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備忘録として


長く担当している患者さんのご主人が急逝したと、連絡があった。

確かに深刻な病気を患っていたのだが、そのちょっと前に比較的お元気な姿を見ていただけに本当にショックだった。

繰り返すが、本当にショックだった。
当初は、ご主人と患者さんが一緒にいらっしゃり、そこに娘さんも同行されるということだった。

その後、ご主人が病気がちとなり、ご主人が不在となり主に娘さんと一緒に受診されていた。

患者さんの診察であったが、ご主人のことがどうしても気になり毎回娘さんに尋ねていた。

病状は深刻だった。どうにか力になりたいと願っていた。
その願いが少しだけ届いたのか、先日、ひょんな理由から、ご主人と再会することができた。

思いのほか顔色は良く安心したが、すでに歩くのは難しい状態だった。
にもかかわらず、ぼくの顔を見るや否や、車椅子から立ち上がってお辞儀をしそうになった。

本当に恐縮だったが、全く「らしい」お姿だった。

別れ際、「うちのやつ(妻=患者さん)を引き続きよろしくお願いします」と、ずっと年下のぼくに深々と頭を下げて仰った。
結局、これが最後の会話となった。

急逝を知り、この言葉をすぐに思い出し、ぼくはあの言葉をぼくへの遺言にしようと心に決めた。

これからもしっかり、責任を持って、全力で担当する。それが、男と男を超えた、人間同士の約束だから。

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写真は贈ったお花へのお返し。

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