぞれにあった支援を行っているという。

参加企業の株式会社AIBODは、AIを活用した「無人置型レジ BAITEN STAND」など新事業を展開、成果も出てきているという。この他、元々キュウイ農家が多地域であったが12年の帰宅困難で放置された資源を再生しようとする町民なども元気にこのオフィスに通っているとのこと。
入居している団体の福島県内ビジネスコンテストや補助金の獲得も多という。少しずつだが、効果が出てきているのでしょう。ただ現場では、人手が足らないという。トヨタの工場など、今後労働力を必要とする産業も生まれはじめるというが、人手不足に悩まされることが今後続くのかもしれない。

OICには、地元の高齢者が良く訪れてくれる、そして上京した若者たちが、懐かしんで、小学校を訪問してくれる、いつか戻りたいという人達も訪れると直井さんは教えてくれました。これは建物と一緒に残る文化伝統の記憶がそうさせるのでしょう。緩やかな変化のためのコンバージョン、リノベーション効果だと感じました。

「兎に角、訪れる人の多い施設です。本当に前向きな方が多い。」直井さん。

ゼロの地点で、どう新しい事業を興していくかをみんなが考えている素晴らしい施設でした。

来年、令和6年12月に大野駅西口には、起業・創業・新規事業から育った企業の集まる「産業交流施設」が開所する予定。いま大熊町ではここの入居企業を募集しています 。


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